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飛猫~イフ~  作者: 秋華(秋山 華道)
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どうやって探すの?キター!

家に帰った豊は、早速ミッションで手に入れた戦利品を、音子に着るように渡した。

少し手間取ってはいたが、なんとか身につける事に成功した。

と言っても、手間取っているところを、豊が見ていたわけではない。

見ていたのは私だ。

いや、冗談だが、とにかくこれで、豊には色々とスタートラインに立った感じがしたようだ。

人探しへの決意を新たにしたかのような、険しい顔つきをしていたから。

あ、いや本当は、着替えを見たい欲求を抑えていただけなのは、此処だけの話。

それにしても豊には、まだまだ音子の話を、信じられたとは言い難い。

そんな信じがたい話に積極的に協力するのは、全て音子が可愛かったから。

たとえ猫が音子になったのが高度なトリックであったとしても、騙されて居候されているだけだとしても、可愛い子と一緒に生活できて、それが人探しという些細な事で続けられるなら、それはそれで良いと思っていた。

ただし、勉強の為に田舎に来たわけで、勉強しなくなっては親に申し訳がない。

母親もそうだが、父親はほんとうの父親ではないから、特に父親にお金を出してもらっている事に罪悪感を感じる。

だから、勉強だけはしっかりする事を、豊は固く決めていた。

一応ハッキリ言っておくと、皆さんが期待しているような、二人の愛の話には、そう簡単にはならないって事ですよ。

この日は、少し明日の事を話した後、見合って食事をしたが、なにやらむずがゆくて話は弾まず。

その後は音子にテレビを見せて、豊は勉強。

時々音子が豊に話しかけるが、照れと勉強でそっけない返事。

そして風呂は、音子は豊が帰ってくる前に入ったと言っていたので、豊だけが入って、後は寝るだけ。

こうして、2日目は終わった。


豊の土曜日の朝は、昨日よりも体が重かった。

理由は簡単である。

近くに可愛い女の子が寝ていて、熟睡できないからだ。

妙な夢も沢山見る。

自分も猫になる夢だとか、音子と一緒に命の恩人を探す夢、更には時間と世界線を移動する夢も見ていた。

豊がこれだけ沢山の夢を見る事は珍しい。

実際は、夢というのはみんな見ているものだと言われているが、覚えている事は少ない。

なのに妙に覚えている。

そのなんとも言えない感覚を、豊は意外と楽しんでいた。

眠くて体が重いけど、何処か懐かしい感じがする感覚を・・・

音子を起こすと、豊はいつものように朝の支度をする。

今日は体育の授業があるので、体操服を持っていかなければならないが、洗濯する時間は無かった。

だから、音子の着ていたものをそのまま持っていくしかないわけだが「本当に自分はこの体操服を着るのだろうか?」などと思いならが、鞄に詰め込む。

歯を磨き顔も洗う。

歯ブラシは大量に買い置きしてあるので、音子には音子専用歯ブラシが与えられていた。

流石に1年鍛えられていたからだろう。

音子の歯磨きはちゃんとできていた。

だけど、顔を洗うのはあまり好きでは無いらしい。

猫は水が嫌いだと言うが、人間になっても音子は水が嫌いなようだ。

人間になったんだから、体中に毛も生えていないし、乾かずに熱が奪われる事もないわけだが、まあトラウマってやつだろう。

でも水を嫌うそのしぐさが、豊に、音子が猫である事を思い起こさせるものになっており、人の姿を維持させる力となっていた。

そして、この世界にいられる条件でもあった。

もし豊が、音子は人間だと思い込んだら、家族や戸籍、他色々と存在を証明する物が有るはずで、それが無い人は、少なくとも日本にはいないと思っているから。

当然、自分の家にとどめておくわけにもいかない。

朝食は、シリアルやトーストをローテーションで食し、豊はいつもの時間に家を出た。

今日帰ってきてから、一緒に命の恩人を探す事を約束して。


豊は、午前中だけだった学校から帰ってくると、いよいよ人探しを始める。

音子と少し話したところ、情報は全くと言っていいほどない。

男性の年齢は50歳前後に見えるという事と、交通量の多い広い道路と交差する道路で、自動車にはねられた事。

後は高層ビルが立ち並ぶ景色の中に、工事中の更に大きな建物を覚えているという事くらい。

豊はまず、グーグルのサービス、ストリートビューで東京都心部の写真を、音子に見せた。

大阪や別の都会なども考えられたが、音子の言葉づかいが方言ではなかった事から、とりあえず東京にしぼった。

決して音子の喋りもまともな東京弁ではなかったが、他に当てはまりそうな場所もない。

とにかく、PCの中で東京を旅する事にした。

すると、いくつか似たような景色を見つけた。

ただし、どれも東京都心ならありがちな景色で、繁華街ではなく、住宅街とビジネス街が混在したような場所である事が共通点だった。

「これだけじゃ、何処に出かけたらいいのか分からないな。何か他に、分かる事はないかな?」

豊の質問に、音子は少し考えてからこたえた。

「きっと此処からそんなに遠くはないと思うのさ。」

豊は一瞬「そういう事は早く言ってよ」と思ったが、そんなに遠くはないってのは、どれくらいの事を差しているのか分からない。

東京の都心だって、ここから電車で2時間もかければ行く事ができる。

大阪だって、そこから新幹線で3時間とかからない。

それを遠いと言うか、遠くないと言うか、人それぞれの価値感によって違う。

だから豊は再び質問をした。

「遠くないってのは、どれくらいの距離?どうしてそう言えるの?」

すると音子はまた考えた。

音子自身は、自分は賢いと思っているが、人間としてはバカな子なのだ。

なかなか上手く言葉にできなかった。

だから結局、最初に世界線を飛んだ時に出会った、自分とそっくりな人から教えられた事を、そのまま伝える事にした。

「私の能力は、時間軸の中での世界線の方向、時間の方向、そして中心人物の場所、3つの条件がそろった時にしか使えないのさ。」

音子の言っている事は、豊には理解する事は難しかった。

こういった話は、2日前の夜に沢山聞かされたが、ちゃんと理解できる事なんて何一つない。

でも、漠然とならイメージできた。

「ようするに、何度も世界線を移動する中で、徐々に場所も移動した。つまりほぼ直線であり、来た道を戻れば、目的の場所に辿りつけるって事かな?」

「たぶんそんな感じなのさ。猫や人間が1年で移動できる距離、それを超える事はないのさ。」

豊の言葉は正しかった。

分かりやすく説明すると、たとえば太陽系をイメージしてほしい。

そして太陽の位置に、地図の豊と出会った場所を重ねる。

海王星の位置に、地図の縮尺と方向を合わせて、音子が最初に世界線をジャンプする前の場所を持ってくる。

もちろんそれは、今の状態ではどこだかわからないが。

それで、中心人物と出会った場所と、世界線の関係をあらわす事が可能だ。

ただこれは、実際の世界線の位置ではなく、世界線の位置を、時間で表した場合である。

最初の頃のジャンプでは、短い時間で世界線を大きくジャンプできたのだが、ややこしいので此処では忘れて欲しい。

音子は、太陽系の惑星直列が起こった状態で、海王星から天王星、土星、木星とわたり、最後に水星から太陽にやってきたってわけだ。

人は住まいをコロコロ変える事は無いし、生活圏も大きく移動する事は少ない。

だから、ほぼ一直線上にあると判断できる。

そして、最後のジャンプは、地球上での距離も、世界線の距離も、どちらも豊のいる場所に近いって事が分かる。

ようするに、最後に出会った世界線の中心人物は、かなり近くにいるという事だ。

その人と出会った場所を見つければ、命の恩人がいる場所への方向がある程度分かる。

「此処に来る前、最後に会った人、どんな人だった?」

豊は今住んでいる場所に来て、1年くらいしか経っていないし、聞いたところで知り合いにいるとは思えない。

でも、印象的な人なら、もしかしたら記憶にとどめているかもしれない。

「ん~公園で生活していたよ。ホームレスってやつなのさ。」

そう聞いて、豊は少しガッカリした。

豊の住む場所は田舎で、人が少なくホームレスなんて見かけた事が無かったから。

近くと言っても、それほど近くでは無かったって事だ。

それでも、そんなに遠いわけではないはずだ。

豊はふと思いだした。

昨日、三杯と共に行った、学校の向こう側に有る町の事を。

あの町なら、ホームレスの人がいるかもしれない。

豊は早速ストリートビューで、桜花町を表示して音子に見せた。

「あ、なんだか見た事あるのさ。此処から飛んできたのさ。」

キター!

豊には、人探しの突破口が見えた気がした。

「僕の前に会った人、どこで会ったか分かるか?」

「ん~行ってみれば分かるかもしれないのさ。」

こうして、豊は昨日に続いて、学校の近くにある町へと、音子と共に出かけた。

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