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第四十一章:紅き裁きの剣!アルベール来襲

 フィンストリオンの空が、静かに曇った。


 灰色の雲が鈍く広がり、王都の上空を覆うように重く垂れこめていく。

 静寂を裂くように、その中から――ひとつの影が、ゆっくりと舞い降りた。

 それは、赤黒の外套をたなびかせ、重厚な赤の甲冑をまとった男。

 その身からは、炎のような憎悪が音もなく立ち上っていた。


 その名は、アルベール・ディルヴァルト

赤と黒を纏いしその姿は、かつての栄光を焼き捨てた、ひと振りの剣のようだった。

今や彼は、“忠義”という名の亡霊に成り果て、静かにこの地へと舞い降りた。


「……ここが、フィンストリオンか」

 低く沈んだ声には、怒りと悔恨が冷たく滲んでいた。


「この地も、エルゼリアと同じ運命を辿ればいい――」

 その背後には、天空城に仕える悪魔兵たちが無言のまま列をなし、静かに地を踏みしめていた。

 その姿はまるで、嵐を告げる前触れのように不気味で、王都に新たな影を落としていた。



 金の尖塔が並び立つ神秘の都に、竜の咆哮が静かに戻ってきた。

 メルク砂漠の戦いを終えたクロー、ウイング、ブレイン、そして王国騎士団長ラナ・ゴールド・ラッシュの四人は、一路王都へと帰還し、すぐさま城内の戦略会議室へと足を運んだ。


 重厚な扉の奥、円形の石卓を囲む室内には、冷えた空気と静かな緊張感が漂っている。

 そこは、かつて幾度も大戦の決断が下されてきた場所――そして今、再び歴史が動こうとしていた。

 卓上に置かれていたのは、金属とも水晶ともつかぬ輝きを放つ異形の結晶。


 《逆理のパラドクスキー》――世界の理に抗い、ウロボロジアの“不死”に終止符を打つための、唯一無二の鍵だった。



「この鍵……本当に、あのウロボロジアに通じるのか?」

 ウイングが腕を組みながら、慎重に問いかける。


 ブレインは静かに頷いた。

「これは、ウロボロジアの“不死性”を打ち砕くための鍵だ。単なる道具じゃない――存在そのものの根幹に干渉する、特別な力を持っている」


 ラッシュがその言葉を継ぐように、指先で鍵を撫でながら続けた。

「世界の理にすら逆らう、“逆理”の力……。魂の流れ、時間の輪廻――そのすべてを断ち切って、ウロボロジアの“真なる核”に届かせるためのもの」


「つまり、“戦う手段”じゃなくて……“勝利の条件”そのものってことか」

「その通りだ、クロー」

 ブレインの声には、確信の響きがあった。


「さて――」

ラッシュは腰のレイピアの柄に軽く手を添えた。


「本題に入るが。ブレイン、天空城への道が絶たれていると言っていたな……方法は見つかったのか?」


「……いや、それはまだだ。ヴェルランディアで探してはいるんだが、そもそも天空の鍵の情報ですらやっと手に入れたものだったからな。」


「ならばもう一度王宮図書館を探ってみよう……。いい情報が見つかればいいが………。」



 その時。



 王都の城壁に警鐘が鳴り響いた。甲高い金属音が空を裂き、警備兵たちの叫び声が響く。


「警戒態勢を急げ! 東門より、異形の軍勢が接近中――!」


「な、何事だ!?」

 ウイングが目を見開く。


 扉が勢いよく開かれ、騎士のひとりが駆け込んでくる。

「ラッシュ団長! 城門前に、天空城ガーデからの刺客が迫っております!」


「なにぃ……!?」

 一同が東の窓辺へ駆け寄り、城門の外を見下ろす。


 そこにいたのは、深紅の鎧に身を包み、黒翼のようなマントを背にまとった男。

 悪魔兵たちを引き連れ、無言のまま王都へと迫ってくるその姿は、誰の目にも異質であった。


「……まさか、あれは……! 赤聖騎士団、団長アルベール……!」

 ブレインが息を呑んだ。


「アルベールだって!?」

 ウイングも驚愕する。


「ああ……間違いない」

 ブレインが静かに頷く。


「くっ……!」

 ラッシュが即座に飛行魔法を展開し、窓を突き破る勢いで外へと飛び出していく。


「待つんだ、ラッシュ!」

 クローが叫ぶが、彼女はすでに制止の声を置き去りにしていた。


 三人はすぐに視界の開けた場所へと移動し、飛竜たちを呼び出す。


「アルベール……? でも、あれは人間じゃないか?」

 クローの問いに、ブレインが重く頷く。


「そうだ。アルベール・ディルヴァルト

 もとは、ヴェルランディア、フィンストリオンと三国同盟を結んでいた、エルゼリア王国の騎士団長だった。

 だが、天空城の侵攻で王国は滅び、王女は消息不明。救援も間に合わなかった。

 彼はそれを“裏切り”と受け取り、心を閉ざした。

 そして今では、復讐のために剣を振るう亡霊……天空城で“最強の地上戦力”とされる存在だ。」



「天空城ガーデの使者が、何の用だッ!」

 前線に立つラッシュが叫ぶ。だが、アルベールは冷たい瞳で見返した。


「ラナ・ゴールド・ラッシュ。フィンストリオンに忠誠を誓う騎士長――その剣は、果たして、俺の王女を守るに値したのか?」


「……っ!」

 ラッシュの瞳が揺れる。


「私は……あの時、あの場所にいなかった。だが……!」

 言葉を紡ごうとしたその瞬間――


「下がれ、ラッシュッ!」


 風を裂いて、三体の飛竜が夜空を駆けるように舞い降りてきた。

 その背にまたがるのは、クロー、ウイング、そしてブレイン。

 ヴァルハイトが咆哮を響かせ、空気を震わせながら敵の前へと降り立つ。


「……アルベール。まさか貴様がここへ来るとはな」

 ブレインが静かに言葉を投げかけた。


「リューガ・デイン。ヴェルランディアの竜騎士団を率いる男か」

 アルベールが応じる。


「“エルゼリアの赤き剣”――その名は今もなお誇り高いものだと、俺は信じていた」

「誇りなど、とうに地に堕ちた。

 王女を守れなかったこの剣に、もはや名誉など残っていない」

「……本気で、全てを滅ぼすつもりか?」

「ああ。人間という種そのものを、この手で終わらせる。

 それが、俺に課された――生き残ってしまった者の贖いだ」


「……それならば、俺は止めなければならない」

 ブレインが静かに、しかし確かな決意を込めて剣を抜く。


「止められるものなら、止めてみろ」

 アルベールが静かに答え、紅蓮の剣を抜いた。


 その刃には、まるで王女の血涙のような紅のオーラが揺れていた。

 その横で、クローとウイングも構えを取る。


「一気にいくぞ、クロー!」

「おう!」


 三体のアーマードワイバーン――カイ、ゼルフィード、ヴァルハイトが同時に咆哮を上げ、空へと舞い上がった。

アルゼ「かつて王女を守り、今は滅びを背負う男――アルベール。

その刃が、ついに王都フィンストリオンへと振り下ろされる。


迎え撃つは、帰還したドラゴンナイツたち。

交わるはずのなかった運命が、いま正面からぶつかり合う。


信じるもののために戦う者と、失ったもののために剣を振るう者。

交錯する信念の果てに、待つのは勝利か、それとも――。


天空城最強の刺客・アルベールを前に、ドラゴンナイツ達は生き残ることができるのだろうか?!


頑張れリューガ!負けるなリューガ!未来をその手に掴みとるのだ!


次回――『ブレイン 死す』!」



ーーーーーーーーーーーーちょっとぉ?!

ーーーーーーネタバレ?

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