表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛猫~イフ~  作者: 秋華(秋山 華道)
10/39

見つけた!でも悲しい?

豊は、音子と町を歩いていた。

目的は、最後に音子が会ったホームレスを見つける事、又はその人と出会った場所を見つける事だ。

しかし豊は、そんな事は頭からすっ飛んでいた。

(これって、デートじゃね?)

音子の手が、豊の腕に絡められ、要するに腕を組んで歩いていた。

こんな風に女の子と一緒に歩いた事なんてない。

しかもそれがとびきり可愛くて、好みの女の子であれば、それはもうドキドキ状態だ。

離れてくれと言いたいところだが、それも凄く惜しい気がする。

だから豊は、ただただ音子になされるがまま、町を歩かされていた。

町を半分くらい歩きまわっただろうか、不意に音子が声を上げた。

「あー!」

指差す先には、特に何もない。

家と家の間にあるわずかな隙間に、猫が一匹いるだけだった。

「猫がどうかしたのか?」

豊は特に気にも留めなかったが、思い返してもう一度その猫をよく見た。

そして豊も驚いた。

「えっ!」

その猫の姿、まさしく人の姿になる前の、音子の姿そのものだった。

「時間を飛ぶ前の私?・・・」

音子の言葉に、時間を飛んで未来から来たなら、そういう事もあり得ると豊は思った。

だけど、豊には同じだとは思えなかった。

豊が「違う・・・」とつぶやくと、音子もまた「あの子、私じゃないのさ。」と、どこか寂しそうだった。

その表情が気になって、豊は音子に尋ねた。

「どうした?」

すると音子は「よくわからないんだけど、あの子、もうすぐ死んじゃうのかも。」と、呟くようにこたえた。

音子は、時間と世界線を飛ぶ事がでる。

だからか、もうすぐ世界線が消滅してしまう命を、感じる事ができるようだ。

音子が最初に世界線を移動した時に会った、そっくりな彼女もまた、音子は同じようなものを感じていた。

ただ、その時は理解できず、今はその時の事については忘れていた。

豊は、此処までくれば、音子の言う事は、おそらく当たっているのだろうと直感した。

だが、今目の前にいる猫が、なんの意味もなく、今此処にいるとは思えなかった。

猫が移動し始めるのを待って、二人は猫の後をつけた。

しばらくすると、予想された光景に出くわした。

「やっぱり」

豊の視線の先には、一匹の三毛猫が、ホームレスのおじさんと戯れる姿があった。

音子がたどってきた、ホームレスのおじさんの世界では、音子と出会って別れた、それだけの関わりだったのだろう。

でも此処では、もうすぐ命を終えようとする一匹の三毛猫が、死ぬ間際に関わった、最後のぬくもりという事なんだ。

音子と出会わなければ、おそらく見る事の無かったこの情景。

見ていたとしても、知る事の無かった小さな命の最後に、豊は少し寂しさを感じた。

音子も、豊と同じ気持ちだったのか、頬には涙が流れていた。

しばらくしてから、三毛猫はホームレスのおじさんのところから離れ、一匹、神社裏へときていた。

「私ここから、この世界に飛んできたさ。」

音子の発した言葉の意味は、この三毛猫が此処で死ぬことを意味していると、豊は理解した。

「あの猫、僕と会えば助かるのかな?」

助からない事は分かっていた。

もし助かるなら、此処に音子がいないような気がしたから。

「あの子は無理だと思うさ。」

音子の言葉に、二人どちらからともなく、その場を離れた。

猫は死ぬ時、人目のつかないところで死ぬと言う。

ただの体調不良からの行動だったとしても、豊には、この猫の気持ちとして、人目につきたくないのだと思えた。


二人は、部屋に戻ってきていた。

少し寂しい場面に立ち会ってしまったから、二人とも気分が浮上しなかった。

特に人探しの事について話す事もなく、なんとなくテレビを見たりして時間を潰した。

夜は勉強する予定だった豊も、この日は早めに布団に入り、眠りについた。

と言っても、フローリングの上に敷いた、掛け布団だけではあるが。

音子はしばらく、窓から空を見上げていた。

空には、流れ星が一つ流れていた。

今のが、あの三毛猫の最後を示す流れ星だったようで、音子の目から、再び涙が流れた。

音子はその後、豊の布団に入って、豊にくっついて、フローリングの上で一緒に眠った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ