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絶対攻撃力1  作者: 桜毛利 瑠璃
第一章
25/35

25.分割……さん

 昼御飯を食べ終えたシュン達4人は、難易度マックス状態になっているアスレチックに挑みに行った。


 別に今、何かしたわけではない。


 元々、このアスレチックは、4人プレイを想定して準備していたので、1人2人では、難易度は低くなっている。


 だか4人で挑もうとすると、気が付いた時には凶悪な罠が4人を分断し、お互いをフォローし合うことも出来ない内に、エリア外に放り出されてしまうはずだ。


 そんな罠に負けずに、力を合わせて困難をクリアしていく内に、きっと強い絆と、何者にも崩すことの出来ない団結力を身に付けられるはずだ。


 クリアすることが難しいように造ったのは俺だが、4人には頑張ってほしいものだ。




 4人を見送ったあと、昼御飯の片付けを終わらせ、俺はようやく一人の時間を得ることが出来た。


 新しく俺の部屋に鍵を付けたので、いきなり乱入されることはないだろう。


 なので安心して魔王麒麟の対策品の準備が出来るのだが、まずはスズメさん達の監視情報を聞いておこう。


 結論から言うと、まだ魔王は現れていないようだ。


 ただ、アリスが言っていたように、魔物が天物を押している状況になっていることは確かなようだ。


 でも魔王が参戦している訳でも無いのに、魔族の勢いが増しているのは何故なんだろう。


 魔物の主戦力は、ファンタジーでポピュラーなコボルト、ゴブリン、オークだ。

 そいつらが、草原に落ちている石を拾いながら天物に向けて投げている。

 こう聞くと、大したことは無さそうに思えるが、魔物の数が多いのでうち上がる石は弾幕と化している。そこに一部魔法も混ざっており、直撃しなくとも当たった天物はバランスを崩し地面に落下している。


 地に落ちた天物は、動物型の魔物であるゼブラビル(シマウマ)やゴートビル(ヤギ)やシープビル(ヒツジ)やジェラフビル(キリン)の集団が、草原を縦横無尽に走り回っているので、落下地点が悪いと、走り回っているだけの魔物型動物集団に巻き込まれ、そのまま踏み殺されていたりする。


 対して天物の主戦力は、クロジル(カラス)やカイジル(トンビ)やイージル(ワシ)やホージル(タカ)やファージル(ハヤブサ)やスパジル(ツバメ)だ。

 スパジルとホージルとファージルが高速で魔物に接近して一撃離脱を繰り返し魔物を戦闘不能にしている。

 イージルとカイジルは、上空から魔法を放っている。

 そして天物の殆どを占めるクロジルは遊撃のようで、草原の草むらからいきなり飛び出して、油断している魔物に襲い掛かったり、魔物から投げつけられた石を上手くキャッチして、そのまま投げ返していたりしている。


 魔物が投げた石を天物が空中キャッチして投げ返して、それを拾った魔物がまた投げているので、主戦場の石は無くなりそうもない。


 もしこれが、魔物の群と天物の群との一般的な戦い方だとしたら。


 こんな決め手の無い戦いでは、滅多に決着が着くことはないだろう。


 何故なら、どちらの群れにもリーダーらしき存在がいないからだ。

 これでは殆どの場合、疲れた魔物や天物から勝手に離脱していくからだ。そして戦線が縮小していき、最後はうやむやで終わるに違いない。


 でもこの戦いはリーダーらしき存在が居ないのにも関わらず、魔物側が押し始めている。


 今回の討伐対象である麒麟の魔王は、戦闘特化ではなく、もしかしたら頭脳派の可能性が高い。そして近くにいるだけで魔物を強くする、そんなスキルを持っているのだろう。


 そう考えると、アリスが『あんな臆病で弱い生物が何故魔王になれたのか謎であるがの−−(中略)−−あやつは狡猾だ。何をしてくるかわからないやつぞ』と言っていたのも頷ける話だ。


 麒麟の魔王は、自分自身は戦わずに部下を使って戦う、魔王と言う存在からすると、変則型なのかもしれない。


 だとしたら、魔王は魔物の群れを制御できるスキルを持っているはずだ、ならば魔物の集団の方が厄介なのかもしれない。


 俺は、その事を念頭に入れて麒麟対策品を並列思考を使いながら造り始めた。


 分割した思考の一つは、製造の補助にあてて、一つは、スズメさん達にあてて、最後の一つは。




−−《副思考3視点》−−


 俺は、副思考3のジンサンだ。副思考と言えば解ると思うけど、劣化並列思考で分割した思考の一つだ。


 主思考のジンが物造りをしているって言っても。イメージを固めて、石細工術や練巾術や錬金術スキルでパッと造るだけだから。そんなの見ていて面白くないだろう。


 だから俺が出張ってみた。


 主思考のジンの補助をしている副思考1のジンイチは、試行錯誤の結果を纏めたり、脳内反復作業をしたりと、学習とか勉強とかが得意な性格だ。


 スズメさん達の映像を見たり聞いたりしている副思考2のジンジは、そんな見たり聞いたりした情報を纏めたり、芸術的デザインを考えたりと、整理整頓とか集計とかが得意な性格だ。


 ん、俺?

 俺は、ゲームとかアニメとかラノベとか、したり見たり読んだりするのが大好きだ。イタズラも好きだけどな。そんでもって妄想を膨らませるのが得意だけど面倒くさがりな性格だったりする。


 主思考であるジンは、そんな性格がそれぞれにあることなんて知らないはずなのに、的確に配置しているのは何故だろうか……まぁ、考えてもわかるものじゃないし、面倒だから寝るか。


お休みなさい


zzZZzzZZ



 はっ! いくら面倒だからといっても寝たら駄目だ。主思考のジンに頼まれていた確認をしなければ。


 そう、チモシーに色々な意味で食われそうになった時、動けるようになった理由の確認だ。



 こんな突拍子もないことなのだから、まず間違いなくスキルだろうとジンが思っていたが。やっぱり当たりだった。



【精神異常耐性GM(限界突破) Lv108】

<精神異常になりづらくなる。


※GM:グランドマスター

 上限値まで能力を上げた者に対する称号


※限界突破:上限値となっても諦める事なく高みを目指した者のみ得られる。但し、同じく限界を突破した者からの協力が必要>



 これは俺の想像だが、天魔神族のチモシーは、魅了系のスキルを持っているのだと考えられる。

 相手を魅了し、お願いすれば大概の事は叶うだろう。なんせ相手の思考に自分の意思を混ぜることが出来るのだから、使い方次第では極悪なコンボになる。


 そして俺が限界突破しているのは、チモシーの魅了系スキルが上限を越えているのだろう。


 そうとは知らなかったが主思考のジンは、このままでは不味いと俺達、並列思考を使ってまで抵抗した。その結果、限界突破してチモシーの魅了系スキルから逃れられたのだろう。


 でも、これでひと安心とは言えない。なんせあれから数時間しか経っていないのに108までレベルが上がっている。と言うことは。チモシーの魅了系スキルのレベルは、少なく見積もっても120はあるはずだ。


 油断すれば、再び魅了されてしまうかもしれない。



 でも魅了に対しては、そもそも根が善良なチモシーだから、さほど危惧する必要は無いと思っているがな。



 だけど、新たに宿っていた複数のスキルの方に問題があった。この複数のスキルは間違いなくフラグだ。それも限り無くヤバい方のフラグだ。



【森の管理者の刻印】

<世界の何処に居ても、森の管理者に自分の居場所を伝える


※森の管理者の興味を持たれ、刻印を刻まれた為>


 いつの間にか刻印を刻まれていたみたいだ。俺はアリスにストーカーされ放題になったようだ。



【森の知識】(体液複写)

<森の知識が理解出来る


※体液複写:濃厚な体液を交換した事により知識の一部を複写された>



 森の知識……なるほど、食べられる植物と食べられない植物の見分けや、その名前、効用がわかるぞ。これは、ありがたい。アリスに感謝したいのだが。


 濃厚な体液の交換ってなんだ。まさか、アレは夢では無かったとか。いやいや、そんな重大なこと、覚えていないなんてあり得ない。


 漫画とかで稀に目にするシーンだけど、そんなのは酒を飲んで酔っ払ってたり、何らかの理由で意識がなかったりした時だけだ。俺はあの時、酔っ払ってもないし、意識がなかった訳じゃない。だから大丈夫だ。


 そう、きっとあれだ、風呂場だ。俺は8年振りに風呂に入ったのだから、湯に入った事により身体から溶け出した8年分の濃厚なエキスが湯水に溶け込んでいたんだ。この世界にはお風呂に入る習慣が無いし、アリスもきっとそうに違いない。


 お互いの身体から抽出されたエキスが混ざりあって、長湯していたから交換って感じになったんだ。うん。そうだ、そうに違いない。



【知識・才能複写(任意、体液複写)】

<濃厚な体液の交換することで、知識や才能を複写することが出来る。但し対象の才能を複写で得る為には、能力名を知っていなければならない。


※多才な才能を持ち、魔力操作が限界値の時、濃厚な体液の交換を用いた、複写を体験した為>


 こいつは凄い俺の得意な妄想が爆発しそうだ。俺Tueee系の話でも最強になりやすい、相手のスキルを盗める能力だ。実際は才能だから劣化コピーぽいが。


 この能力でスキルをコピーしまくれば、俺は天下無敵になれるかもしれない。俺の妄想が叫んでる、このスキルは大当たりだ。間違いなくスキル自体は使えるスキルだぞ。


 でもこれって、俺には使えないスキルだよな。


 濃厚な体液の交換って言われても、もう風呂に入ったところでエキスは出ないぞ。

 そもそもスキルの欲しい相手と風呂に入るって、どんなシチュエーションなんだ。


 でも体液の交換って言えば、相手の手を握れば良いのか? 手にかいた汗を交換って、でもぜんぜん濃厚じゃないか。

 じゃあキスならどうだろ、唾液の交換って言うくらいだし、スキルの欲しい相手に通りすがりにキスする。

 どう考えても犯罪だし、そもそも唇と唇を重ねるだけで、どうやったら唾液の交換が出来るんだろ?


 としたら、やっぱりアレしかないのか、尚更俺には無理じゃないか。スキルの欲しい相手を部屋に連れ込むこと自体出来るわけがない。そんな事が出来るくらいなら、未だに童貞を守ってなんていないさ。


 くそ、リアルのことを考えると、妄想が萎えるぞ。宝の持ち腐れでも何でも良いから、精神安定の為にこのスキルの事は忘れよう。妄想には最高の題材なのにもったいない。



【世界の(コトワリ)の免罪符】

<世界の理に触れても赦される。


※神族に受け入れられ、そして愛され、困難に立ち向かえる意思を持ち、尚且つ、神の使いに感謝され、更に赦しを得た為>


 世界の理って、天神の使いを見たら駄目って奴だろ。他にも何かあるのかな。何にしろ、異世界の常識だって知らないし、迂闊に理ってやつに触れても赦されるなら安心だ。


 でも、取得した条件の内、神の使いに感謝されたってのは、巫女さんに巫女服の事を教えたからで、赦されたのは、二人組の天神の使いに『無罪放免』って言われたからかな。


 そんでもって、神族に受け入れられって、天魔神族のチモシーに受け入れられたってことだろ。そんで愛されって、俺ってチモシーに愛されてるってことか。妄想が爆発するが、どうせあれだろ。きっと親愛なんだろ。ふふふ。今の俺は、思考が冴え渡っている。もう、もしかしてなんて思うことなどない。



 ここまでのスキルも、十分に俺に何かをさせようとするフラグに思えるし、効果や取得条件や発動条件がバレたらヤバいが事になるのは想像できる。


 でも最後のこのスキルは、まるで想像がつかない。明らかに地雷系であることは間違いないのに。


【あきつかみのかご】(承認待ち)

<あきつかみのかごをえられる。


※承認待ち:取得選択可能


【はい】

【しょうち】

>



 どう扱えば良いんだ。


 まず、スキル名が全て平仮名って、初めてだ。しかも、効果がスキル名と同じでまったく意味がわからない。


 そもそも、平仮名だけの羅列じゃ、どこで句切れば良いんだ。


『あき、つかみ、のかご』


『秋掴み野籠』なのか?


それとも


『あき、つかみの、かご』


『秋掴みの籠』ん?


『秋掴みの加護』か?


 どちらにしても、秋掴みがわからん。でも加護って言うなら。


『あきつ神の加護』とも読みとれる。


 あきつ神と言われても、さっぱりわからない。


 わざわざ加護をくれるってことは、知らない内に、この世界の神に気に入られたのか。


 良くわからないが神様の加護だったら、悪いことにはならないと思いたいのだが。


 この選択肢はなんだ?


【はい】と【しょうち】しかないじゃないか。これじゃあ選択肢と呼べないぞ。このパターンって限り無く怪しいし、ヤバいことになるに決まってる。そんなことを考えながら見ていると。


【はい】

【しょうち】

【いいよ】

【よろこんで】

【うけたまります】

【あたりまえだ】



 見ている間に選択肢が増えていった。


 いやいや、違うそうじゃないって。


【はい】

【しょうち】

【いいよ】

【よろこんで】

【うけたまわります】

【あたりまえだ】

【だまっておれについてこい】

【しあわせにしてやる】



 俺は完全に理解した。

 これは間違いなく厄介事だと。


 そもそも俺が勝手に命名した四文字漢字魔法に介入したあげく、俺の思考に介在までしてくる存在が普通な訳がない。


 関わったら駄目だ。ぜったいに駄目だ。


 そう、俺は何も見ていない、何も知らない、新しいスキルは【世界の理の免罪符】までだ。


【?】


 そろそろ、夕飯の準備をしなければならないな。


【:-<】


 そうだ、あいつらもアスレチックで泥だらけになっているだろうから、風呂の準備をしなければならないな。


【:-(】


 十分過ぎるほど能力閲覧出来たから、魔法を解除しよう。


【:-)】


 あれ、解除できない。


【にやり】


 おかしいな。魔力は止まっているのに、何でだろう。


【ふふふ】


 解除できないなら、しかたがない。


【にやにや】



 寝よう。



【!】



 どうせ俺は並列思考で分割した副思考(3)だし。身体は1つしかないから夕飯の準備も、風呂の準備も主思考がやってるだろう。


 考えすぎて疲れたし、寝よう。それが良い。


 お休みなさい。zzZZzzZZ



【!?】



zzZZzzZZ


【……。】



zzZZzzZZ


【……。】



zzZZzzZZ


【あの】



zzZZzzZZ



【あの】


zzZZzzZZ



【もしもし】



zzZZzzZZ



【マジ?】



zzZZzzZZ



【……。】



zzZZzzZZ



【おもしろい!】


【そっちがそのきなら】−−−−…………





−−《ジン視点》−−


 スズメさん達の情報からすると、魔王が現れないまま争いは魔物の勝ちで終わりそうだ。魔王の姿がわからないから、準備万端とは言えないが、それなりに対策品が出来たし、こんなもんで良いだろ。


 どうせ俺は戦えないし。メインは魔王を倒したことのあるシュン達なんだからな。


 そう言えば新しいスキルが、色んな意味でヤバいことはわかったけど【世界の理の免罪符】の確認が終わったとたん休憩に入るって。俺の思考とは言え傍若無人じゃないか。対策品を使うタイミングとか戦術を考えるのを手伝って貰おうと思ってたのに。あれから反応がないぞ。


 でも並列思考も休息が必要だと言うことがわかったから、これからは気をつけよう。


 いざと言うときに休憩に入られたら大変だからな。


 この時の俺には、並列思考の1つが、とてつもない厄介事に関わっているだなんて知るよしも無かった。


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