見つけた!でも悲しい?
豊は、音子と町を歩いていた。
目的は、最後に音子が会ったホームレスを見つける事、又はその人と出会った場所を見つける事だ。
しかし豊は、そんな事は頭からすっ飛んでいた。
(これって、デートじゃね?)
音子の手が、豊の腕に絡められ、要するに腕を組んで歩いていた。
こんな風に女の子と一緒に歩いた事なんてない。
しかもそれがとびきり可愛くて、好みの女の子であれば、それはもうドキドキ状態だ。
離れてくれと言いたいところだが、それも凄く惜しい気がする。
だから豊は、ただただ音子になされるがまま、町を歩かされていた。
町を半分くらい歩きまわっただろうか、不意に音子が声を上げた。
「あー!」
指差す先には、特に何もない。
家と家の間にあるわずかな隙間に、猫が一匹いるだけだった。
「猫がどうかしたのか?」
豊は特に気にも留めなかったが、思い返してもう一度その猫をよく見た。
そして豊も驚いた。
「えっ!」
その猫の姿、まさしく人の姿になる前の、音子の姿そのものだった。
「時間を飛ぶ前の私?・・・」
音子の言葉に、時間を飛んで未来から来たなら、そういう事もあり得ると豊は思った。
だけど、豊には同じだとは思えなかった。
豊が「違う・・・」とつぶやくと、音子もまた「あの子、私じゃないのさ。」と、どこか寂しそうだった。
その表情が気になって、豊は音子に尋ねた。
「どうした?」
すると音子は「よくわからないんだけど、あの子、もうすぐ死んじゃうのかも。」と、呟くようにこたえた。
音子は、時間と世界線を飛ぶ事がでる。
だからか、もうすぐ世界線が消滅してしまう命を、感じる事ができるようだ。
音子が最初に世界線を移動した時に会った、そっくりな彼女もまた、音子は同じようなものを感じていた。
ただ、その時は理解できず、今はその時の事については忘れていた。
豊は、此処までくれば、音子の言う事は、おそらく当たっているのだろうと直感した。
だが、今目の前にいる猫が、なんの意味もなく、今此処にいるとは思えなかった。
猫が移動し始めるのを待って、二人は猫の後をつけた。
しばらくすると、予想された光景に出くわした。
「やっぱり」
豊の視線の先には、一匹の三毛猫が、ホームレスのおじさんと戯れる姿があった。
音子がたどってきた、ホームレスのおじさんの世界では、音子と出会って別れた、それだけの関わりだったのだろう。
でも此処では、もうすぐ命を終えようとする一匹の三毛猫が、死ぬ間際に関わった、最後のぬくもりという事なんだ。
音子と出会わなければ、おそらく見る事の無かったこの情景。
見ていたとしても、知る事の無かった小さな命の最後に、豊は少し寂しさを感じた。
音子も、豊と同じ気持ちだったのか、頬には涙が流れていた。
しばらくしてから、三毛猫はホームレスのおじさんのところから離れ、一匹、神社裏へときていた。
「私ここから、この世界に飛んできたさ。」
音子の発した言葉の意味は、この三毛猫が此処で死ぬことを意味していると、豊は理解した。
「あの猫、僕と会えば助かるのかな?」
助からない事は分かっていた。
もし助かるなら、此処に音子がいないような気がしたから。
「あの子は無理だと思うさ。」
音子の言葉に、二人どちらからともなく、その場を離れた。
猫は死ぬ時、人目のつかないところで死ぬと言う。
ただの体調不良からの行動だったとしても、豊には、この猫の気持ちとして、人目につきたくないのだと思えた。
二人は、部屋に戻ってきていた。
少し寂しい場面に立ち会ってしまったから、二人とも気分が浮上しなかった。
特に人探しの事について話す事もなく、なんとなくテレビを見たりして時間を潰した。
夜は勉強する予定だった豊も、この日は早めに布団に入り、眠りについた。
と言っても、フローリングの上に敷いた、掛け布団だけではあるが。
音子はしばらく、窓から空を見上げていた。
空には、流れ星が一つ流れていた。
今のが、あの三毛猫の最後を示す流れ星だったようで、音子の目から、再び涙が流れた。
音子はその後、豊の布団に入って、豊にくっついて、フローリングの上で一緒に眠った。




