12:進化計画
少しお休みしました。
もうしわけない。
「しかし、かわいらしい。ハイゴブリンって人間とそう大差ないね」
先ほど治療し終わった、メスのハイゴブリンがベットで安らかな吐息を吐きながら眠りについているのを、谷山は横から観察する。
「一応亜人に分類されます。魔物が上位へ進化した場合、亜人になることが多いのです」
「人型になっていくということか?」
「進化先が、生活環境や、持っているスキルによって変化しますので一概には言えませんが、人型か、巨大化の2パターンですかね。また、極稀に、種族の垣根を飛び越える進化もあります。」
「魔物の進化か~ロマンを感じるな。色々育ててみたくなっちゃうよ」
「マスター。通常の魔物を進化させる程の経験値を積ませるには、家畜相手ではなかなか……」
「他に経験を積む方法は?」
「体を鍛える鍛錬や、武器を使った実践訓練なども有効ですが、一番は敵を倒す事ですね。ですが現状無理ですので、前者の鍛錬強化になりますね」
「今出来ることをやっていこうか。そういえば農作フロアの様子を見に行こうか」
「お供します。マスター」
B1階フロアを制作した谷山は、増えてきたゴブリンを引きつれ、農作業をいつもの如く教えていった。農業は、耕し、種まき、収穫を長いスパンでサイクルしていくが、万能変換エネルギー「マナ」を生み出せるダンジョンでの農作業は1日でサイクルしてしまう。朝種を撒けば夕方には収穫が出来る。これはこれで忙しい。仕事に取り掛かったゴブリン達は、せっせと働き回っている。
「羊の世話についているゴブリンを減らして、ワーウルフ召喚してみようかな。牧羊犬の変わりにならないかな?」
「マスターが召喚した魔物ならば、マスターの指示に従う筈です」
「よし、ゴブリンとワーウルフで協力して牧羊してもろう」
ワーウルフは四足で狼に似ている哺乳類動物で、毛並みが茶色く中型犬程の大きさだが、犬歯は鋭く動きも素早い為、駆け出しの冒険者が群に遭遇すると危険な魔物である。
「最初は4匹くらいでやってもらおう。んで増やしてもらって」
「そうなってくると、ここのフロアも狭くなりますね」
「そうだな~思ったより家畜と違って食用じゃなくなるしな」
ワーウルフの問題だけでなくとも、どこの酪農施設でも捌いても捌いても数が変わらないまでに調整が出来てきた。その分ゴブリンの数が増え始め、B1の農業区画に移しているのだが、そこの労働キャパも一杯になってきた。
「外に出したい気持ちも強いけど、まだ全然強化できてないし、魔物達が教練できる階層を作るか」
「まだダンジョンPに余裕はあります。ある程度侵入者を迎え打てる戦力を付けていきましょう」