第四十六章:ディヴァインナイツ
漆黒の竜翼が闇を裂き、夜空を鋭く切り裂いていく。圧倒的な力を持つその存在は、空を制圧するかのごとく咆哮を放ち、空中の支配者として戦場全体に君臨していた。
咆哮は轟雷のように鳴り響き、耳をつんざくその音に、兵士たちは恐怖で膝を震わせた。
フィンストリオン王都上空。そこには、完全に理性を失ったクローと、カイの姿があった。
今、彼らの目には何の違いも映っていない。ただ暴力と破壊の衝動に突き動かされ、無差別に襲いかかっていく。
吹き荒れる闇は地上を包み込み、空もまた黒煙にかすみ、光なき混沌が広がっていた。
誰の声も届かない。
誰の想いも、彼の心には触れられない。
***
「颯太! 止めて……お願い……!!」 リンドの背に乗ったハートが、涙混じりの声で叫びながら、一直線に駆ける。
「ダメだ、ハート! 今のクローに、俺たちの声は届かないんだ!」
ウイングが叫ぶが、ハートの飛翔は止まらない。
空を切り裂くような勢いで、ハートはクローの目と鼻の先へと迫った。
――だが、その瞬間。クローの紅い双眸が、ハートを正確に捉えた。
そして、爪が動いた。
「……っ!」
闇の爪が唸りを上げて振るわれ、真っ直ぐにハートへと迫る。
「ハート、離れ――!」
刹那。影が滑り込む。
「ガァァアアアアッ!!」
飛竜アズールの咆哮が空気を裂き、その巨体が割り込んで闇の爪を受け止めた。
「……遅れてたら、死んでたわよ」
ヴァニットがアズールの背から身を翻し、しなやかに宙へと舞う。
その手には、黒き大鎌。光を吸い込むような闇の武器が、彼女の覚悟を象徴していた。
「……あの時より遥かに濃い闇。そうか……お前、本当に堕ちたんだな」
***
――斬撃。 クローの爪と、ヴァニットの大鎌が空中で激しくぶつかり合い、火花を散らす。
その速さは音すら置き去りにし、交差した瞬間、空間がわずかに歪んだ。
だが――その瞳に、かつての“彼”の面影はなかった。紅く燃える双眸に宿っているのは、怒りと破壊の衝動のみ。言葉など届かない、心を閉ざした異形の存在。
「っ……クロー……聞こえないの……?」
斬り結びながら、ヴァニットは歯を食いしばる。
鎌の柄がクローの爪に弾かれ、その衝撃が腕を痺れさせる。一撃ごとに押し負けていく。それでも、彼女は退かなかった。
咆哮を上げ、クローが突進する。膨れ上がった魔力の波動が襲いかかり、ヴァニットは空中で身体をひねってどうにか受け流す。
「……それでも、関係ない。私は、伝えるって決めたの」
地上から、風に乗って届く仲間たちの声。
「ヴァニット、ダメだ!今のクローに、俺たちの声は通じない……!!」
ウイングが叫ぶ。拳を握りしめ、悔しげに空を仰ぐ。
「いいえ……」
ハートが静かに首を振る。その瞳は震えていながらも、真っ直ぐだった。
「颯太にとってヴァニットは、命を奪い合い、共に戦って心を通わせてきた特別な存在……それはもう、私達以上の絆なの。だから――ヴァニットなら、きっと届くわ!」
(颯太……あなたにも、まだ彼女に伝えるべきことが残ってる。思い出して……)
空の戦場――再び、爪が振り下ろされる。ヴァニットはそれを大鎌で受け止め、そして――構えを解いた。
両手を、広げる。
ふわりと、彼女は黒き騎士の胸元に手を回し、抱きしめるようにその身を預けた。
「……ようやく、わかった。抱きしめるってこと、大切なものの意味……」
その声は、戦場の喧騒よりもずっと静かに、まっすぐに響く。
「この暖かな気持ち……私にとってお前は、失いたくない大切な存在なんだ」
その囁きが、閉ざされた心の奥に、かすかな波紋を広げた。
爪が、止まる。
そして――漆黒の鎧に、ひびが走った。闇の中で、クローの肩がわずかに震える。
「……私の居場所になってくれるって、言ったよね。もう私から何も奪わないで。……戻ってきて、颯太」
ヴァニットから一粒の涙がこぼれ落ちる。その想いが、深く沈んだ意識の底に、確かに――届いた。
パリン、と。漆黒の鎧が、音を立てて砕け散った。
***
空中で砕けた破片は、黒い光の塵となって、風に散っていく。天城 颯太の身体が、がくりと崩れ落ちる。
「颯太っ!」
ヴァニットがその身体を受け止め、強く抱きしめた。
「……お、俺……」
かすれた声。紅かった瞳が、静かに元の色を取り戻していく。
今にも泣き出しそうな顔で、クローはヴァニットの肩に額を預けた。
「ごめん……ヴァニット……皆……俺……」
「謝らなくていい。今、お前は帰ってきた。それだけで――」
ヴァニットの声音は優しかった。
傷つき、壊れかけたクローの心を、そっと包み込むように。
「ありがとう……」
その時――
颯太の身体から、**紫黒色の煙のような“呪い”**がふわりと立ち昇った。それはまるで、苦悶と怨嗟が混じったような不気味な気配を纏っている。
「……あれは、まさか……!」
ハートが呻く。
「ナグ・サハルの……呪術か……!?」
ウイングが目を見開く。
「そうか……!あの森で戦った時……あいつ、クローの中に闇の因子を植えつけていやがったのか……!」
空を漂っていた黒い霧が、ふわりと舞い、離れた場所にいたアルベールの身体にも反応するように流れていく。
「……ぐっ……!」
アルベールの片膝が地面につく。
彼の身体からも、同じ黒い霧が浮き上がる。
「……ナグ・サハル……そうか……。俺の中にも……こんなものを、忍ばせていたか……!」
忌々しげに、アルベールは唇を噛み、拳を地に叩きつける。
「俺は……自分の意思で世界の敵になっていたつもりだった。だが、知らず知らずのうちに、ウロボロジアの魔に心を侵食されていたというのか……」
***
空から、黄金の光がゆっくりと舞い降りてきた。
それは、かつてクローと共に戦ったアーマードワイバーン――フレイアの幻影だった。
柔らかな笑みをたたえ、空に浮かぶその姿が、クローとカイの背後に重なっていく。
まるで――魂そのものが、今、絆を結ぶことを選んだかのように。
「……あれは……!」
ハートが息を呑む。
「……魂が、呼応してる……今、この瞬間に……!」
ヴァニットは、小さく呟いた。
クローの口から、自然とその言葉が漏れた。
「魂の開放!」
瞬間、黄金の光が炸裂する。
カイの身体を包む鱗が白銀に輝き、天へと昇る二対の翼が、まるで“聖なる焔”のように展開される。
クローが再び纏ったドラゴンナイツの甲冑が変貌する。デビルナイツではない光のオーラ。黒と金を基調とした神域の鎧へと姿を変え、胸元には蒼の魂核が脈動するように輝いていた。
天空で輝く飛竜操騎士を見上げ、その場に到着したアルゼリーテ姫と城内から見下ろすレヴァンティア姫が、息を呑み、胸元に手をあてて呟く。
「古き絵本、2つの竜と心を通わせた竜騎士の物語……。」
「深き闇を打ち砕き……。」
「竜と人の魂がひとつとなる時……空に宿る伝承が、再び蘇る……。」
「これこそ……ドラゴンナイツの真なる姿……。」
「魂と魄、竜と騎士が完全に交わり解放されるとき……。」
「――ディヴァインナイツ――」
新たなる光が、世界を照らし始めた。
ファング「めちゃくちゃ熱い展開だな!忙しい章だぜ!」
フロスト「なんですか、あの二人!すごいご飯が進みます!ハフハフ」
フレイム「アルベェェル!!」
ボルト「ドラゴンナイツの進化にさらに先があったなんてな!」
シールド「バリバリバリバリ(ポテトチップスを頬張る音)!」
リューガ「くそぅ!こんな一大イベントに立ち会うことができんとは!!!」
アルゼ「(現場より)チラッ|゜∀゜)ノ))))ブンブン!(こちらに向けて手を振っている)」
ーーーーーーーーいや、今、貴女いらないです!
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