嘘!嘘?本当w
豊は椎名と、桜花町のファストフード店で話をする事にした。
何から話せばいいのか考えたが、椎名の事はなんとなく信用できると思えたので、思いつくままに話す事にした。
ちなみに信用できると思えた理由の一番は、世間一般的にみて可愛かったからである。
「可愛いは正義」は、裏付けあってのものだから、豊には当然の判断材料になり得た。
「えっと、最初に言っておきたいのは、川上さんと、昨日のミケ・・・音子とは、別人なんだよね・・・」
それを聞いた椎名はビックリしたが、すぐに嘘だと判断し、豊の言葉を聞き入れなかった。
「うっそだぁw世の中似てる人はいるけど、あそこまで似てるなんてあり得ないよ。」
豊も、確かに椎名の言うとおりあり得ないと思ってはいる。
でも、現実にいるわけだから、信じないわけにもいかない。
と言っても、実際に二人がならんでいるところを見たわけではないし、音子が知らんぷりをして、学校に来た可能性がゼロではない。
豊は違うと確信はしているが、話していると不安にも思えてきた。
「もしかして双子とか?」
この椎名の考えも、似ているレベルならあり得るだろう。
一卵性双生児なら、かなり似ていて間違える事もあると思う。
私も双子芸能人は、見分けられなかったりする。
でも、そんなレベルではない事は、豊も椎名も理解していた。
「いや、双子でもない。僕も今日初めて川上さんに会って、凄く驚いてるんだよ。」
「でもさ、川上さん、彼女?って聞いても否定しなかったし、ニャー!って言ったらにゃあぁって言ってたよ。」
それは豊にも不思議だった。
すぐに否定するものだと考えていたのに否定しない、それどころか椎名のテンションについてきていた。
そしてどういう訳か、豊に執拗に話しかけていた。
豊にとっても、此処までしつこいと、正直ウザイと思える。
怪しい占いもしているし、見た目だけは好みでも、流石に受け入れられる人ではない。
だけど、音子に似ていて、音子の話を聞いていたから、嫌な感じはしなかった。
むしろ、何か助けを求めてきているとも、豊は感じていた。
音子の話が本当なら、川上さんは1年後死ぬのか、それともそれに近い何かがあるはずだ。
流石にそんな人を、この程度の事でないがしろにはできなかった。
「僕も不思議なんだ。」
豊は、此処にきてまた、核心を話す事に躊躇した。
音子が、別の世界線の未来から来た事を。
でも、やはり話さない事には、話が進まない。
豊はそう思い、決断した。
「渡辺さん、今から僕の話す事、最後まで聞いてくれるかな?」
豊は必要以上に真剣な顔を作って、椎名を見つめた。
その真剣さに、椎名は何かを感じたのか、少し照れて「うん」とこたえた。
ぶっちゃけ、いきなり告白とかあり得ないが、豊の真剣さは、そう勘違いされてもおかしくないくらい不自然だった。
不自然な真剣さなのに、何故そう思うのか。
それは、普通ではないからである。
告白とは、なんでもない事を話すのとはわけが違う。
告白する時、何故か敬語になってしまったりするのは、つまりそういう事だ。
だからどういう話し方でも、いつもと違えば、相手は構えるのである。
豊はゆっくりと話し始めた。
「音子は、今は人間の姿をしているけど、実は、未来から来た猫なんだ。」
「はい、ありがとう。」
真剣に聞いていた椎名の心は、一気にしらけてしまった。
要するに、真面目な顔をして冗談を言われたと判断した。
それに、もしかしたら告白されるのではと、椎名は期待していたのかもしれない。
だから気が抜けたのだろう。
だいたい昨日今日話しただけで、いきなり告白もないと思うが、男女の恋愛、会話とはそんなものである。
とにかく、豊の言葉は、100%冗談であると一掃されてしまった。
しかし豊は、これもアリなのではと思った。
本当の事を言えば誠意は示せるし、冗談だと思われるなら、その方が都合が良い。
豊は、今度は軽い感じで、さも冗談であるかのように、本当の事を話した。
「いや、まあ聞いてくれ。音子が未来から来たのは先週の木曜日、僕が学校に向かっている時だった。気持ちいい青空に、僕は空を見上げた。すると空に、なんと空飛ぶ猫がいるではないか。僕は目を疑った。」
豊がそこまで話すと、椎名は「本当なの?」と、先ほどとは打って変わって、真剣な面持ちで尋ねてきた。
人間とは不思議なものである。
真剣に言えば嘘だと理解し、軽薄に話せば本当だと思う。
でもこれは、豊の不思議の中では不思議ではない。
きっとこれは、心理学的に説明できるはずだと思っていたから。
まあそんな事はどうでもいい。
とにかく今、椎名は本当なのかと尋ねてきていた。
それに対して豊は返答を求められている。
椎名の目が真剣だ。
さて、どうしたものか。
豊は少し考えた。
だが、此処で否定する選択肢は、豊には存在しなかった。
さっきまで、話す事は既に決めていたのだから。
「うん、本当。証拠は見せられるかどうかわからないけど、音子に会えば、もしかしたら見せられるかもしれない。」
豊の言葉に、椎名は、先週の金曜日の事を思い出していた。
実は豊と菜乃のやりとを、椎名は少し見ていたからだ。
そう、あのパンティーとかブラジャーとか言っていた会話だ。
その中で、「親戚の子が来ていて、着る物が無くて困っている」と言っていた。
着る物が無くて困るなら、本人が買いに行けば済む事。
でも、それが無理な場合。
ようするに1着も着る物が無かったって事だ。
椎名はそこまで考えて、声を上げた。
「えー!!」
豊は、一体何に驚いているのかわからなかった。
だけど、この不思議な出来事を共有できる人が、豊にできつつあった。




