表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

第9話

更新が遅くなり申し訳ございません。不定期更新でお願いします。

第9話



後宮にある一室。部屋の中は薄いピンクと白で統一されて可愛らしい部屋に仕上がっている。

天蓋付きのベットにはハニーブロンドの髪をした幼い少女がすやすやと気持ちよさそうに眠っていた。

朝の支度のためにサリーが部屋のカーテンを次々と開けていくと窓からの日差しがベットにまで届き、日の光を感じたのか少女が瞼を震わせてうっすらと目を開けた。


「う、う~ん。」


もう朝ですか。日の光で起きるのは気持ちがいいですねえ。今日も平和に過ごせるといいですが。


「起きられましたか?姫様。」


「おはようございます。サリー。」


「おはようございます。今日もいい天気ですよ。さあ、お着替えしましょうね。今日は陛下とメリアナ様が御一緒に朝食を召し上がるそうですわ。」


おや。ひさしぶりですね。何かあったのでしょうか。いつも2人で過ごしているのに呼んで下さるとは。珍しい。楽しみですねぇ。シルディアナはベットから飛び降りた。その様子を少し眉をひそめ洗面の用意をしながらサリーが見ている。小言を言われそうですね。話を逸らしますか。


「お父様とお母様がですか!大変です!早く着替えなくてわ。」


「そんなに慌てずとも大丈夫ですよ。ですが久しぶりにご一緒できてよかったですね。今日のドレスは陛下がお気に召していた薄紫のドレスをご用意いたしましたよ。これをお召しになったシルディアナ様は妖精のようですからね。陛下からも御褒めいただけますわ。」


サリーは小言を忘れたように微笑んで言った。あの服ですか。確かにかわいいですね。可愛い娘を印象付けないといけませんからね。


「そうですね。久しぶりにお会いするんですから可愛くしないと。髪に結ぶリボンも合わせてくださいね。お母様にも褒めて頂かないと。」


手際良く洗面を済ませて、ドレスを着る。このドレス1着で平民が一家族1年暮らせるだけのお金が掛けられている。この様なドレスをシルディアナは何着も持っている。リボンには手の込んだレースに宝石が編みこまれている。まったく贅沢ですね。金銭感覚がおかしくなりますよ。これが普段着なんだから。成長期でどうせすぐに着れなくなるのに。平民は重税で苦しんでいるようですし。この国、本当に危ないようですね。


「はい。準備できましたよ。とても可愛らしいですわ。」


さて、久しぶりの親子の対面行きますか。母君元気かな~



**********



部屋の中には2人の男女が寄り添うように席についている。この国の国王とその寵妃メリアナだ。テーブルには豪華な食事が並んでいる。朝食にしては無駄に豪華だ。部屋の中に可愛いらしい少女が入ってきた。少女は嬉しそうな笑みを浮かべている。


「おはようございます。お父様。お母様。」


「おはよう。シルディアナ。今日も可愛いな。」


「おはよう。シルディアナ。本当に可憐で妖精のようだわ。」


ふっふっふ。褒められましたね。そうでしょう、可愛いでしょう。自画自賛したいくらいですよ。まったく。いい遺伝子を頂きました母君。ちょっと痩せたように見えますね。メタボは相変わらずメタボですねぇ。朝から栄養過多の食事を取っているんだからしょうが無いのかな~。母君を見習って欲しいもんです。母君の女磨きはすごいですからね。


「ああ、本当にかわいいな。それに大きくなったな、もう6歳か。子供の成長は早いものだな。」


「ええ、本当に。」


「今日はシルディアナに報告が有るんだ。メリアナが懐妊した。だからしばらく安静にしなければならない。お前もメリアナが健やかに過ごせるように、手伝うんだぞ。」


2人で微笑みあって何を言うかと思えば、懐妊ですか。また周りが騒がしくなりますね。


「本当ですか?!おめでとうございますお母様。とても楽しみです。」


「ありがとうシルディアナ。今度こそ無事に生んで見せますわ。我が君。」


メリアナは国王に決意を秘めた目で見つめながら言った。シルディアナを産んだ後2回孕んだのだが、2回とも流産している。毒を盛られた所為と突き飛ばされ階段から落ちた所為だ。勿論、原因の犯人は処刑されている。王宮に敵は多いのだ。寵愛を求める側室たちや、後見人の宰相の政敵など。他にも数え上げれば切りが無いほどいる。


「ああ。これからの警備は、今まで以上に厳重になる。シルディアナ。お前にも専属の護衛がつくことになるからな。」


「護衛ですか?」


国王の話に、シルディアナが吃驚したように答えた。また面倒ですね。ずっと側に人がいるのは嫌なんですが。まあしょうがないか。


「メリアナが懐妊したことで、周りが五月蠅くなるからな。お前に何かあったらメリアナが悲しむから我慢してくれ。その代りに城内なら自由に行動を許そう。」


国王が心配そうにメリアナを見て言った。本当に溺愛しているようだ。メリアナは嬉しそうに微笑み返している。


「そうですか。わかりました。ありがとうございますお父様。」


なんだ。それならいいですよ。行動範囲が広まりますからね。やっぱり自分の目で見て回らないとね。楽しみだな~


「良かったわねシルディアナ。そうだわ、今日は具合がいいから後で散歩につきあって頂戴ね。」


「はいお母様。よろこんで。」


シルディアナはにっこり笑って答えた。



************

メリアナ妃に与えられた専用の庭。美しい花々で彩られた見事な庭の中ほどで、親子がお茶を楽しんでいる。周りには人払いがされているのか人影はない。しかし異変が起こればすぐに駆けつけれるように護衛が周りを囲んでいる。話の内容が聞き取れないように2人の周りには結界が張られていた。今朝懐妊の話をし、その詳しい話をするという事で誰も結界を張っている事には不審には思われなかった。この親子が話す時は宰相の監視が厳しくなるのだ。


「ねえ、シルディアナ。あなたも気が付いているのでしょう?」


日常話の続きのようにメリアナは話し始めた。


「何をですかお母様?」


「私の体の事よ。多分、この子が無事に生まれる事は無いわ。いままでの毒が体に溜まり過ぎているのよ。それにブライア妃のお子様がもうすぐ成人になられる、宰相も守って下さらないでしょう。もう私は用済みになるのよ。」


メリアナは穏やかな笑みを浮かべながら、大した事ない話のように言った。


「そんな事はありません。お父様が守って下さいます。」


シルディアナは悲しみを顔に浮かべないよう微笑んで答えた。会話は聞こえていないが表情は見られているのだ。喜ばしい話をしている時に悲しみの表情は不信感を与える。やっぱりそうですか。生命力が衰えて来ていましたからね。私には体の不調は治せますが、継続的な心労はどうしようも出来ませんからね。記憶の改ざんでもしたいんですがねぇ。そうとうなストレスの中で過ごされていますから。


「今の陛下は完全なお飾りよ。殿下が成人為されば我が君も用済み。廃されるでしょう。私はねシルディアナ。とても満足なの。」


「満足ですか?」


「ええ。無理やり戦を仕掛けられ連れてこられたけれど、復讐は果たしたもの。国王を籠絡し、悪妃と呼ばれるほど贅沢をしてこの国を弱体化させたわ。この国は戦を仕掛けられて滅ぶでしょう。うふふ。楽しみだわ。ムフリシア族の多くはもうこの国にいないし、この国は差別がひどいですからねぇ。この国を乗っ取ろうかとも思っていたのだけれど、我が君の権力が無いから滅ぼす事にしたの。」


「それがお母様の望みなんですね。滅ぼす事が。」


「あなたには苦労を掛けるわね。ごめんなさい。でも許せなかったのよ。この腐った国が!!・・・・はぁ。あとはあなたの事が心配なのです。実はね、あなたの父親は我が君では無いのよ。」


「・・・そうなのですか。まったく似ていないので余り驚きはありません。父親はどのような方ですか?」


なるほどねぇ~ やっと本心が聞けて嬉しいです。余り贅沢は好きそうでは無かったですからね。父親の事も気になりますよ。表面上2人はニコニコと笑いあいながら話している。このぐらいの芸当は王宮では必須なのだ。心情を読まれる様では直に獲物にされる。腹黒くなければ生き残れない。その腹黒さも気づかれてはいけないのだ。


「あなたはとても賢い子ねシルディアナ。我が君の・・いいえ、あの男の子供を産みたくなかったの。だから後宮に忍び込んできた方の誘惑に乗ったのよ。他国の身分ある方だと思うわ、お衣装が良いものだったし。王宮に滞在して居ると言っていたから。ガルスタと名乗られたけれど多分偽名でしょう。私も詳しくは聞かなかったしね。金髪に緑の目の素敵な方だったわ。あなたの髪色はあの方譲りね。」


懐かしむように、大事な思い出を語るようにメリアナは話した。後宮に忍び込むとは、なかなかやりますね。ガルスタ。偽名ですか。なるほど、滞在客の中にその名を持つ方が居なかったんですね。ひと時の恋ですか。いい思い出なんでしょうね。


「髪色が・・・。でも会うことはなさそうですね。先の事は分りませんが他国の方ですし。」


「そうね。子が生まれた事も知らないでしょうし。・・・クス。あの方はずいぶん私に惚れ込んで下さったのよ。国に連れ帰りたいって。まあ、ただの睦言でしょうけれど。クスクス・・・。ねぇシルディアナ。女は強くしたたかに生きるのよ。自分を守れるのは自分しか居ないのですから。私が居なくなった後も強く生きなさい。あなたは魔力があるのですから牙を研ぎ澄ませなさい。でも使い所を間違えないようにね。」


「はいお母様。でも・・・」


「なんですか?」


「お母様は死ぬ御積もりですか?」


「ええ。私の死は復讐に必要なのです。体も弱っていますし、もう疲れました・・・。私が死んだら我が君はますます腑抜るでしょう。そのくらい惚れ込ませましたからね。ふふ。その後、腑抜た陛下を私の後を追って自害した事にして宰相が害する。殿下が正式に王位を継ぐまでは継承争いが起こるでしょう、正式に後継者と認められていませんからね。そこはずっと陛下が引き延ばされていましたから。指名されていない以上、争いが起こるのは必須。多分そこでレイクヴィータ帝国かラセパタ国が攻めて来るでしょう。この国は亜人を毛嫌いして嫌われていますからね。外に目を向けず、搾取ばかりの国は滅びるか、良くて属国として生き残るくらいです。あなたも外交手腕として使われるか、殺されるかもしれません。いざという時は逃げなさい。姫としての義務も大事ですが、あなたには生きていて欲しいのです。母の我儘です。」


「分かりました。私は精一杯生きましょう。お母様の我儘はきっと叶えます。」


ええ必ず。母君の願いを叶えましょう。母君の予想通りに行かなくても、私がこの国を滅ぼしましょう。本当は母君の命を救ってこの国を滅ぼす事も出来るのですが、死もまた母君の願いなんですね。

子として母の願いを叶えましょう。長生きしますよ。


「ありがとう。碌に母として接する事もせず、小さいあなたを一人にする事を許してちょうだい。そして、私の復讐に巻き込んでごめんなさい。」


「お気に為さらないで下さい。私は大丈夫です。さあ、お菓子がおいしいですよお母様。」


「そうね。ふふふ。おいしい毒入りのお菓子ね。」


2人は穏やかな笑みを浮かべて柔らかな陽の中おしゃべりを楽しんだ。先ほどの物騒な話など無かったように。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ