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不法行為につき、即座に駆逐いたします。〜突撃、いじめバスターズ!〜  作者: 村松希美


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第10章 毒花女王(ポイズン・クィーン崩落、そして夜明けの旋律




1. 聖域の断末魔



学園を覆っていた支配の霧が、ついに音を立てて晴れようとしていた。しかし、その霧の中心部――生徒会室という名の聖域には、最も深く、最も醜い「深淵」が待ち構えていた。


聖園(みその) 華音(かのん)。彼女の支配は、単なるスクールカーストの頂点に君臨するだけの存在ではない。彼女は、この閉鎖的な学園という空間そのものを、自らの「欠落」を隠すための巨大な鏡として完成させていたのだ。


厚い遮音壁(しゃおんへき)、磨き上げられたアンティークの家具、常に()かれるほのかなアロマ。そこは、華音が唯一「自分は世界で一番価値がある」と錯覚し続けられる聖域だった。


華音は鏡の前で微笑んだ。その笑顔は練習し尽くされた完璧なものだったが、鏡に映る瞳の奥には、(にご)った泥のような殺意が渦巻いていた。


彼女の周囲には、屈強な男子生徒たちが従順な番犬のように控え、女子生徒たちが、彼女の機嫌を損ねないよう息を潜めていた。彼らは皆、華音によって心の弱さを(たぐ)られ、言葉巧みに支配された操り人形に過ぎなかった。


「陣内蓮……。あの子たちは、私の完璧な箱庭を、無粋(ぶすい)な正義というゴミで汚したのよ」

不意に、生徒会室の扉が力任せに蹴り開けられた。


騒音に驚き、番犬たちが一斉に身構える。そこに立っていたのは、冷徹な理性を瞳に宿した陣内蓮と、その傍らで闘志を燃やす佐藤翼だった。


「聖園。君の『箱庭』は、今日で終わりだ」

蓮の声は驚くほど静かだった。華音は優雅に立ち上がり、紅茶のカップをソーサーに戻した。その所作には一切の揺らぎがない。


「ようやく来たわね、陣内蓮。あなたのその自信たっぷりな顔、いつまで保てるかしら? ここは私の城よ。あなたたちの居場所なんて、どこにもないわ」


「城? 違うな」

蓮は(かばん)から一冊の分厚い書物――六法全書を取り出した。それは彼にとっての聖書であり、盾であり、何よりこの理不尽な世界を切り裂くための鋭利な刃物だった。


「君は、自分の玉座に座っているんじゃない。嫉妬と猜疑心(さいぎしん)()り固められた狭い(おり)の中に閉じこもっているだけだ。君が他者を支配し、序列化するのは、自分が何者か分からないという恐怖からだ。君の完璧な振る舞いは、すべて他者の賞賛という名の栄養剤がないと維持できない、(もろ)い張りぼてに過ぎない」

華音の顔つきが、微かに歪んだ。しかし、彼女はなおも気高さを装う。


「あら、人聞きの悪い。私はこの学園の秩序を守っているだけよ。あなたたちのように、身の程を知らない下賤(げせん)な存在からね」


「秩序だと? 違う。それは、君の幼児的なごっこ遊びだ」

蓮は翼に目配せをした。翼がタブレットを操作し、プロジェクターの電源を入れる。生徒会室の壁に、華音の裏の顔が次々と映し出された。他者の精神を破壊するためのマニュアル、生徒たちを脅迫するLINE履歴、生徒会費の不透明な使途。


「君の『正義』の正体は、君の『劣等感』の掃き溜めだ。この資料は、既に警察と弁護士に送付した。これは脅しじゃない。法的な手続きだ」


「やめて! 消して! 私を……私を誰よりも高く見せて! 私が一番なのよ!」

華音の悲鳴が室内に響いた。仮面が()がれ落ち、内側に潜む卑小な怪物が露呈した。彼女はスクリーンを爪で引き裂こうと駆け寄る。番犬として控えていた男子生徒たちも、画面に映る卑劣な証拠を見て、呆然としていた。自分たちが誇りを持って従っていた「女王」が、ただの哀れな嘘つきだったと知った瞬間の絶望。


「もう終わりよ、聖園さん」

これまで華音に操られていた女子生徒の一人が、涙を流しながらそう言い放った。彼女の勇気が連鎖し、室内にいた他の生徒たちも、次々と華音のもとから離れていった。


「帰ってくるわ! みんな、私のところへ帰ってくるわ!」

華音は椅子にしがみつき、虚空に向かって叫ぶ。しかし、誰も振り返らない。女王は、豪華な椅子の上で、ただの「自分を愛してくれる人が誰もいない少女」として、取り残された。


蓮は、その姿を静かに見下ろした。

「君の戦いは、最初から誰とも競っていなかった。君は、君という『自分自身』とさえ向き合えていなかったんだ。……さあ、これから全校集会だ。君が全校生徒の前で、本当の意味でその(よろい)を脱ぐ時が来た」




2. 講堂の審判



全校集会という名目の、聖園華音による「支配の儀式」。講堂に集められた生徒たちは、押し黙っていた。カーストの上位層が最前列を陣取り、それ以外の生徒たちは萎縮(いしゅく)し、自らの居場所を隠すようにして座っている。


そこに、蓮と翼、そして結城(ゆうき) (みなと)が加わった三人が、堂々と正面扉から足を踏み入れた。

ざわめきが波紋のように広がる。壇上の中央で、華音は憔悴(しょうすい)しきった表情で座っていた。先ほどの生徒会室での敗北が、彼女の気品を完全に消し去っていた。

蓮はマイクを(つか)んだ。その手は微かに震えていたが、声は驚くほどに澄んでいた。


「全校生徒諸君。今日、我々はここにある『歪んだ秩序』を終わらせに来た」

蓮の声が講堂に響き渡る。翼が壇上のスクリーンに操作を加えた。先ほど生徒会室で晒された証拠が、今度は全校生徒の眼前に突きつけられる。


「聖園華音。君が支配の道具にしていたこのカーストは、憲法第14条の法の下の平等に真っ向から対立する。今日、この証拠とともに、我々は教育委員会、そしてメディアへ告発を行う。……君の支配は、もう終わりだ」


「うそ……」「こんなことが許されてたの……?」

会場から()れた(ささや)きは、やがて大きな轟音(ごうおん)へと変わっていった。支配されていた者たちの怒りと、解放の喜びが混ざり合い、講堂の空気を激しく揺さぶった。


華音は立ち上がり、蓮を指差して叫ぼうとした。しかし、彼女を支えていたはずの「信奉者」たちは、すでに彼女から背を向けていた。彼女の支配は、恐怖と恩恵という脆い絆で結ばれていたに過ぎなかったのだ。


「……あなたたち、分かっているの? 私を失ったら、この学園はどうなるか!」

華音の悲痛な叫びは、もはや誰の心にも届かなかった。蓮は、震える彼女の姿を静かに見つめた。そこには、かつて白雪 (つむぎ)を追い詰めた無邪気な加害者たちの面影と、同時に、独りぼっちで空っぽの箱を抱えていた一人の少女の姿が見えた。


蓮はマイクを置き、壇上から降りた。彼が歩く道筋に、生徒たちが自然と道を空ける。それはかつてのカースト上位者に対する道とは違った。畏怖ではなく、敬意に近い静かな道だった。




3. 檻の崩壊と、新しい夜明け



集会が終わり、講堂から出ると、空は既に深い群青色に染まっていた。カーストという絶対的な檻は、蓮たちが突きつけた「事実」と「法律」という刃によって、根元から切り倒された。


翼が大きく伸びをした。

「あーあ、終わっちゃったな。明日から、学校はどうなっちまうんだろうな」

「変わるだろうな。……だが、それは『自分たちで変えていく』という物語だ。もう、誰かに指示されることも、誰かを出し抜くことに必死になることもない」


蓮はポケットからスマートフォンを取り出し、画面に表示された、かつて紬と撮った一枚の集合写真を見つめた。彼女がどこへ行ったのか、今はもう分からない。だが、今の自分なら、もしどこかで誰かが理不尽に泣いているとしても、迷わず駆けつけられる。そう確信していた。


結城湊が、少し遅れて二人の元へ歩み寄ってきた。

「陣内くん、佐藤くん。ありがとう。……僕、図書室で、新しい物語を書こうと思うんだ。誰の評価も気にしない、僕だけの物語を」

湊の瞳は、かつての暗さを失い、穏やかな知性に満ちていた。


「いいじゃないか。俺たちは、その物語の最初の読者になってやるよ」

翼が笑い、蓮も小さく口角を上げた。


「……さて。論理的に考えて、今日の我々の大仕事には、最高級のディナーが必要だ。もちろん、予算は部室の予備費から……いや、今日は私がおごろう」


「えっ、あのドケチな蓮が? 何か悪いものでも食べたか?」

「翼、失礼だな。これは、自分自身の尊厳を勝ち取ったという事実への、ささやかな祝杯だ」


三人の影が、校門に向かって伸びていく。かつては支配されていた場所が、今はただの、広い、どこまでも続く未来へと繋がる道に見えた。


背後で校舎の明かりが一つ、また一つと消えていく。しかし、蓮たちの足取りは、これから始まる「等身大の自分たち」の物語に向けて、どこまでも軽やかで、力強かった。


夜の風が、彼らの髪を優しく揺らした。それは支配の終わりを告げ、新しい「夜明け」を予感させる、穏やかな風だった。


彼らはもう、誰かの支配下にいる「駒」ではない。自分の人生という物語の、正当なる主人公なのだ。


いじめバスターズの戦いは、こうして一つの大きな幕を閉じた。しかし、彼らの歩む道が続く限り、たとえどこかで理不尽な悪意が芽吹いたとしても、彼らは何度でも立ち上がるだろう。


その手には、色褪(いろあ)せることのない六法全書と、互いを信じ合うという、何よりも固い絆(盾)を携えて。


蓮は校門を出る直前、ポケットの中のスマートフォンを一度だけ強く握りしめ、電源をオフにした。


過去を盾にする必要はもうない。

明日からの物語は、今日、この瞬間から書き始められるのだから。

(終)









読んでいただきありがとうございます。


いじめバスターズー蓮と翼ーの戦いはこれで終りです。

物語としては。


今の現実の日本社会は虚栄心が強い自己愛パーソナリティー障害の女性たちが巾を利かせて、一部の男性たちが操り人形にされている様を観て情けないと思い、このいじめバスターズの物語ができた次第です。


私もアイデアを出してAIに丸投げしましたが、それはそれで良かったと思います。


カルトの妨害があるからです。


投稿者の皆様はくれぐれもお気をつけください。

国民が気づかないところで、思想の弾圧がなされています。

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