第四十八章: 決戦の天空橋(ヘブンズ・ブリッジ)
大気が震え、天の帳が裂けた。その裂け目から姿を現したのは、かつて人々の希望を絶望へと変えた、浮遊せし黒き島々――天空城ガーデ。
その禍々しい影が、フィンストリオンの上空を覆い尽くし、終焉の訪れを告げていた。
だが、天へと突き立つように放たれた逆理の鍵の光が、漆黒の空を裂き、まっすぐに希望の道を指し示している。
集いし戦士たちは、その光を見上げていた。
クローは、神竜・カイの背に立ち、遥かな空を見据える。
「……行くぞ、カイ!」
その言葉に応えるように、カイが天へと咆哮を放つ。神々しき羽ばたきが地を震わせ、彼の翼が戦場を離れ、決戦の空へと舞い上がった。
彼の背を駆け上がるように、仲間たちの影が次々と飛翔する。
ハートはリンドと共に、ウイングはゼルフィードに跨がり、天を目指す。ラッシュとローランも魔法の光をまとって浮かび上がり、空の道を征く。
「アル!アズールに乗れ!」
翼を広げたヴァニットが、風の中から声を投げかける。
「借りる」
アルベールは短く返し、抵抗を見せぬアズールの背に跳び乗った。
リザードマン将軍、テラ・ザルギルが巨大な戦斧を肩に担ぎ、光のアーチを見上げながら吠える。
「恐れるな!この道は我らを選んでいる!ウロボロジアの首を取るまで、止まることなく走れ!」
その雄叫びに呼応し、リザードマンの戦士たちが一斉に地を蹴る。重厚な鱗を震わせ、怒涛の如き突進で、天へと伸びる光の橋を駆け上がっていく。
***
雲を切り裂きながら、蒼穹の向こうにそびえる天空島ガーデを目指すドラゴンナイツたち。
その後方からは、大地を揺るがす重厚な足音と共に、強靭な肉体と鱗鎧を持つリザードマンたちが、怒涛の勢いで光の橋を押し渡ってゆく。
だが――天空城も黙ってはいなかった。
空の彼方から、無数の蛇竜と悪魔兵が、まるで黒雲のように襲いかかってくる。牙を剥き、矢の雨を浴びせ、橋を渡る戦士たちに死をもたらすべく飛来する。
「蛇竜……またか!」
クローが忌々しげに呟く。
「くっ……!」
ウイングが槍を構えようとした――。
「下がってて!この邪悪には、私の破邪の光で!」
ハートが前に出ると、両手を広げ、まばゆい光を解き放った。
「光よ……!ラディアントバニッシュ!」
一瞬にして天を裂くような閃光が走り、飛来する蛇竜たちを呑み込み、灰燼と化す。
「やるじゃないか、ハート!」
「これは、あの時の光だな!」
ローランとヴァニットが感嘆の声を上げる。
「うん。でも、まだ来るかも……油断しないで!」
しかし、攻撃は空だけではない。
光の橋を渡るリザードマンたちは、天空城の悪魔軍からの猛攻に晒されていた。高所ゆえの足場の不安定さ、迫り来る悪魔、そして天空島からの岩石の投擲――。
「来るぞ! 構えろ!」
進軍するリザードマンたちは、盾を構えながらも防ぎきれず、次々に橋の縁から転落しかけていた。
「あれでは持たんぞ!」
アルベールの低く鋭い声が響いた。
***
――その時。フィンストリオンの空から、鋭い咆哮が響き渡った。
「……!?あれは――ヴァルハイト!?」
銀の鱗をきらめかせながら、アーマードワイバーン、ヴァルハイトが空を裂いて現れた。
それは、リューガ(ブレイン)が駆っていた飛竜――アルベールの剣により瀕死の傷を負いながらも、リューガの意志と魂が宿りし者として、今、この空に帰還したのだった。
ヴァルハイトは天空城に向かって力強く咆哮し、火球を空へ撃ち上げた。爆ぜる火球の轟音に応えるように、天空島の岩陰から次々と飛竜の影が姿を現す。
――赤、蒼、翠の鱗を持つそれは、かつて共に天空島に挑んだ、仲間たちの飛竜だった。
「ファングの……飛竜!?生きていたのか……!」
クローの瞳に、熱い光が宿る。
「ドラゴンナイツたちの魂、仲間たちの想いも、今ここにあるってことだな!」
飛竜たちが咆哮と共に飛翔し、悪魔兵を次々と薙ぎ払ってゆく。彼らは、空を制圧し、リザードマンたちの通り道を切り拓く盾となった。
「突破するぞ!!」「おおおおぉぉッ!!」
怒涛の咆哮が光の橋を震わせる。やがて、リザードマン大隊は橋を渡り切り、天空島への上陸を果たす。巨斧と槍を振るい、悪魔兵と岩のゴーレムと激突する。
「土人形に頼らねば、戦えんのか……!出てこいオーグ!!」
テラ・ザルギルは眉間に皺を寄せ、敵陣を睨み据える。敵陣奥の影で、黒紫の魔力が不気味に揺らぎ、災厄の使徒が姿を現す。
「フン、爬虫類風情が、よくもここまで登ってきたな」
禍々しい紫のオーラを纏い、狂気に満ちた笑みを浮かべる男。その姿を見た瞬間、リザードマンたちの表情が険しくなる。
「タイタス・オーグ……!」
忌まわしきゴーレム使い。かつて戦乱を操った謀将、マルクス・オーグの実兄にして、数多の命を弄んできた者。
「テラ・ザルギル……貴様のような裏切り者、万死に値するわ!」
「戯けたことを……裏切ったのはウロボロジアの方だ!俺たちは従い、耐えてきた。だが兄が敗れた途端、“使い捨て”のように見放し、牙を向けてきたのは貴様らだ!」
テラが動いた。巨斧を振り上げ、一気に間合いを詰める。
斬撃と魔弾が交錯する激しい攻防。その一撃一閃が、岩を裂き、大地を穿ち、ゴーレムすら砕く。
「こ、この……爬虫類があああッ!!」
「俺の名を、お前の魂に刻め!!!」
テラの渾身の一閃。その巨斧が唸りを上げ、タイタスの防御を斬り裂く。斜めに深く入った刃が、男の胴体を断ち割った。
「なっ……が、は……ッ」
タイタス・オーグは目を見開いたまま崩れ落ち、その身体から噴き出した魔力が虚空に消えていく。
同時に、彼が操っていたゴーレムたちも一斉に力を失い、土の塊として崩れ落ちていった。
テラは静かに血を拭い、目を閉じる。
「……タイタス・オーグ。お前の咎、我が刃で清算した。黄泉にて悔い、そして恥じるがいい……!」
天を突くようなリザードマンたちの咆哮が、戦場に響き渡った。
***
テラ将軍たちリザードマンが地上戦線を推し進めているのが、上空からもはっきりと見えた。怒涛の如く突進し、悪魔軍を圧倒するその勢いに、飛翔する仲間たちの胸にも確かな希望が灯る。
「よし……これで島の地上戦は任せられる。あとは俺たちが、天空城へ突入するだけだ……!」
ウイングが前へ一歩踏み出し、息を整える。
だが、その時、空間が激しい衝撃音とともに揺れた。
「……なんだ?」
全員が反射的に構えを取る中、目の前に巨大な光の壁が出現する。城を包むように広がるそれは、禍々しく脈打ち、揺らぎながら彼らの進路を完全に塞いでいた。
「これは……バリアか?」
ラッシュが小刀を抜き、投げ放つ。だが、小刀は透明な障壁に弾かれ、虚しく空へと弧を描いた。
「この障壁は、天空城を守る防衛結界だ。城の周囲にある三本の魔力塔が、結界の核になっている。あれを壊さねば、このバリアは消せない」
ローランが、重く低い声で告げる。
「三本の塔、あれか……」
クローが視線を巡らせ、遠くにそびえる尖塔を確認する。
「塔のそれぞれには、ウロボロジアの側近が待ち構えているだろうな」
ローランの言葉に、仲間たちの緊張が走る。
「だが、一つずつ潰していたら間に合わない。この瞬間も、皆が我々を信じ、命をかけて戦っている。ここは戦力を分けて潰していくしかない」
ラッシュが言い切ると、すかさずウイングがアルベールに顔を向けた。
「ちなみに、アルベール。側近ってやつらは――あんたより強いのか?」
アルベールが静かに答える。
「……弱い」
「へっ、楽勝だなっ!」
ウイングがクローとラッシュに目配せしながらニヤリと笑った。
「よし、手分けして三方向の塔を同時に破壊するぞ。東の塔は私とハート、ウイングで向かう。西はティアー、ローラン、アルベール。北は……クロー。いけるな――」
「任せろ。俺とカイならやれる!」
カイが力強く咆哮する。響き渡る咆哮は、まるで仲間たちの背を押す鼓動のようだった。
ラッシュは満足げに頷き、仲間たちを見渡した。
「それぞれ敵の幹部を倒し、塔を破壊したら中央で再集結する!誰も倒れるんじゃないぞ!生きて、また会おう!」
仲間たちは次々と飛竜や魔法で空を駆け、それぞれの塔へと向かっていった。
***
北方の空域を見据えながら、クローはぼそりとつぶやいた。
「カイ、ラッシュに気を遣われたかもな……。あいつと戦う役目を、俺に譲ってくれたんだろう」
遥か前方。北の塔の上空では、禍々しい蛇竜が黒い影のように空を舞っていた。
「ナグ・サハル……お前だけは、俺が倒す。フレイア、ファング……そして守れなかった仲間たちの無念を、この手で必ず晴らす!」
その声音に宿るのは、怒りでも憎しみでもない――凛とした、静かな決意だった。
神竜カイが、一声高らかに咆哮する。
その響きは、まるで空を裂き、運命の扉をこじ開けるかのように、遥か天空へと轟いていった。
ファング「俺の相棒!生きてたんだな!そういやあの時、俺だけ落ちてったからな」
フレイム「私は飛竜と一緒にやられたけど」
フロスト「私も飛竜と一緒に」
ボルト「俺も飛竜と一緒に」
シールド「飛竜ごと」
ファング「何か、ごめんよ!」
リューガ「ヴァルハイトのやつ、アルベールからの怪我が治っていないだろうに、無茶をしおって」
ファング「どっかの指揮官の影響を受けたんじゃないか?いい相棒だな!」
リューガ「ふっ!」
ファング「ブレインーーーーーあそこでリザードマンとハイタッチしてるの、姫じゃね?」
ーーーーーー(あ、いない!)あの姫ェェ!!
ーーーーーー捕まえとかないと、すぐこれだ!
ーーーーーーブレイン!早く起きてくれーーーー!!!




