2.終わり無き闘い
奴らとの戦闘はとどまる事を知りません
「…………」
「…………」
息を潜め、精神を研ぎ澄ます。敵はすぐ近く。気付かれれば一環の終わりだ。
しかしまだこちらは気付かれていない。つまりそれは、こちらが先手を取るチャンス。失敗は許されない。これまでの苦労が水の泡になる。
隣の槙とフィーリングを合わせる。僕と槙の仲ならそれも容易、かなりの精度で意志疎通ができる。
槙と息を合わせて相手を叩き潰す。それが今、目指すべき事。
「「――――!!」」
今だ!一気に畳み掛ける!!
「せやっ!!」
「破ッ!!」
完璧に同時に、敵に攻撃する。
パァン!!と良い音がして、文字通り相手は『潰れ』た。
「「ふぃ〜……」」
仕留めた。
緊張の糸が切れて、どっと疲れが押し寄せてくる。
「いや〜、逃げられる前に殺れて良かったな」
「そうだね……逃げられてたら被害も拡大してただろうし」
「これ以上被害が広がるとなると……」
「想像したくないね……」
奴が好き放題暴れ回る……その被害は尋常ではない。
「で、こいつどうするよ」
「ティッシュで包んで捨てよう」
「そうだな」
槙がティッシュを持ち、奴の亡骸をつまむ。丁寧に包んでゴミ箱へ放り込んだ。
「散々飛び回りやがって」
「被害を弁償して貰いたいよ」
「つかまだ生きてる奴いたんだな」
「時期的にもういなくなったと思ってたのに」
「「ハエめ……」」
ハエは家の中に来なくて良いよ。一々食べ物に張り付かないで欲しい。腐肉の処理っていう役目を負ってるなら、素直にそちらの職務を全うしてくれれば良いのに。
「なんで食べ物にくっつくかなぁ……」
「いつも腐肉ばっかで飽きてきたんじゃね」
「あぁ、たまには新鮮なもの食べたいと」
「そんな感じなのかもなー」
なるほどね。でも許さない。だって食べられなくなった野菜炒めがここにあるもの。せっかく作ったのに……。
……まぁ良いや。次が来る可能性も無くは無いから、今無事な食べ物だけでも早く食べよう。
強大な敵かと思いましたか?
残念!ただの虫でしたっ!