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姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています  作者: もちもちほっぺ


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2

リリアーナはそれを黙々と繰り返した。

昼前には片付いた。


追加の玉ねぎを届けに来たマルタが、かごを受け取りながら少し目を細めた。


「……早いですね」


「水につけると剥きやすいんです」


マルタは何も言わなかった。ただ空になったかごを抱えて出ていった。


廊下では、別の使用人が待ち構えていた。


「お嬢様、東棟の廊下を拭いていただけますか」


雑巾が差し出された。リリアーナは受け取った。

東棟の廊下は長かった。


端から端まで膝をついてひたすら拭いていくのは、それなりに骨が折れる。

今日は朝から何も食べていない。膝をついて立ち上がる動作を繰り返すと、頭がくらりとする可能性があった。


リリアーナはしゃがんで廊下の長さを眺めて、少し考えて、雑巾を足に巻いた。


そのまま廊下を、歩きながら拭いた。膝も痛くならなかった。頭もくらりとしなかった。半分の時間で終わった。


東棟の廊下を拭き終えて戻ると、今度は薪割りを言いつけられた。


腕が細くて力がないから、斧を振り下ろしても割れないことが多い。今日は割る前にナイフで薪に切り込みを入れた。

繊維に沿って、薄く。斧を振り下ろすと、今日は気持ちよく割れた。


リリアーナは少し、ほんの少し、口の端を上げた。


腹が、また鳴った。

薪割りをしながら、リリアーナは今日の食事のことを考えた。来るかもしれない。来ないかもしれない。来たとしても、パンの切れ端かもしれない。それでも来るなら、ありがたかった。

薪が、また気持ちよく割れた。





イザベラが来たのは、夕方のことだった。


扉を開けて、姉は部屋を見渡した。

今日は何をしに来たのだろうと、リリアーナは思った。泣いているところを見に来たのか、腹を空かせてうずくまっているところを見に来たのか。


部屋には玉ねぎのかごもなく、リリアーナは窓の外を眺めながら静かに座っているだけだった。


「……全部終わったの」


「はい」


イザベラは少し面白くなさそうな顔をした。それから桶を見た。


「なにこれ」


「玉ねぎを水に浸けると皮が剥きやすくなるんです。目も痛くなりませんし」


イザベラは桶を一瞥した。

それからリリアーナを見た。なんとも言えない顔をして、ただ「……へえ」とだけ言い、踵を返した。


扉が閉まった。

しばらくして、また開いた。

今度のイザベラの手には、皿があった。


夕食の皿だった。仔羊のローストが半分ほど残っており、付け合わせの野菜がいくつか乗っていた。フォークで何度か突いたような跡があった。切り口から、肉の脂がにじんでいた。


リリアーナの胃が、音もなく反応した。

いい匂いがした。肉の脂と、ハーブの香りと、バターの甘さ。


一日何も食べていない体が、その匂いに正直に反応してしまう。胃が収縮して、唾液が出て、リリアーナは自分の体が自分の意思とは関係なく動いていることに、少しだけ惨めな気持ちになった。


イザベラは皿を、リリアーナの机の上にどん、と置いた。


「食べきれなかったから、あげる」


リリアーナは皿を見た。

フォークの跡がついた仔羊。イザベラの口紅が少しついたグラスの縁。食べかけのパンの端。


「……ありがとうございます」


礼を言った。言わなければならなかった。言わなければ、次はもらえないかもしれないから。


イザベラはその「ありがとうございます」を聞いて、満足そうに口の端を上げた。


「どういたしまして」


それだけ言って、今日は出ていった。

リリアーナは皿を見た。

少しの間、ただ見ていた。


それからフォークを取って、食べた。


冷めていた。イザベラが食べた後だから当然だった。それでも食べた。一口食べると、止まらなかった。


みっともないほど夢中になって、あっという間に平らげてしまって、リリアーナはそれから少しの間、空になった皿を見つめた。


美味しかった。


美味しかったことが、なんとなく悔しかった。

感謝しなければならないことが、なんとなく悔しかった。


でも感謝しなければ、次はない。


リリアーナは空になった皿を膝の上に乗せて、うつむいた。


腹は満たされた。

でも胃の奥の方に、じくじくとした感覚が残っていた。美味しかった記憶と、「ありがとうございます」と言い続けた自分の声が、重なって沈殿していくような感覚だ。


これが普通だと、リリアーナは知っている。

これ以外を、知らなかった。





翌日も、イザベラは来た。

今日は皿を手に持ったまま部屋に入ってきた。食べかけのシチューだった。

パンが浸けてあって、イザベラが一口食べた後のスプーンがそのまま刺さっていた。スープの表面に、薄く脂が浮いていた。


「はい、あげる」


「……ありがとうございます」


「そんなにがっついて食べないでね、みっともないから」


イザベラは壁に背をもたせかけて、腕を組んで、リリアーナが食べるのをじっと見ていた。


見られていると、うまく飲み込めなかった。喉が緊張した。

でも止めることもできなかった。お腹が空きすぎていて、体が勝手に動いた。スプーンを口に運ぶたびに、イザベラの視線を感じた。楽しんでいる視線だとわかった。

わかっていても、止められなかった。


「ねえ、美味しい?」


「……はい」


「そう」イザベラは満足そうに言った。「よかった」


何がよかったのか、リリアーナにはわからなかった。

ただ食べた。


空になった皿を返すと、イザベラは「明日は気分によるから、来ないかもしれないけど」と言い残して出ていった。


リリアーナは一人になって、膝の上に手を置いた。


来ないかもしれない。

その言葉が、思ったより胃の奥に刺さった。来るかもしれないし、来ないかもしれない。それをイザベラが決める。リリアーナには何も決められない。


惨めだと思った。

思ってしまった。


思わないようにしていたのに、今日は思ってしまった。

リリアーナは目を閉じて、膝を抱えた。背筋だけは、まっすぐに保った。



床の上を、虫が一匹歩いていた。どこへ行くのか、まっすぐに、迷いなく歩いていた。

リリアーナはしばらく、その小さな影を目で追った。

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