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不法行為につき、即座に駆逐いたします。〜突撃、いじめバスターズ!〜  作者: 村松希美


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第7章 匿名投票という名の悪意〜デジタル・ルッキシズムの断罪〜




学園内の空気は、少しずつ変化していた。

藤堂麗華という「選民の象徴」が、蓮と翼によって公然と論破された事実は、生徒たちの間でひそかな革命の火種となっていた。


しかし、悪意は形を変えて潜伏する。


二人が次のターゲットとして目をつけたのは、ネット掲示板とSNSを駆使した「クラス内匿名投票」という卑劣なシステムだった。ターゲットは、地味で控えめだが、誰よりも優しい心を持つ女子生徒、水無月みなづきあかり。


「『今週のクラス内・最も不要な人ランキング』……か。実に非論理的で、かつ有害な行為だな」

蓮はタブレット画面を凝視(ぎょうし)していた。そこには、あかりの顔写真が加工され、心ないコメントが羅列(られつ)された投票サイトのページが表示されている。


「またかよ。しかも今回は匿名(とくめい)の掲示板を使ってる。誰が投稿したか特定するのは骨が折れるぜ」

翼がキーボードを叩きながら不敵に笑った。


「だがな、ネット上の痕跡ログは消せない。投稿者のアクセス時間、IPアドレス、そして投稿の(くせ)。これらを解析すれば、犯人の尻尾は掴める」




1. 匿名という名の透明な牙



あかりは、クラスの端で常に(うつむ)いて過ごしていた。

「……私、何かしたのかな」

昼休み、偶然図書室で彼女が小さく呟いたのを聞いた蓮は、静かに歩み寄った。


「君が何かをしたかどうかは問題ではない。問題なのは、君を匿名という覆面(ふくめん)で攻撃している側の『卑怯』さだ」


「陣内くん……。でも、みんなが投票しているの。私がここにいるのが、間違いなんだって」

蓮は首を振った。


「君の存在価値を、多数決で決める権利は誰にもない。君は一個の人間であり、法に守られた尊厳(そんげん)を持つ個人だ。……翼、準備はできたか?」

「ああ。ターゲットの端末、全部洗い出したぜ」




2. デジタル・ハント



翼の解析(かいせき)によれば、この悪質な投票を操作していたのは、あかりの席の斜め前に座る、常にスマホをいじっている男子グループだった。彼らは「人気者」の仮面を被り、陰でSNSを操作して世論を作り上げることを「ゲーム」と称していた。



放課後。蓮と翼は、該当の男子グループが()まっている部室に乗り込んだ。


「何だよ、いじめバスターズか。俺たちに何か用?」

グループのリーダー格が、鼻で笑う。

「俺たちはただの匿名投票を楽しんでるだけだ。別に、あかりを嫌いな奴が投票してるだけだろ?」

蓮は一歩も引かず、プロジェクターでホワイトボードにデータを投影した。


「これは、君たちが運営している匿名投票サイトの『投稿記録』だ。IPアドレスは君たちの個人のスマホと完全に一致している。さらに、投票の過半数は同一のWi-Fiから送信されている。これは『匿名』ではなく、君たちによる『組織的な誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)』だ」

「な……ッ!?」

男子たちは顔色を変えた。


「匿名性は、責任から逃れるための(たて)ではない。不法行為を行った際、その盾は逆に君たちの罪を確定させる証拠となる」

蓮は淡々と、しかし(すさ)まじい迫力(はくりょく)で続けた。


「君たちのやっていることは、民法第709条の不法行為、刑法第230条の名誉毀損(めいよきそん)、そして青少年保護育成条例への抵触も視野に入る。警察を呼ぶか、それとも今すぐこの投票サイトを閉鎖し、学園の掲示板で謝罪声明を出すか、どちらにする?」


「い、いや、謝罪なんて冗談だろ! こんなのただの遊びだって!」


翼がスマホを取り出した。

「ああ、遊びだよな? なら、このサイトの全投稿ログを、全校生徒が見られるリンクにして、各クラスのLINEグループに転送するのも、ただの『遊び』ってことでいいよな?」

翼の指が、送信ボタンの上で止まる。

「謝罪文を出すまで、この送信ボタンは押さない。……3秒で決めてくれ」


「……っ、わ、わかったよ! 謝るよ! 消せばいいんだろ!」




3. 視点の革命



翌日、全校生徒が見る掲示板には、男子グループによる謝罪文が掲載されていた。

投票サイトは閉鎖され、あかりに対する理不尽な中傷は止んだ。


教室に戻ったあかりは、震える声で蓮と翼に礼を言った。


「ありがとう……私、もう消えてしまいたいって、何度も思ったから」

蓮は、珍しく少しだけ柔らかい表情で微笑んだ。

「君が消える必要はない。必要なのは、君を傷つけるシステムを消すことだ」

翼はコーラの缶を開けながら、満足げに笑う。


「ルッキズムだの、ランキングだの、そんな無駄なことにエネルギー使う奴らなんて、論理的に計算すれば『損失』でしかないからな」

あかりは、その言葉を聞いて、初めて教室で大きな声で笑った。


彼女の笑顔を見た蓮は、自分の胸の中に、何か温かいものが灯ったのを感じた。


放課後の廊下(ろうか)


「蓮、お前、さっきの『美しさの定義』の話、かなり熱かったな」

「……不法行為に感情を投影するのは非効率的だが、彼女の笑顔は、法的に保護されるべき『幸福の権利』の一部だ」


「はいはい、かっこいいこと言って。……で、今日のポテトはLサイズ2つに増量でいいんだよな?」

「論理的に考えて、シェイクもバニラとチョコの両方を買うべきだな」


「そうくると思ってたぜ、相棒!」

二人の影が、夕暮れの校舎に重なる。



匿名という名の悪意は、二人の「事実を突きつける知性」によって、(もろ)くも(くず)れ去った。

学園の「見えない格付け」が、少しずつ、音を立てて崩れ始めている。


聖園(みその) 華音(かのん)の目には、まだこの異変は届いていない。しかし、蓮と翼は知っていた。これは始まりに過ぎないということを。


「……翼、次の案件だが」

「また何か見つけたのか?」

「ああ。今度は、演劇部の中にある『指導という名の虐待』だ。一条大樹が所属する部活で、少し……不穏な兆候が見える」

「了解。俺の指がうずくぜ」



夕闇の中、二人の足取りは軽かった。

理不尽な学園を壊すための、戦いはまだ続く。













誹謗中傷は卑怯ですよね。匿名で集団で攻撃して、まじめに生きてきた人たちが傷つきますからね。


誹謗中傷軍団は、それで、自分たちは世の中を変えられると思っているようですが。


誹謗中傷軍団は大抵は自分の生活の不満やストレスを誹謗中傷という形で発散しているだけなので、ターゲットにされても気にする必要ないですよ。卑怯な奴らなので。

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