表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

始まり。

太陽が沈む空、もうすぐ暗闇に飲み込まれるカラスが鳴いている哀愁を感じさせるオレンジの光に包まれた世界。



此処は依來麻の町の南区 民家が途切れ山が有る南区の一番端、民家と山との狭間の道を一台のバスが走っている。

バスは木製の屋根とベンチが置かれたバス亭の前で止まりバスの扉が開いたが誰も出てこない。


開いた扉から会話が聞こえてくる。


「お嬢ちゃんどうかしたかい?」

「あ、あの、この近くに神社って有りますか?」

「神社?……ああ、神社はあの石柱の上にあるよ」

「えっと……彼処にある石柱ですか。ありがとうございます」


少女が一人、バスから降りてきた。


降りてきたのは瞳は大きめの少しボーッとした様に見える翠、髪は艶やかな金髪、腰まである金髪の先は赤いリボンが結んである。服装は紺のジャケットに水色のミニスカート、ミニスカートからは黒のスパッツ、肩には小柄な体格に合わない大きなボストンバッグを下げている。


「ふぅ、……やっとついたぁ」


少女はバスから降りると大きく深呼吸、バスが走り去ると教えられた石柱の元まで向かう。


山側に建てられた少女より大きな磨かれた四角い石柱、石柱の傍には赤い鳥居と山の奥へ続く石段がある。この先が目的の神社なのだろう。


「此所が今日から下宿す……ぅ」


少女は石段の先を見上げてげんなりした顔をする。


整備されてるのか登り易そうな綺麗な石段だが、石段の下からは石段の終わりが見えない長い石段、人の登ろうと思う意欲を挫く。


「こ、これ登らなきゃいけない?……いけないんだろうね。毎日」


少女の名は天咲,華璃名(アマサキ,カリナ)


カリナは16になる今年から高校生の少女。


カリナが今年から通う事となった高校はカリナの家から遠く、しかもその高校が特殊な事情があり、高校に通う生徒は依來麻の町から許可無しに出たらいけないと言う特殊な高校だった。


なので高校に通うのに丁度良い依來麻町にあるカリナの母の知り合いだった人が居る神社に下宿する為に来ていた。



カリナは此れから毎日上り下りする事に成ろう長い石段に顔を引き吊らせ、溜め息を吐くと重い足取りで鳥居を潜り長い石段を登り始めた。



上りはじめて40分後、登る内に日が沈む。太陽は沈んだが今日は満月、満月の月明かりが道を照らしていた。


「ゼェ、ゼェ、」


この長い石段ももう終わり上には二つ目の赤い鳥居が見えていた。


カリナが鳥居まで辿り着くと見えたのは、月明かりに照らされた門番として建てられた二つの狛犬らしき守護石像、そして神社の本社。


「ッ」


カリナが鳥居を潜ると、長い石段を上り荒くなっていた息を呼吸を忘れた様に突然止めた。


カリナは鳥居を潜った瞬間まるで、神様を特別信仰ををしてないカリナが、尊敬する恩師を目の前にしたかの様な極度の緊張した状態に陥った。


ただ良く見れば此処は見た目は少し寂れた神社。

カリナは感覚より目に写る光景を信じ息を飲んだ感覚が気のせいだと思うと、先ほど感じたモノが幻だったかの様に平常心に戻った。


「……これからお世話になる神社に来たんだから手を合わせておいた方がいいかな」


通常の感覚に戻り息を整えたカリナは、信仰心は無いが此れからお世話になる場所だからと一応参拝しておくことにした。



カリナは手水舎スルーし参道の真ん中を進み、本社の正面の賽銭箱前まで行き五円玉を賽銭箱に投げ入れる。


ガランガラン


賽銭箱上の鈴を2回鳴らし手を合わせる。


……手早くカリナなりの参拝を済ませた。


カリナは参拝を済ませてからあんな長い石段を上って参拝に来る人が居るのかな?と疑問に思い、カリナは罰当たりにも下にある賽銭箱を覗き込んだ。


カリナの予測通りと言うべきか……賽銭箱の中には五や十と書かれた硬貨が十数枚しか入っていない。暗い中でも底が見えてるスカスカな中身が見えてしまい、カリナは物悲しい気分になる。そんな失礼な行為をしているカリナの背後に……


「ようこそ夢現神社へ」


……宮司の格好をした若い眼鏡を掛けた男性が立っていた。


「キャア!?」


カリナは突然背後から聞こえた男の声に振り返り男性の姿を見てから、変質者に遭遇した様な悲鳴を上げる。


「イヤイヤなにもしないよ?悲鳴は酷くないかな」


男性は気弱そうに苦笑いし頭を掻く。



男性の格好はどう見ても神社の関係者。カリナは怪しい相手で無いと直ぐに理解した。


「え、あ、ご、ごめんなさい突然でビックリして」


理解するとカリナは悲鳴と失礼な行為を目撃されてたのかもしれない、そんな二重の意味で気まずく男性に平謝りする。


「いやいや謝らなくても構わないよ。突然後ろから声を掛けた僕が悪いんだから」


苦笑いのまま言われカリナは失礼な行為は目撃されてないのか疑問に思いながらも頭を上げる。


「所で君は?こんな時間に参拝するなんて事は無いだろうし」


カリナはえっ?と声を上げた。


「あの、私今日から此方の神社で下宿させて貰うのに来たんですが、その聞いてませんか?」


「ふむ?下宿……僕は聞いてないな」


男性は顎に手を置き少し首をかしげた。


「え、その、本当の事ですよ?母の知り合いの……」

「イヤ信じてない訳でないよ。僕はまぁ所謂アルバイトの様な者でね。聞かされてなかったんだろう」


カリナは良い歳に見えるのにアルバイト?と失礼な事を思った。


「じゃあこの神社を管理してる人の所まで案内するよ」

「お願いします」


連れてかれた先、本社の左に神社の一角に建てられた和風な家。

カリナは男性と共に家へと向かい家のチャイムを鳴らした。


チャイムの音が響く……誰も出てこない。


「留守?……ですか」

「居る筈何だけどな?」

「……声?」



カリナは家の裏手の方から聞こえるくぐもった声を耳に拾う。


「この声は……」

「こ、声が可笑しいですよね!」


カリナはくぐもった声に犯罪的か病気的な事を想像し、失礼しますと言いながら急いで声の聞こえた裏手に回ると……


……カリナは固まった。


巫女服を着た長い黒髪の少女がグッタリした銀髪の少女を抱えて転がっている。

銀髪の少女の服装は所謂黒のゴスロリ、巫女服は改造されてるのか少女の肌が見える部分が多い。大和撫子風の微笑んだ巫女服の少女、十代になったばかりに見える人形の様に綺麗な幼い容姿の銀髪の少女。


年上の優しいお姉さんに抱かれている幼い少女にも見えるが……ただ……くぐもった声は銀髪の少女から出ている。巫女服の少女に口を押さえられている。巫女服の少女の手の位置や動きが何やらカリナの目には痴漢オヤジか真夏にコート一枚の変態を連想させる。

 

「ウグゥ、ウグゥ」


サワサワ、ナデナデする巫女服の変態、この光景を見てカリナが思うことは…貞操の危機。


銀髪の少女がカリナに気が付いた。スカートの中に入ってきそうな巫女痴女の手を必死に止めている銀髪の少女の眼が助けてと訴え掛けている。


カリナは関わりたくないと思ったが、此れから下宿する神社の関係者の可能性の高い巫女服の相手が、自分の年齢的に見ちゃいけない事を繰り広げられたら気まずいと思い挨拶をして止めようとした。


………この時カリナは判断を誤っていた。


…常識的に考えて巫女服の少女が来客に気づいていないから変態行為を続けているそう判断した事だ。


「あのお邪魔しま…」 


カリナは言葉を途中で止める。  


巫女服の少女の強烈な眼光に身を竦めたからだ。


微笑んだ瞳の奥に見える。飢えた獣の眼光、いや痴女のドブ臭い眼光、邪魔すれば『あなたも☆』と変態の眼が語っている。


巫女服の痴女、奴は来客に気付いていた!

気付いた上で続行しようとしている!しかも痴女の眼がカリナのソコソコの胸に行っている。痴女はフニャッと微笑み手がワキワキと何かを揉みしだく動きをしている。そして実際に嘆きの声を上げ揉まれるのは銀髪の少女、カリナはこんな酷い変態に遭遇した事がないと絶句。


「あ、あら~お客様?ごめんなさいね。少し立て込んでいて」


巫女服の少女は存分に楽しんだ後、さも今気付いた様な白々しい事を言うと、死んた目の銀髪の少女を置いてウェルカムとカリナの元へ向かう。

ポヨンポヨンと跳ねる胸、鈍重なお姉さんな感じなのに……カリナが見たイメージとしては獲物を捕獲に向かう野獣。


カリナは下宿先の関係者の可能性が高いと言う理由で行動に迷った。……迎撃するか。撃退するか。


『彼のモノを叩く無形の槌 風槌!』

 

カリナがボストンバッグから痴漢撃退スプレーを取り出すと同時に聞こえた力有る言霊。


「わきゃあ!?」ゴフゥ!!


突然吹いた突風がカリナの横を通過し巫女服の少女に直撃。


バチィン!


痴女はハリセンで叩かれた様に顔を赤くしてキュウウ~と言いながら倒れた。


「な、なに!?この状況」


戸惑うカリナ原因が判ってるのか何時から居たのか苦笑する男性。カリナはあの言霊の声が少女の声だったことから隣の男性を見て方角的にも違うと判断。


「……大丈夫ですか?」


小鳥の様な小さな声。カリナが唖然としながらも振り返ると、其処には一人の少女。買い物袋を手に持ったカリナより二,三才年下に見える青髪の女の子。


カリナはあの風を出したのはこの娘だと一瞬考えたが買い物袋以外手振らな事を見て違うと考えた。なら誰が?


「……貴女は天咲さんですか?」

「え、はい!」


カリナは考えごとをしていて青髪少女の質問に上擦った声で返答。


「……そうですか。話は聞いてるです。ようこそ天咲さん。此処は迷える人に夢を見せ現在を生きる道標を示す神、夢現の神を奉る神社。夢現神社です…私はこの神社の数えて28代目になる巫女の」


「よ、よろしくお願いします」


「…罰当たり事をすると本当に天罰が有るので気を付けて下さい?」








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ