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地味な読書少女と、世界を綴る本 ~静かに始まる小さな奇跡:更新休止中  作者: 秋月心文


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21/21

ペンギンに触りたいだけなのに

「水族館に行きましょう」

「ペンギンに触れるらしいの」

「へぇ、あんなのが好きなんだ」

 晶は知らなかった。

 この決断が致命的に問題だったことを。

 生き物は人間よりも強者に敏感だということを……。


「置いて行ってご機嫌斜めになってはいけないから、

 祐子ちゃんも一緒でお願いしたいんだけど……」

「そのイベントの期間は?」

「えっと、期間は……」

「あぁ、わかった」


 それから数日、グリモアは私にペンギンの肌触りを伝えてくれる。

 期待してたようなふわふわ・もふもふではなかった。

 毛並みに沿ってなでると硬くてサラサラと滑らか。

 水面を滑るように移動するのも納得だ。

 逆方向に撫でると引っかかりがありかなり硬くゴワゴワしてる。


 触ってみたかったから、うれしいのは、うれしいんだけど。

 でも、本物触る予定なんだから、先に教えなくても良くない?

 どうしてネタバレしちゃうのかなぁ。

 もしかして、ヤキモチ妬いてる?


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 水族館に行く日がやってきた。

 圭祐が、祐子ちゃんを連れて、例のオープンカーでやってきた。

 来るときは、祐子ちゃんが助手席だったけど、

 私の家からは、祐子ちゃんがリアシートにまわった。


 そして、水瀬管理官の車も追走してくる。


 水族館に入った途端、急にシーンと静まりかえるような感覚を受けた。なんだろう?

 水槽を見ると、魚が少ない。どうしちゃったんだろう。

「水槽、お魚いっぱいだったねぇ~」

 と親子連れが帰っていく。

 あれ? 私の気のせい?


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 お楽しみのペンギンふれあいタイムがやってきた。

 ペンギンは私を見た途端

 「ギャーギャー」と少しハスキーな低めの声で叫びながら、

 全力で逃げだしていった。


 とはいえ、大人の人間の徒歩と同程度だ。

 飼育員さんも慌てて追いかけるが、暴れてなかなか捕まらない。

 水瀬管理官にボソリと言われる。

「晶様、殺気出し過ぎです」

「え? そんなの出してないけど」

「もしかして、お前が殺気出してる?」


 私はグリモアに話しかける。

「今すぐ、殺気止めなさい。それどことか大好きオーラ出しなさい」

 すると、なんだか、空気が変わった。


 水槽に魚が戻ってきた。

 というか、全ての魚がこちらをガン見している。

 回遊魚の動きとめたら死んじゃわない?

 ちょっと怖いよ。やりすぎだ。

 さっきのペンギンたちが戻ってきた。


 首を長く伸ばして上を向き、翼をパタパタさせながら、

 「ボー!ボー!」と大声で鳴きながらやってくる。

 完全にペンギンに囲まれてしまった。

 えぇぇ……。これ、どうしたらいいの?


 撫でることはできたけど、

 私が撫でると、そのコが、他のコにめっちゃ攻撃されてる。

 かわいそうすぎて、さわれないんだけど。


 何なのこれ?

 もしかして求愛行動?

 私を取り合ってるの?


「もうっ。お願いだから、ふつうにして!」

 すると、また、空気が変わった。

 というか、私の存在を魚やペンギンたちに

 知覚できないようにしたようね。


 水槽に指をかざしても、魚に

 ガン無視されるのはちょっと堪えるな。


 「世界の全て」なのに、この程度とは……

 それとも、あえてやってる?


 うん、たぶん、あえてだろうな。

 「ボクを見て、見て」

 そう言いたいんだろうな。

 寂しがり屋の「世界の全て」とは……。

 まぁ、いいけどね。今日くらいは楽しませて欲しかったなぁ。


 イルカショーも行ったんだけど、イルカが委縮したままで、何もしてくれなかった。

 魚と違って、あいつらヤバいヤツと学習しちゃったみたいで……。


 結局、物品コーナーだけだよ。

 落ち着けたのは……。


 こんな感じで、水族館を終えた。

 ……ちなみにグリモアは、帰りの車の中でも妙にご機嫌だった。

 もしかして、今日の水族館。

 最初から全部、こいつの仕業だったんじゃない?


 よし、わかった。

「次はキャンプに行こう」

「え? マジで?」

 圭祐はビミョウな反応を示したけど、今度は大丈夫だろう。

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