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飛猫~イフ~  作者: 秋華(秋山 華道)
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猫?人?可愛いなw

山下豊の携帯に、裸の可愛い女の子の写真がぁ!なんて事が起こったわけだが、昼休みを迎える頃には、すっかりそんな事は忘れている豊であった。

昼休みは、多少気を抜く事ができる時間で、食堂で別クラスの友達と話をしていた。

前に「気を抜く時間が無い」とか、嘘を言ってすみません。

会話は、いつもと変わらない、なんの生産性もない、ごく普通の話。

「政治家があれじゃ、経済は良くならないよ。」

「いや、国もそうだが、企業に夢がないんだよ。もっと夢のある商品が必要だ。」

すみません、また嘘を言ってしまいました。

全く高校生が普通に話すような会話ではありませんでした。

とにかく、昼休みには既に、豊かにとってごく当たり前の、普通の日へと戻っていた。

そして気がつけば放課後、豊は帰宅準備をして、一人家路に向かう。

別に端折って適当に伝えているわけではない。

本当に、特に話す事が何もなかった。

帰り道、朝にあの猫のような鳥と、猫に出会った場所に来ていた。

流石に不思議な事を信じない豊でも、朝の出来事を思い出さずにはいられなかった。

豊は立ち止った。

草むらの方を見る。

特に何かがあるわけでもない。

空も見上げてみた。

そこには飛行機も、鳥も、そしてもちろん猫もいなかった。

「ふっ」

これが当然だと言わんばかりに、豊はどや顔で、再び家路に向かって歩きだした。

「ニャー!」

すると朝と同じように、後ろから猫の鳴き声がした。

これが当然だと言わんばかりの顔をしていた豊だったが、やっぱり何処か期待していたのかもしれない。

豊は凄い勢いで後ろを振り返った。

その勢いは、あのゴルゴさん家の13さんが、「俺の後ろに立つんじゃねぇ!」と言わんばかりのものだった。

ベタな展開だと、そんな勢いで振り返ったら、可愛い女の子とキス!なんて展開になるわけだが、そんな事を夢にも見ない豊の世界で、そんな事が起こるはずもない。

この世の中、ちゃんと落ち着いて考えれば、全て想定できる事で成り立っているのだから。

少なくとも豊がそう思っている以上、そんな事が起こる事は、豊の人生ではあり得なかった。

振り返るとそこには、朝に見た猫がいた。

豊がなんとなく手を差し出すと、ちょこちょこと歩いて寄ってきた。

豊の右手をペロペロなめる猫。

その猫の背中を、左手でなでながら、羽が生えるような余地があるのか見てみる。

当然、そんな形跡は無かった。

やっぱりそんなわけないよな、みたいな顔をして、豊は少し安心したようだ。

豊自身、想定外の事が起こる事に、何か漠然と不安を持っているのかもしれない。

不安が、夢や希望を失う原因なのかもしれない。

とにかく豊は、目の前の猫が普通の三毛猫だった事に安心して、普通に猫を可愛がり始めた。

此処で言う「可愛がる」は、もちろんいじめる事ではないと、一応言っておく。

豊は、携帯電話を取り出した。

また写真に撮りたくなったのだ。

別に、朝の写真の事が頭にあって、やましい気持ちとか、もしかしたらとか思ったわけではない。

ただ普通に、写真に撮りたいと思った。

カメラレンズを猫に向けて、豊は携帯のディスプレイを見た。

可愛い猫が映っていた。

「おまえ、可愛いな。」

豊が発した言葉は、正に本人の素直な気持ちだった。

ま、可愛い猫を見て、「可愛い」と言う事くらい、世間一般世界の常識、当然の発言だ。

だが、この猫にとっては、それはある意味、魔法の呪文であった。

ディスプレイに映る猫の姿かぼやけたかと思ったら、次の瞬間には、可愛い女の子がそこに映されていた。

驚いて携帯を横にそらして猫を見ると、そこには確かに猫がいた。

再び携帯をとおして見ると、女の子が映る。

「なんで?女の子なの?」

豊の発した一言が、再び力となった。

ディスプレイに映る女の子が、正にそこにいた。

豊はうろたえた。

理由は、猫が人間になったって事ももちろんあるが、やっぱり裸だった事が、豊かに大きなショックを与えた。

いや、その表現は正確ではない。

猫が人間になったショックを、忘れてしまうくらいの刺激が豊を襲った。

10秒ほどうろたえていた豊だったが、ようやくセオリーを思い出し、ジャケットを脱いで、そこにいる女の子にかけた。

だからと言って、女の子はそれで、ナニやナニを隠す事はしない。

豊は、持っている勇気を総動員して、ジャケットで前を隠すように引っ張った。

するとようやく分かったのか、女の子はジャケットの中に丸まった。

(猫みたいだ。いや、猫だったんだけど。マジで?)

豊はそんな事を考えて、再びパニックになりかけた。

想定外な不思議な事に、豊は耐性がないのだ。

だけど、そこにいる女の子があまりにも可愛くて、豊の思考は、再び断絶された。

ふと、鞄に体操服が入れてあるのを思い出した。

豊は慌てて鞄の中からそれを取り出す。

そして、その可愛い子に着るように促した。

体育の授業は、1週間に4回あるから、こういう展開になる確率は4/6、豊の世界では十分にあり得る事だが、私は「少し都合が良すぎるだろう」と言っておく。

豊は必死に女の子の裸を見ないように、でもチラチラと見ながら、なんとか女の子に体操服を着せる事に成功した。

さて、体操服を着てもらったは良いが、此処からどうすればいいか豊は悩んだ。

(猫ならつれて帰っても問題ないよな?いや、女の子だからまずいだろ。つか猫なら電車に乗せられないよ。待て、女の子じゃないか。)

本来の豊なら、まずは警察につれていくなり、話をするなり考える事ができたであろう。

しかし、猫から発せられる「力」が、それを阻んでいる事は、この時の豊には分かるはずも無かった。

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