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地味な読書少女と、世界を綴る本 ~静かに始まる小さな奇跡  作者: 秋月心文


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自由研究大作戦

「何を悩んでるんだ」

「高校なのに自由研究をしないといけないんだけど……」

 うちの高校は珍しく、夏休みに自由研究の課題がある。


「グリモアがとんでもないものばかり見せて来るから、

 感覚がバグっちゃって」

「グリモアは、どういうのを見せて来たんだい?」


「恐竜絶滅の真実とか」

「女子高生レベルじゃないな」

 たぶん、否定されるし。


「5分でできる奇跡の起こし方とか」

「それは人のレベル超えてるな。奇跡の安売りはやめて」

 まぁ、そうよね。


「30分で10歳若返りできる方法とか」

「高校が突然幼稚園になりそうだな」

 そうなったら、ちょっと笑う。


「1時間で魔法使いになれる方法とか」

「それは、俺も知りたいかも」

 でも、ふつうじゃないよね。


「最古の王様はじゃんけんで決めたとか」

「それ絶対反論で炎上するやつ」

 現在の王権否定してるみたいなものだしね。


「100年後に大きな隕石が落ちて来るとか」

「規模が大きすぎるな。たぶん、誰も信じないぞ」

 まぁ、そうよね。


「タコ糸1本で聖剣を釣り上げる方法とか」

「聖剣? 生きてるの? 釣りでGETできるの?」

 圭祐のツッコミが激しい。


「なんか、どれもやばそうなのばかりじゃないか」

「でしょ。こんなの見せつけられると、感覚がマヒしちゃって」

「なるほど」

「だから……圭祐が考えて!」

 私より、マシな考えを出してくれるだろう。


「え? えぇ~っと この辺だったら……」

「うん」

「隣の町にある『アーティファクト』でも回収してみる?」

「それ、女子高生がふつうやらないと思う」

「だよなぁ」

 圭祐も私同様に、感覚がズレていた。


「私がお手伝いしましょうか?」

「うわぁ」

 どこに隠れていた? 水瀬管理官。

 ってゆうか、いいのか国家権力が、

 女子高生の夏休みの宿題に参加しても?


「いや、それは、ちょっと……」

「私では、ダメですか?」

「いや、個人的にダメという話ではなく……」

 国家権力使いそうで怖い。


「じゃあ、個人でお手伝いしますよ。仕事抜きで」

「晶様なら、読書感想文とかで良いのでは?」

「いや、それはダメだろう」

 たぶん、それは自由研究じゃない。


「本に出てくる疑問を実際に調べてまとめるとか。

 もちろん「グリモア」は使わずに……」


「物語に出て来る料理を再現してみるとか」

「いや、それはたぶん無理そう」

「レシピと調理済みの料理の写真でいいと思いますよ」

 私、料理が壊滅的にダメみたいなんだけど。


「歴史小説を読み、

 舞台となった場所や時代背景について調べるとか」

「グリモアで先に知ってる知識が邪魔しそう」

 先入観が……


「昔の発明品を再現してみるとか? 蓄音機とか」

「それカンタンに作れるものなの?」

「必要な材料は用意しますよ」

 国家権力で?

「いや、それはちょっと……」


「そうだ、俺の妹を頼ってみるのはどうだ?」

 水瀬管理官は不満そうだったが、

 圭祐の提案に乗っかってみることにした。

「それ、いってみましょう」


……ということで、圭祐の妹の祐子ちゃんのところにやってきた。

「なるほど。2人とも、常識がなくなっちゃったのね」

「面目ない」

「いいよ。考えてみる」

「ありがとう」


「え~と……」

 祐子ちゃんは思案をめぐらせる。


「氷の溶け方を実験するのはどう?」

「何をどうするの?」


「最初に同じ大きさの氷をたくさん作って……」

 祐子ちゃんは、実験方法を紙にさらさらと書いていく。

・同じ大きさの氷。

・違う素材の上に置く。

・溶けるまでの時間を測る。

・写真も撮る。


「「おぉ~!!」」

「すごいな、お前」

「お兄ちゃんの妹だからね」


「他も考えてみようか」

「うん、お願い」

「水性ペンの色分解というのはどう?」

「何それ?」


 祐子ちゃんは、さっき同様に紙にさらさらと書いていく。

・黒い水性ペンでコーヒーフィルターに印をつける。

・フィルターを水に浸すと、インクが色ごとに分かれていく。

・その様子を観察し、写真に撮ってまとめる。

・ペンのメーカーによる違いも比べると、おもしろい。


「「すっご……」」


「圭祐。祐子ちゃん、すごすぎない?」

「ま、まぁ、俺の妹だからな」

「へへっ、お兄ちゃんの妹だからね」

 どうしても、そこを強調したいらしい。

 それだけ、お兄ちゃんが好きなんだろう。


 圭祐は立ち上がり、出かける支度をした。

「早速やってみよう!」

「えっ? ここで?」

「必要なもの買って来るよ」

 圭祐は買い出しに行ってしまった。


 私と祐子ちゃんは、お互いに顔を見合わせた。

「ぷっ……」

 祐子ちゃんが笑い出す。

「ふふっ……」

 私もこらえきれず笑ってしまう。

 私は圭祐らしいと思ったが、

 祐子ちゃんもお兄ちゃんらしいと思ったようだ。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 こうして、圭祐が用意してきたものは、

 同じ大きさにカットされた氷(袋入り)

 いろんな素材の皿や、板。

 たくさんの水性の黒色ぺん。

 キッチンペーパー


 いっぱい買ってみたのね。


「なるほど、全部やってみろと……」

「あぁ、それに……」

「それに?」

「せっかくだから、祐子の自由研究も終わらせちゃおう」

「おぉ、いいね。さすがお兄ちゃん」

 祐子ちゃんが身を乗り出す。


 こうして、自由研究の実験を終えた。

 やってみると、案外、おもしろかった。


 水性ペンの色分解は順調に進み、

 黒いインクがいくつもの色に分かれていく様子は、

 思っていた以上にきれいだった。


 カットされた氷は、

 予想に反して意外と大きさが揃ってなかったので、

 祐子ちゃんの家の冷蔵庫の製氷皿を使うことにした。


 写真は、私のスマホで撮影した。

 タイマーは、圭祐のスマホで。


 祐子ちゃんは、氷の自由研究を、

 私はペンの色分解のネタを使うことにした。


 それにしても……

「祐子ちゃんって小学生じゃなかった?」

「あぁ、高学年だけどな」


 小学生に高校の夏休みの宿題を、

 手伝ってもらうってどうなの?と感じながらも、

 国家権力で宿題しなかっただけいいか……と思うことにした。

 お読みいただき、ありがとうございます!


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