出会い③
下に降りると宿主とここまで送ってくれた男がいた
「ダンナなんかあったんですか?すごい音が聞こえたんですけど」
驚いている様子の男
「すまんな、あんたらに迷惑かけたくないからここから出ることにする」
ルーツはカウンターにお金を置く
「ダンナ…」
「世話になった…」
ルーツは少女と共に外に出た
辺りを見渡すと兵士たちがあちこちで走りまわっていた
ルーツたちは建物の陰に隠れた
「とりあえず、この村から出るぞ」
少女はルーツを見る
「どうした?」
「こんな事したらあなたも追われることになりますよ」
少女は心配そうに見つめる
「…大丈夫だ。もともとちょっと追われてる身だしな」
「…あなた…一体…」
「貴様ら何者だ!」
兵士がこちらに気づく
「不審な者たちがいるぞ!」
他の兵士たちもこちらに気づく
「ちっ」
ルーツは舌打ちすると少女の腕をひいて走り出す
兵士たちがルーツたちを追い始める
「しょうがない、森に入るぞ!」
ルーツはそのまま少女の手を引き暗い森の中に入った
ルーツは少女を引っ張ったまま奥へと進むククルは先頭に立ち、こちらを待っている様子
「こんなに暗いのに大丈夫なんですか?」
少女は腕を引くルーツに話す
「あぁ、俺は夜目がきくからな」
遠く後ろの方には炎らしき光が多数見えている
兵士たちもこの暗闇ではうまく探せていないらしい
このまま逃げきる
「どうして助けてくれるんですか?」
「だからそれはあんたには聞きたいことがあるからな」
「私を助けてまでききたいこととはなんですか?」
「あんたその耳…ファヴールだろ」
ファヴールとは神に愛された者
その者たちはそれぞれ動物の特徴を授かり神と同等の力をもつと言われている
少女は黙った
「俺はファヴールのあんたに聞きたいことがあるんだ…」
ルーツは少女に聞こうとしたとき悲鳴が聞こえた
その声は、後ろでルーツたちを追いかけている兵士の声だった
その声とともに兵士たちが騒ぎ始めていた
少女が立ち止まった
「兵士たちが危ないです…」
少女が後ろを見ている
ルーツも後ろを見る
兵士たちは何かと戦っている?
「お前たち!陣形を整えろ!」
兵士たちの隊長らしきものは大声で叫ぶ
兵士たちは陣形を整えるとそれぞれ異能を出しそれに向かって放つ
魔物は暴れまわっている
国から派遣された直属の兵士でさえも苦戦している
次々に兵士たちはなぎ倒されていく
「…今のうちに逃げるぞ」
ルーツは少女の腕を引くが少女が動こうとしない
「…私助けに行きます」
「!…っお前は、ばかか!今が逃げるチャンスだぞ!」
ルーツは、少女を掴んでる腕をひく
「私は傷ついているものたちが目の前にいるのに助けないなんてできません!!」
少女は、ルーツの掴んでいる手を振り払うと走り出す
ククルも後を追う
呆気に取られるルーツ
あいつは本当にバカだ
せっかく逃げることができるのに
助けたからといってそいつらが感謝すると思うのか?
『私は!傷ついているものたちが目の前にいるのに助けないなんてできません!!』
あの真っ直ぐ見つめる朱色の瞳
「あークソッ!」
悪態をつくルーツ
兵士たちの隊長が魔物に踏みつけられていた
「おい!やめろ!」
異能を魔物にぶつけているが魔物は効いていない様子だった
魔物は踏みつけていた隊長を投げた
そして雄叫びをあげると
魔物の周りのある木々や兵士たちに向かって火を放つ
魔物のあたり一面は黒くなり暗かった空から満月が見えた
月の光で照らされた魔物は黒く大きな狼の姿をしたものだった
「こんなの…勝てるわけがない…」
兵士たちはその魔物を見ると恐れ怯えた
そんな中
「早く怪我した者たちを逃して下さい!」
少女の声が兵士たちに向かって聞こえる
「あんたは…」
膝をついた兵士は少女見る
「大丈夫です、わたしが戦います」
少女は深く息を吐くと魔物に向かって走り出す
少女の朱色の瞳がさらに朱色になった
近づく少女に魔物は襲いかかる
「ゲノム!!」
そう叫ぶと少女の手が光りだす
「大地よ戒めの鎖となれ!アースチェイン」
声とともに魔物の下から木の根が出現し魔物の動きを止めさせた
「さぁ!今のうちに逃げて下さい!」
動ける兵士はその場から逃げる
隊長は動けない様子だったが、兵士たちによって運ばれている
少女が安心したとき魔物の紫の瞳が濃くなった
すると魔物の力が強まり少女の能力は弾け飛んだ
「キャッ!」
少女は魔物の力に飛ばされる
魔物は、倒れている少女に近づいてきた
少女の前でククルは魔物に威嚇している
魔物は大きな爪でククルを攻撃した
ククルは吹き飛び横に倒れ込んだ
「ククル!!」
少女は、ククルに向かって走る
その後ろを魔物はまたも大きな爪で少女を攻撃しようとしていた
少女は攻撃を防ごうと避けようとしたが間に合わない
だめー殺されるー!
ガンッと鈍い音が鳴り響く
少女が目を開けると
「間一髪だったな…」
ルーツが剣で押さえ込んでいた
「あなたは!」
「助けるとあんだけ大見栄はったくせにそのざまか」
魔物を押えて悪態をいう
「!あなた怪我を!」
少女はルーツの腕から血が出ていたことに気づく
「…」
魔物の爪がルーツの左腕をかすり血がでていた
魔物はルーツの血を見た途端振り下ろした爪を引っ込め後ろに下がる
「何?」
魔物の様子がおかしかった
「…お前名前は?」
ルーツは少女に向き合うと名前を聞いた
「え?こんなときに…」
「な、ま、え!」
「……ネズ…」
ルーツはネズに笑いかけると魔物を見る
「ネズ…俺がお前に聞きたいのは…」
魔物が下がっていたがまた襲いかかってきた
ルーツの灰色の瞳が漆黒に染まり
ルーツの腕から黒い炎が出る
その炎が巻き付くように剣に移る
「…黒い…」
ルーツは高く飛び魔物に向かって剣を振り下ろす
「アグニブレイク!」
魔物は真っ二つに斬られ切り口からは黒い炎が燃え続けていた
ネズはルーツを見つめる
黒い異能は神に呪いをかけられたもの
魔物さえも嫌う
ネズは昔聞いた話を思い出していた
ルーツから黒い炎が消え、もとの灰色の瞳に戻る
「ネズ…お前は俺の呪いを解いてくれるか?」
これはこれから起きる戦いの幕開け
「やっと見つけたよ…ルーツ」
二人を見つめる黒い影がそう呟いた




