第十八章 またいつも通りの日々に
本当は私が目覚めるまで待っていたかったらしいけど、早急に王都へ報告しないと、王都で心配している仲間達を、これ以上不安の中で待たせるわけにはいかなかったんだとか。
その心遣いは、まさに兵士『長(人の上に立つ存在)』の思想だなぁ。
でも、そんな事情がある中で、私一人の目覚めをこの家でずっと待っているのも、多分苦行だろう。彼の選択は、正解だったのだ。
それが分かった私は、ようやく安心する事ができた。中盤、ちょっとヒヤヒヤしてしまったけど、どうにかこの一件は無事に幕を下ろしそうだ。
でも、私は自主的に山へ行く事を、数日間やめる事にした。これくらいしなと、ちょっと・・・申し訳ないというか・・・
まぁ、里にいても暇なわけではない。色々とやらなくちゃいけない事はいっぱいある。今はそれに集中しながら、山への接し方を改める。
・・・それにしても、里の近くでモンスターが屯していたなんて、全然知らなかった。
私が学校で大人しく授業を受けている間、中庭ではヤンキーが先生達とバチボコにぶつかり合ってた・・・みたいな感覚。
知らなかった方が良かったのかもしれないけど、いざそれを事後に知ると、ますますゾッとする。
でも、里に何の知らせもなかったのは、ただ単に里の住民を不安にさせない為・・・というのもあるかもしれないけど、多分里の存在自体を把握していなかったから・・・だと思う。
此処は山々に囲まれた里、分からなくても仕方ない。そう考えると、あの兵士長さんが死を覚悟したのにも納得できる。
人なんて滅多に通りかからない山の中、身動きも取れない状況で激痛に苛まれていたら、発狂しても不思議ではない。
山に慣れていない人なら尚更、自然の恐怖や脅威で、すぐに精神がボロボロになりそう。まぁ、私ならこの山の中で何晩も野宿できるんだけどね。
父から聞いた話によると、山はモンスターだけではなく、『やましい行為』を行った人間が隠れる場所として、うってつけの場所なんだとか。
そう思うと、私が助けに行ったのが善良な人で助かった。
もし悪意のある人間に手を出されていたら、せっかくの平穏な人生がとんでもない形で幕を下ろしてしまう。
前世の世界でも、今の世界でも、『恐ろしい人間』は必ずいる。
『良い人間』もいれば、『悪い人間』もいる。
その常識がすっかり頭から抜けていた。これがいわゆる・・・平和ボケ??




