最終手段?ミッション完了w
ミッションに失敗した豊だったが、このままのうのうと帰るわけにはいかなかった。
明日は土曜日で、できれば今日中に買って帰り、明日から、音子の命の恩人を探し始めたかったからだ。
豊の次の選択肢は、最終手段である、三杯に頼む事だった。
あいつならきっと、嬉しい口実ができたとか言って、喜んで買いに行くに違いない。
豊はそう思って、三杯のクラスである3組へと足を運んだ。
三杯はすぐに見つかった。
というか、とにかく五月蠅いところに行けば会える。
「三杯!」
豊は教室の外から三杯を呼んだ。
別のクラスって、入るのって少しためらうよね?
別になんの問題もないはずだが、教室も暗く感じたりw
それはそれとして、豊の言葉に、三杯は意気揚々と教室の出口へと歩いてきた。
「よ!豊、どうした?昼休みまで待てなくて、ボクちんに会いに来ちゃったのかな?w」
いつも豊は思うのだが、どうしてこんなに軽い奴と、友達をしているのだろうかと。
でも、理由は簡単である。
友達が少ない豊が仲良くできるのは、誰とでも仲良くできる三杯だけだったし、以前バカとは書いたが、実は勉強はかなりできたりする。
1年の時のクラスでは、いつもテストの点数では1,2を争っていたから、お互いライバル意識から、友達になったという感じだ。
「よ!別に三杯の顔は見たくなかったが、ちょっと頼みがあってね。」
豊のつれない返事にわざと残念そうな顔を浮かべた三杯だったが、すぐに頼み事が気になった。
「俺に頼みごと?珍しいな。豊は人にあんまり頼み事しないし、まして俺になんてwようやく俺を頼ってくれる気になったか。」
三杯は嬉しそうだった。
意外に三杯は、人の為に何かをするってのは、嫌いではないようだ。
三杯の表情を見て、豊は安心したのか、ストレートに要求を述べた。
「まあね。それで、パンティーとブラジャーを買ってきて欲しいのだが、買ってきてくれるか?」
豊の言葉に、三杯は冷たい視線を向けていた。
流石に三杯でもそれは無理だったか。
豊は急に恥ずかしくなってきた。
だが次の瞬間ニヤリと笑うと、豊の肩をポンポンと叩いてこういった。
「目覚めたか。」
三杯の勘違いに、豊は思いっきり否定のツッコミを入れようかと思ったが、こんな事は日常茶飯事、ただのレクリエーションだ。
此処は肯定するところだと判断し「ああ、共に肩身の狭い人生を送ろうぜ。」と、豊は三杯と肩を組んだ。
「そして二人、魅惑の世界へと歩いて行った」なんてナレーションを心の中で思い浮かべながら、廊下を少し歩いた。
それで気が済んだようで、三杯は組んでいた、肩に回した手を解いて、豊を見た。
「オッケーw俺に任せておきな。なんだか分からないけど、親友のピンチ、助けてやるぜw」
三杯はそういって、親指を立てた。
豊もそれにこたえ、親指を立てた。
傍からは、親友同士のサムズアップも、何やら怪しい動作に見えていた。
さて、放課後になった。
「あれ?音子が学校に来たり、転校生としてやってくるなんてベタな展開を期待していたんだけど」
なんて言いたい方もいらっしゃると思われますが、全く何事もなく放課後になってしまって申し訳ない。
この世界は最も常識的な世界ですので、期待を裏切る事も多々あると思いますがご了承ください。
さてもう一度、仕切り直して、放課後。
豊は、三杯と共に、学校から一番近い町に出ていた。
方向的には、豊の家と逆方向で、多くの人はこちらの町にある駅を利用して通学している。
昨日帰り道にあんな事があったのに、目撃者がいなかったのはその為だ。
いや、実はいたかもしれないが、豊は全く周りが見えていなかったので、その辺りどうなのかは、今後の話の展開次第。
それが、豊の世界である所以で、豊が、当然目撃者がいたと思えば、誰か出てくる可能性はあるし、気にもとめなければ、目撃者はいなかった事になるだろう。
逆に言えば、目撃者がいたとして、その人が誰かに話をしたりして豊かに影響がなければ、それは見た人がいなかったのと同じ事と、この世界では処理される。
シュレーディンガーの猫のバランスで、この世の中パラドックスがあふれているのだ。
そして、こちら側の町には、人があふれていた。
この辺りにある唯一の町で、田舎の人達が集まってくる。
と言っても、見ると半分は学生のようだ。
豊の通う「私立桜花高校」は、生徒数が少なく、同じ学校の制服はあまり見られない。
見かけるのは、町の反対側に位置する、「桜花大学付属高等学校」の制服ばかり。
大学は東京の都心にあり、此処で高校生活を終えた生徒のほとんどが、東京の大学に行く事になっている高校だ。
町の名前から同じような名前の高校ではあるが、全く関係はなかった。
豊は、三杯について歩いていた。
一件それらしい下着を売っている店を見かけたが、三杯は見向きもせず通りすぎた。
買う店は、三杯に任せている。
なんせそんな店は全く知らないし、買った事もないのだから、豊かには口出す余地は無い。
しばらくついて歩くと、駅の近くにある、この町唯一のデパートの前に来ていた。
すると三杯は立ち止り、キョロキョロと挙動不審になった。
豊は(なんだ?何かする気か?まさか誰かがつけている下着を、譲ってもらおうなんて考えてるんじゃないだろうな?)なんて思った。
まあ、真剣にそう思ったわけではなく、心の中のちょっとしたジョークだ。
豊がそんな事を考えている間に、三杯が何かを見つけた。
どうやら誰かと、待ち合わせしていたようだ。
向こうから、やや小走りで走ってくるのは、豊たちよりも少し年下に見える、可愛らしい女の子だった。
(なにー!三杯にこんな可愛らしい、かの、いや、友達がいたのか?!世の中狂っている!)
と豊は心の中で思ったが、その真意はすぐに明らかになった。
「お兄ちゃん!」
「ん?お兄ちゃん?」
その女の子は、三杯に向かって、「お兄ちゃん」と言葉を発した。
豊は、三杯に妹がいるなんて聞いた事がなかった。
三男に生まれて、名前をつけるのも面倒くさいと思わせた奴だ。
そんな三杯に、更に下がいると想像できなかった。
しかし、考えれば簡単な話。
要するに、女の子が欲しかったが、男が生まれてガッカリだったって事だろう。
三杯は、ある意味いらない子だったわけだが、放置プレイで育てられたからか、大らかで誰とでも仲良くできる男に育っていた。
それだけが救いと言ったところか。
同じ時期に生まれた兄妹で、妹ばかり可愛がられていて、よくまあひねくれずに育ったものだ。
この世界唯一の奇跡かもしれないと、私は思うのであった。
「こいつ、俺の妹ののぞみだ。こっちが俺の親友、山下豊ね。」
三杯はそれぞれにそれぞれを、最低限の言葉で紹介した。
「あ、よろしく。豊です。」
豊は少し照れていたが、三杯の妹に照れてなるものかと、気合で平静を装った。
それに、昨日の出来事から、少し耐性がついていたようで、動揺が目に見える事はなかった。
「あ、はい、よろしくです。お兄ちゃんがいつもお世話になってます。」
のぞみちゃんの上目づかいは可愛かった。
そして、素晴らしい妹だった。
妹のかがみだった。
どんな時も兄の事を考える妹、流石である。
「いや、もっぱら世話してるのは俺なんだけどね。」
三杯の言葉ももっともだったが、なんだか悔しいので、豊は一応言い返す。
「世話させてやってるんだよ。」
微妙な反論ではあったが、豊が納得していればそれで良い。
世の中、本人が納得していれば、何も問題はないのだから。
さて、紹介も済んで、いよいよ本題である。
どうやら三杯から、既に話を聞いていたのぞみは、すぐに質問をしてきた。
「で、サイズはいくつなの?」
豊はドキッとした。
今日の午前中、この質問のこたえが原因で、ミッションを失敗している。
豊は落ち着いて、辺りを見渡した。
沢山の人が歩いている。
菜乃の時には、菜乃を基準にしたのが失敗だった。
今度は、別の人を対象に、サイズを伝える事にした。
「えっと。あの人と同じくらいのサイズ。」
豊の視線の先には、とても美形の、とてもスタイルの良い女性が立っていた。
そう、音子はとてもスタイルが良かった。
今更ながらに思いだし、豊はそう思った。
「あれだと、C70くらいかな?」
何故見ただけでそんな事が分かるのか、三杯の呟きが、妙に豊の頭の中に残った。
下着の買い物というミッションは、なんの問題もなくコンプリートした。
ついでに靴や、洋服も何着か購入してもらった。
豊は無事、この日の目的を果たした。




