3.彼らは今日も歩き出す
……『あちらの世界』と同じく、タイトルには特に意味がない場合が多いです
「わぁ霧すごいねぇ」
「そうだなー」
なんだか霧が濃い朝。……いや、朝以外で霧見た事ないけど。玄関の前でこんな会話をしつつ、今日も授業を受けるために嫌々ながら学校へ向かう。
「これだけ霧濃いと調子良いなー」
「あはは、だろうね」
「調子良いからって何かある訳でもないけどな。おーい柚早くしろー」
『ちょ、ちょっと待って……ていうかヘアピン知らなーい?』
「はぁ?ヘアピン?どのヘアピンだよー」
『槙に貰ったやつー』
「えぇー?洗面所で見たけども……今行くわー」
槙がヘアピンを探しに行った。甲斐甲斐しいね。
槙と柚が来るまでに少しだけ説明しておこうかな。……なんでかって?なんとなく、そうした方が良い気がしたから。
紫檀学園。このあたりで最も大きな学園で、色々と設備も整っている。ここはその設備の一つ、寮。学園中央校舎までおよそ1.5kmという微妙な距離で、全校生徒の約半分がここを利用している。食事は自炊or食堂で、各部屋にトイレ・お風呂完備(ただしあまり広くはない)、学園入り口までそこそこ近いという施設。
ちなみに学園の外に出ると、すぐ近くに商店街。少し進路を変えれば駅も近い。日用品の買い物などはしやすいのでその辺は便利。
そしてご存知、僕達こと幼馴染み三人衆は――え?そんな呼び名知らない?まぁ知らないだろうね。今僕が考えたんだもの。
僕は大鷺 樂。紫檀学園に通っている、ごく普通だと思っている十五歳だ。低めの身長と容姿のせいで可愛いと言われるけど、わりと気にしてる。
さっき部屋に戻っていった男子は僕の幼馴染みの神和 槙。平均ちょい上の身長と痩身、ぴんぴん跳ねた癖毛と目付きの悪さが特徴だ。目付きは悪いけど面倒見はよく、横よりも縦の付き合いの方が広いような男だ。
部屋の中で槙を呼んだのは、これまた僕の幼馴染みの天城 柚香。長い髪、整った顔立ちで独特の性格をした女の子だ。僕達は小さい頃からの付き合いで、もはや幼馴染みというよりは兄弟みたいな感覚だ。
僕達三人は、この寮の一画、隅っこの方の一部屋を借りて住んでいます。最初は『柚だけ別の部屋になるかも』とか思ってたけど普通に同じ部屋。この学園の管理、なんだか不安だ。
「やれやれ……」
「ごめんね、なんか手伝わせて」
「外した後にそのままほっとくなよ……」
あ、二人とも出てきた。なんか丁度良いタイミングだな。狙ったのかな?
「今……八時過ぎか。余裕で間に合うな」
「普通に歩いても八時半には着くね」
「にしても霧すごいね。槙、どうにかできない?」
「できん」
「即答だね」
「どっちかって言や樂の方が向いてるんじゃね」
「それもそうか」
なんか僕に矛先が向いたよ? できないよ。
「やだよ。めんどくさいもん」
「言うと思った」
「思ったならやめてよ……ていうか、霧なんて放置しても問題ないでしょ?」
「チャリのサドルは濡れるぞ」
「そこピンポイントなの!?ていうかチャリ使わないよね!」
そんな話をしながら歩き出す。今日は風が少し冷たい。手袋持ってくれば良かったよ。
ファンタジーな世界観で、暇人たちがやりたい放題します




