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不法行為につき、即座に駆逐いたします。〜突撃、いじめバスターズ!〜  作者: 村松希美


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第1章




「器物損壊罪。刑法第261条。3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」




放課後の2年B組の教室。夕日が差し込む窓際で、陣内じんない 蓮れんは、自身の右手に握られた通学用の運動靴を見つめながら、朗々とその罪状を読み上げた。




声のトーンは、まるで法廷に立つ辣腕弁護士のようだが、いかんせん彼の格好は、ブレザーの片袖が半分破れかけた冴えない男子高校生である。




「……で、あるからして。この運動靴の内部に、親の仇のごとく敷き詰められた合計四十八個の金色に輝く画鋲。これらは私の『財物』としてのスニーカーの効用を著しく害している。すなわち、完全なる犯罪行為。Q.E.D.(証明終了)だ」




蓮はそう言うと、ピンセットで一分間に十個という驚異的なペースで画鋲を抜き、机の上の空き缶へと放り込んでいった。チリン、チリン、と虚しい金属音が教室に響く。




「おいおい、蓮。ノリノリのところ悪いんだけどさ」


すぐ隣の席で、ポテトチップスをのん気に齧りながら、親友の佐藤 翼が呆れたように声をかけた。




「お前、さっきから法律の条文をブツブツ唱えてるけど、被害者は自分だからな? 普通は『誰だよこれやった奴! 出てこい!』ってキレる場面だろ。なんでちょっと嬉しそうに六法全書を脳内再生してんだよ」




「フッ、無知な男だな、翼。感情に任せて怒鳴るのは三流のすることだ」


蓮はメガネのブリッジをくいっと上げ、不敵な笑みを浮かべた。




「私は今、怒りの限界突破リミットブレイクを経て、逆に脳内がスーパーコンピュータ並みにクリアになっているのだ。いじめっ子どもの悪行を一つ一つ正確にカウンティングし、しかるべき時に法的な、あるいは物理的な社会的制裁を加える。そのためのデータ蓄積さ」




「いや、ただの強がりにしか見えんが……」


翼はため息をついた。




実際のところ、蓮の心の中は穏やかではなかった。


(……クソッ! 痛い! ぶっちゃけ、気づかずに一歩目を踏み込んだから、右足の親指の付け根に一発ブスリと刺さったんだよ! 痛えよ! なんで俺のニューバランスがこんなハリネズミみたいにならなきゃいけないんだ!)




内心では涙目で悶絶していた。しかし、ここで弱みを見せたら負けである。いじめっ子たちの思うツボだ。




彼らが期待しているのは、「うわあ、靴に画鋲が!」と泣き叫ぶか、怯えて学校に来なくなること。ならば、その斜め上を行くリアクションをしてやるのが、彼なりのプライドだった。




「それにしてもさ」と翼がポテトチップスを指で指し示す。


「最近、お前への嫌がらせ、ちょっとエスカレートしてない? 昨日は教科書がズタズタに破られてただろ」




「ああ、あれな」


蓮は画鋲をすべて抜き終えると、コンクリートの床にわざとらしく靴を叩きつけ、安全を確認してから足を滑り込ませた。




「**『建造物侵入罪(刑法第130条)』および『器物損壊罪』**の合わせ技だ。他人の机の中から教科書を盗み出し、損壊させる行為。あれに関しては、犯人の指紋をばっちり教科書の表紙から採取してある(※セロハンテープで適当にペタペタやっただけだが)。証拠は揃っている」




「お前、執念深さがガチの刑事デカなんだよな……」


翼が引いているのを感じつつも、蓮の胸の奥には、ドス黒く、そして切ない炎が燃え盛っていた。




彼がこれほどまでに「いじめ」という行為に対して過剰に、そして好戦的に反応するのには、明確な理由があった。








第2章:失われた初恋と、大いなる決意






蓮がここまで頑なになった理由。それは、一ヶ月前にこの学校から去っていった、一人の少女の存在にある。




彼女の名前は、白雪しらゆき 紬つむぎ。


名前の通り、透き通るような白い肌と、おとなしいけれど芯のある瞳を持った女の子だった。クラスの隅でいつも静かに本を読んでいる彼女に、蓮は一目惚れをしていた。




しかし、その静けさが、クラスの主犯格である不良グループ「赤木一派」の目を引いてしまった。




最初は軽いからかいだった。それが、教科書を隠す、机に落書きをする、といった陰湿な嫌がらせへとエスカレートしていった。




当時、蓮は何もできなかった。


話しかける勇気もなく、ただ遠くから彼女が傷ついていく姿を見て、胸を痛めるだけの意気地なしだった。




そしてある日、紬は限界を迎え、精神的なストレスから体調を崩し、そのまま遠くの街へと転校してしまった。


彼女がいなくなった日、蓮は激しい自己嫌悪に陥った。




(俺は何をしていたんだ? 法律の知識だの、論理的思考だの、口先だけは達者な癖に、本当に助けたい女の子一人守れなかったじゃないか!)


その夜、彼は部屋で一人、枕を涙で濡らしながら誓ったのだ。




二度と、あんな悲劇を目の前で見過ごさない。


いじめを行う全ての悪党どもを、この手で、徹底的に、コミカルにかつ冷酷に、駆逐してやる。


そうして結成されたのが、メンバーわずか二名(蓮と、巻き込まれた翼)の秘密組織。




――**『いじめバスターズ』**である。




「……というわけだ、翼」


蓮は夕日に向かって拳を突き上げた。




「おまえらみたいないじめっこ見てたら反吐が出るんだよ! あいつらは他人の尊厳を泥靴で踏みにじる、社会の害虫だ! 私は、あいつらを絶対に許さない!」


「お、おう……熱いセリフだけど、ポーズがちょっと昭和の熱血アニメっぽいぞ、蓮」


翼が苦笑する。




「うるさい! 形から入るのが大事なんだ! 私はこうやって、いじめバスターしてたら……また、どこかで、転校したあの子に会えるような気がするんだ」


蓮は急にトーンを落とし、窓の外の遠い空を見つめた。瞳には、夕日の光に混じって、一抹の哀愁が漂っている。




(紬さん……今、どこで何をしてるんだろう。元気に笑えているのかな。もし、どこかで君がまたいじめに怯えているなら、私は世界の果てまでだって駆けつけるのに……)




そんな蓮のピュア(を通り越して若干めんどくさい)乙女心を見つめていた翼は、盛大なため息をついた。




「はいはい、また紬ちゃんのあの子か。そんなに好きならさ、転校する前に、電話番号かスマホのアドレス(連絡先)でも聞いたら良かったのに」




「ぶふっっ!!!」


蓮は激しくむせた。顔が瞬時にゆでダコのように真っ赤になる。




「そ、そ、そこまで、気が回らなかったんだよ!」


「回らなかったんじゃなくて、チキンだから聞けなかったんだろ?」




「違う! 私はあの時、彼女のパーソナルスペースを尊重し、紳士的なディスタンスを保っていただけだ! いきなり連絡先を聞くなんて、**『ストーカー規制法』**の精神に反する恐れがある!」


「いや、普通の高校生はそんな法律気にしながら恋しないから」




翼の的確なツッコミに、蓮はぐうの音も出なかった。


そう、彼は頭が良すぎて、かつ恋愛に関してはウルトラ童貞だったため、連絡先を聞くという基本中の基本のミッションを完全に忘れていた(というか、怖くてできなかった)のである。




「とにかく!」蓮は強引に話を戻した。「私の戦闘モードは切り替わった。今回の画鋲事件の犯人は、十中八九、赤木たちだ。あいつらに、いじめバスターズの鉄槌を下す!」








第3章:宣戦布告と、破壊のパレード






翌日の昼休み。


蓮の予想通り、赤木一派の嫌がらせはさらに過激さを増していた。




蓮がトイレから戻ってくると、彼の机の上が大変なことになっていた。


お気に入りのアニメキャラの特製筆箱が、ハサミでバラバラに切り刻まれ、中身のシャーペンや消しゴムが、まるでゴミのように床に散乱していたのである。


教室内が、静まり返る。




クラスメイトたちは「また赤木たちがやったんだ」「陣内、かわいそうに……」とヒソヒソ声を漏らすが、誰も赤木に立ち向かおうとはしない。




当の赤木(ガタイが良く、金髪混じりの不良)は、教室の後ろで仲間たちとヘラヘラ笑いながら、蓮のリアクションを値踏みするように見ていた。




(ふん、どうだ陣内。泣き顔を晒すか? それとも怒り狂って殴りかかってくるか? どっちにしろ、先生にチクったら、放課後もっと酷い目に合わせてやるからな……)


赤木の歪んだ笑みが、そう物語っていた。




しかし、蓮の精神はすでに一般の高校生のそれとは一線を画していた。


彼は、バラバラになった筆箱の前に立つと、静かにメガネを押し上げ、まるでお宝を発見した考古学者のような目でそれを見つめた。




そして、ポケットから愛用のボイスレコーダー(いじめ対策用に常に携帯している)を取り出し、カチリと録音ボタンを押した。




「……記録。202X年5月某日、午後12時35分。被害総額、筆箱約1500円、シャーペン計3本約900円。合計2400円相当」


蓮の声が、妙に通る声で教室に響き渡る。


「本件行為は、単なる悪ふざけの域を著しく逸脱しており、**刑法第261条『器物損壊罪』が成立する。なお、本件は教室という公の場において、複数人の面前で行われた見せしめ的行為であり、被害者の精神的苦痛は甚大。民法第709条に基づく『不法行為による損害賠償請求』**の対象となり、慰謝料として少なくとも金十万円の請求が妥当と判断される」




「……は?」


赤木の笑みが凍りついた。まわりの不良仲間たちも「おい、あいつ何言ってたんだ?」と顔を見合わせる。




蓮はさらに、床に落ちていた、インクをわざとぶちまけられたノートを拾い上げた。




「続きまして、授業用ノートの汚損。これにより、直近二ヶ月分の講義内容という『無形の財産』が損失した。これは学業の妨害であり、広義の意味での**『業務妨害罪(刑法第233条・234条)』**の法理を応用し、民事上の逸失利益として追及可能。また、これら一連の行為を主導した主犯、および制止せずに同調した共犯者一同に対し――」


蓮は、バッと振り返り、赤木の目をまっすぐに見据えた。




その目は、いじめに怯える被害者のそれではなく、完全に「獲物を追い詰めたハンター」の目だった。




「おまえらみたいないじめっこ見てたら反吐が出るんだよ! 法律を舐めるな! 私はお前たちを、徹底的に法的手続きのレールに乗せてやる!」




「て、てめえ……! ぶっ殺すぞ!」


赤木が顔を真っ赤にして立ち上がり、蓮の胸ぐらを掴んだ。




大柄な赤木に胸ぐらを掴まれ、蓮の体は簡単に浮き上がった。クラス中に緊張が走る。




しかし、蓮のニヤリとした笑みは崩れない。


「ホウ……。『脅迫罪(刑法第222条)』、命に対する危害の告知。2年以下の懲役又は30万円以下の罰金。さらに、今現在、私の身体を拘束し、暴行を加えている。これは**『暴行罪(刑法第208条)』**、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金、又は拘留若しくは科料。おめでとう、赤木くん。罪状のバーゲンセールだ。役満ヤクマンと言ってもいい」




「この、理屈コネコネ野郎がぁぁぁ!」


赤木が拳を振り上げた、その瞬間。




「そこまでだ、赤木!」


教室のドアが勢いよく開き、担任の熱血教師(ただし、事なかれ主義)が飛び込んできた。




……というのは嘘で、ドアの陰から翼が「先生ー! 赤木が陣内を殴ろうとしてまーす!」と、これ以上ない大声で叫んでいた。




「チッ、おい、ズラかるぞ!」


赤木は蓮を突き飛ばすと、バツが悪そうに仲間を連れて教室から出て行った。


床に尻餅をついた蓮に、翼が駆け寄る。




「おい、蓮、大丈夫か? お前、煽りスキルのレベル高すぎだろ。本当に殴られたらどうすんだよ」


「フッ……計画通りさ」


蓮はズボンについた砂を払いながら、不敵に笑った。


「あいつが手を出した瞬間、こちらの『正当防衛』の要件が満たされる可能性が生じる。それに、クラス全員が目撃者だ。これで外堀は埋まった」




「お前、本当に強いのか弱いのか分からん男だな……」


翼は呆れ果てていたが、蓮の目にある「本気」を見て、少しだけ背筋が伸びるのを感じていた。








第4章:いじめバスターズの逆襲






その日の放課後。


赤木たちは、昼間の屈辱を晴らすため、蓮を学校の裏手にある古びた倉庫裏に呼び出した。




正確には、蓮の下駄箱に「放課後、裏倉庫に来い。来なかったらどうなるか分かってるな」という、典型的な**『強要罪(刑法第223条)』**に該当する手紙が入っていたため、蓮がホイホイと(翼を連れて)やってきたのだ。




倉庫裏には、赤木と、その腰巾着の二人(青木と緑川)が待ち構えていた。彼らの手には、なぜか学校の清掃用具入れから持ってきた、プラスチック製の頑丈なデッキブラシが握られている。




「おいおい、本当に来やがったな、陣内。昼間はよくも恥をかかせてくれたじゃねえか」


赤木がデッキブラシを地面にガンガンと打ち付ける。


「赤木くん。そのデッキブラシは学校の備品だ。それを本来の用途以外で使用し、万が一破損させた場合、『器物損壊罪』および学校に対する『横領罪(刑法第252条)』、あるいは**『窃盗罪(刑法第235条)』**が適用される可能性があるが、覚悟の上かね?」


蓮は相変わらずの調子で、一歩も引かない。




「うるせえ! そんな法律、俺たちの拳の前には関係ねえんだよ! お前のようなナード(ガリ勉)は、ここでボコボコにして、二度と生意気な口が叩けないようにしてやる!」


赤木の合図で、腰巾着の青木がデッキブラシを振りかざして突進してきた。




「蓮、危ない!」翼が叫ぶ。


しかし、蓮は動かない。不敵な笑みを浮かべたまま、懐からスマートフォンを取り出し、画面を赤木たちに向けた。




「動くな! これを見ろ!」


画面に映し出されていたのは、どこかのライブ配信サイトの画面だった。


そこには、現在の彼らの様子がリアルタイムで映し出されており、画面の端には「同視視聴者数:1500人」という数字と、超高速で流れるコメントが映っていた。




『うわ、ガチのいじめ現場じゃん』


『この金髪の奴、〇〇高校の赤木じゃね?』


『デッキブラシで殴るとか犯罪だろ、通報した』


『警察へGO!』




「な、なんだこれは……!?」赤木がピタリと足を止める。




「フッ、私の特技は法律だけではない。ネットリテラシーと動画配信のノウハウも少々嗜んでいてね」


蓮は勝ち誇ったように言った。




「このスマートフォンは、現在、地域密着型のSNSおよび大手配信プラットフォームに『限定公開(ただし拡散歓迎)』で生配信されている。さらに、位置情報も共有済みだ。お前たちが私に一太刀でも浴びせた瞬間、その映像は証拠能力を持つ動画として全世界に保存され、同時に110番通報が自動で行われるシステムを(翼に)組んでもらった!」




「な、にいぃぃ!?」


赤木たちの顔から、サーッと血の気が引いていく。


いじめっ子という生き物は、世界の中心で自分が王様であるかのように振る舞うが、その実、世間からの「白い目」や「社会的制裁」には極端に弱い。自分たちの悪行が、今この瞬間にも何千人もの人間に見られ、特定されようとしている事実に、恐怖でガタガタと震え出した。




「さらに付け加えるなら」蓮は一歩、また一歩と赤木たちに近づく。


「お前たちがこれまで、白雪 紬さんに行ってきた数々の嫌がらせ。それらについても、私は克明に日記とボイスレコーダー、そして目撃者の証言(※主に翼と、クラスの良心的な数名)を集めてある。これらをまとめて少年鑑別所……いや、お前らはもう16歳だからな。普通に刑事罰の対象、あるいは家庭裁判所への送致だ。人生の早い段階で、前科(あるいは前歴)という消えないタトゥーを背負う覚悟はできているか?」


「ひ、ひえっ……」


腰巾着の緑川が、恐怖のあまりデッキブラシを落とした。




赤木は、目の前の「法律の化け物」と化した蓮を見て、完全に戦意を喪失した。


殴れば自分が破滅する。逃げても、すでに証拠は握られている。




「わ、分かった……悪かったよ! 陣内! 俺が悪かった! だからその配信を止めてくれ! 頼む!」


赤木はついに、地面に膝をつき、プライドをかなぐり捨てて頭を下げた。




蓮はその姿を冷たい目で見下ろした。


(……今更、謝るのか。遅いんだよ。君たちが白雪さんに頭を下げさせる機会は、もう永遠に失われたんだ)




胸の奥が、チクリと痛んだ。


赤木たちを論破し、屈服させたところで、転校してしまった紬が戻ってくるわけではない。この勝利は、どこか虚しい。




しかし、蓮はボイスレコーダーをポケットに仕舞い、配信(実際は翼が裏でサクラのコメントを高速で流していただけの、ただの『配信風の録画画面』だったのだが)を停止した。




「条件がある」蓮は冷酷に言い放った。「今後、この学校において、いかなる生徒に対しても、嫌がらせ、からかい、孤立をさせる行為を一切禁止する。もし、少しでも不穏な動きがあれば、今回保留にした『リーガル・ジャスティス(法的正裁)』を即座に執行する。いいな?」




「わ、分かった! 約束する!」


赤木たちは、蜘蛛の子を散らすように、一目散に逃げ去っていった。








第5章:夕暮れのバスターズと、一筋の光






「ふう……大勝利、だな」


翼がへなへなと地面に座り込んだ。




「それにしても、あの『偽配信画面』の作戦、よく思いついたな。俺、コメントをリアルタイムでタイピングするの手が攣るかと思ったぞ」




「ああ、お前のタイピング速度には感謝している、翼。あれがなければ、赤木のハッタリを見破られていたかもしれない」


蓮はメガネを外し、シャツの裾で拭きながら、小さく息を吐いた。




学校の裏手には、いつの間にか綺麗な夕焼けが広がっていた。


オレンジ色の光が、二人の影を長く地面に伸ばしている。




「これで、クラスからいじめはなくなるよ、きっと」


翼が空を見上げながら言った。「お前がやったことは、ちょっと変だし、法律オタクの暴走だったけど……間違いなく、誰かを救ったんだよ。あの赤木たちが、あんなにビビるなんてさ」


「……だといいがね」




蓮は再びメガネをかけ、遠くの空を見つめた。


心のどこかで、いつも探している面影があった。




いじめを撲滅するために結成した『いじめバスターズ』。その活動の根底にあるのは、正義感だけではない。もっと個人的で、女々しくて、切ない願いだった。




「こうやって、いじめバスターしてたらさ……また、どこかで、転校したあの子に会えるような気がするんだ」


蓮は、ぽつりと呟いた。




「はいはい、またそれか」


翼は立ち上がり、蓮の肩をパシッと叩いた。




「だから言ったろ? そんなに好きなら、転校する前に連絡先を聞いておけば、今頃普通にLINEとかで『今日いじめっ子ボコしたわー』って報告できたのに」




「だ、だから! 何度も言うように、当時の私は彼女のプライバシーを侵害しないように――」


「はいはい、ストーカー規制法ね。もう聞き飽きたよ」


翼は笑いながら、校門に向かって歩き出した。




「ほら、帰るぞ。今日はマック奢れよな。俺のタイピング技術料だ」


「分かった、分かった。ポテトのLサイズまでなら認める」




蓮は翼の後を追いかけながら、もう一度だけ、夕日に向かって歩き出した。




(白雪さん。僕は今日、少しだけ強くなれたよ。君を守れなかったあの日の私とは、もう違う。もし、世界のどこかで君がまた困っているなら……その時は、六法全書を片手に、絶対に助けに行くからね)




彼のポッケの中の運動靴(画鋲の穴だらけ)は、ほんの少しだけ痛んだけど、彼の足取りは、今までになく軽やかだった。






いじめバスターズの戦いは、まだ始まったばかりである。






 






         

以前、短編で載せたものを新たに連載にしました。


アイデアを出し、すべてAIが書きました。

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