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投稿予定及び没ネタ小説集  作者: 天原 重音


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キャラ名なき作品 その17

R15は念の為です。


キャラの名前を考えずに、気晴らしで書いた作品です。

息抜きのように勢いで書いたので、キャラクターの名前はありません。これだけはご了承下さい。


エピソードタイトル

婚約破棄が成立したので家を出ます

 夜が明ける前。

 自分は魔法で姿を隠し、荷物を手に屋敷の裏口から出た。

 生まれてから十四年間いた生家だが、良い思い出は一つもない。何一つないから、未練も無い。

 空が白む中、自分は貴族街を歩いて移動する。他国出身の母を持つので、自分の髪色は目立つ。魔法で髪色も茶色系に変えたよ。

 本当は魔法で飛んで移動したいけど、貴族の家には防犯装置の一種で、魔法を使用している人間が近づくと警報装置が鳴ってしまう。空が飛べる魔法使いは少ないので、勘違いさせる可能性が高い。

 故に、面倒でも徒歩で移動するしかない。

 歩きながら思い出すのは、半月前の事だ。


 

 半月前。

 王室主催の夜会で、自分は六年間も婚約していた、三歳年上の公爵令息相手に婚約破棄を宣言した。

 婚約破棄を『された』のではなく、自分から宣言した。色々とスッキリしたわ。


 他の人間と婚約しておきながら、幼馴染を優先する馬鹿な男って創作話だけだと思っていたよ。 

 だから、家から大手を振って出て行ける理由になるんだけどね!


 自分の父(伯爵)と兄ならば『婚約破棄を宣言するような女は我が家に要らん。出て行け』と言うだろう。つまり、自分が出て行く事に反対する人間はいない。

 こっちも『不貞を肯定する家』に嫁ぎたくないから、大助かりだ。

 馬鹿の顔を引っ叩いて、馬鹿の幼馴染の真実――十歳になるまでに特効薬で治さないと『不妊になる』病気が、未だに治っていないので、そこの公爵令嬢は妊娠出来ない体になっている――を声高に言って、婚約破棄を突き付けた。 

 ここで臣籍降嫁した元王女(現公爵夫人)がタイミングよく突っ掛かって来てくれた。ついでに元王女の罪も色々と暴露した。

 証拠を求められたら、公爵(元王女の夫)が進んで提示してくれた。こっちも準備していたけど、まさかの助成は大いに助かった。

 公爵は元王女の我儘で、両想いの相手との婚約を潰された事を根に持っていた。離婚する為に時間を掛けて、証拠を集めていた。


 そのお陰で元王女と現国王の罪が露呈し、夜会は大騒動になった。

 

 いかに王女でも、意中の相手と婚約したいからって、己に甘い兄に『意中の相手の婚約者を事故に見せかけて殺して、病死として処理させる』って、どうよ? 

 しかも、相手の実家にあらぬ罪を擦り付けて、口封じの為に『一家を纏めて処刑する』って、王族であっても流石に実行しては駄目だろう。関係者も全員、秘密裏に殺されている。

 おまけに、自分が一番目立ちたい一心で、他人の妻(他国の王族筋で自分の母)を病死に見せかけて殺すって、どう言う思考しているんだよ? 

 挙句の果てに、買収して自分の母に毒を盛らせた侍女を『破落戸の慰み者にしてから殺す』って、残虐非道にも程がある。

 父と兄は母の死の真相を知らなかったのか、ギョッとしていた。本当に出産が原因で体調を崩した事が原因の『病死』と信じていたのか。自分を出産する前から、買収された侍女に毒を盛られていたのに。

 自分は巻き添えで一緒に殺されそうになったから調べただけだ。

 

 騒動の収拾が付かなくなった夜会は、宰相と王太子が王と元王女を拘束し、後日改めて調査結果を公表すると宣言した事で解散となった。


 発端は自分だけど、『そもそも王家が原因』と見做されたので、被害者になれた。色んな意味で被害者なので、夜会を潰した事で攻める視線は受けなかった。

 王と元王女の犯行内容の方が何倍も衝撃的だった事もあるだろう。

 最大の理由は、公爵令嬢の真実だろう。

 公爵家の一人娘が不妊だったって、割と衝撃的な事実だ。

 期限までに治療を行わなかったのは、『その方が気を引きやすい』と元王女が判断した可能性が高い。

 それでも公爵令嬢に同情は出来ない。

 病弱で母親が元王女である事を理由に、あちこちで横暴な振る舞いをしていた。平たく言うと、方々から顰蹙を買いまくっていた。

 それが原因で、誰も公爵令嬢を助けようとしない。

 挙句の果てに、父親の公爵からの追加攻撃が待っていた。

 

 なんとね。この公爵令嬢は、公爵家の血を引いていない子供だったのだ!


 どう言う事かと言うとね。

 公爵は意地でもこの元王女と子供を作りたくなかったらしく、身代わりを立てた。魔法で外見を変えたからバレなかったそうだ。

 その身代わりの相手は『元王女を妾として娶りたい』と言っていた、他国の王様(現在御年六十五歳)だった。

 つまり、高齢の男と子供を作っていた事になる。

 更に大暴露が成功したら、元王女とその娘を引き取ると言っているらしい。 

 公爵の大暴露により、膝から崩れ落ちた元王女と公爵令嬢の処遇は決まった。その王様の指示で公爵令嬢の治療が行われていなかった事まで明かされる。

 これまでのやらかし具合を考えると、同情の余地は無い。

 愛玩動物のように扱われるだけでも、刑罰を受けるよりはまだマシだ。

 臣籍降嫁したとは言え、元王女が他国の王族筋を身勝手な理由で毒殺した以上、どう考えても外交問題に発展する。

 相手の国が納得する処罰を下さねば、更なる問題に発展する。

 ……まぁ、母の実家は父の言い分だけを聞いて、自分を『我儘娘』と判断していたんだよね。『貴族の女は政略の駒だ。駒の分際で男に逆らうな』とか言っていたっけ? 

 向こうの家に顔は出す予定はないし、実家とも縁は切った。

 婚約は向こうの有責で解消になった。

 元王女経由で王に媚びを売りたい家からは、謝罪の手紙と慰謝料が『伯爵家宛』で届いた。『自分宛』ではなく、『伯爵家宛』だったから手紙は読まずにポイ捨てした。慰謝料は家に入ったので知らん。

 婚約を解消した時に、公爵家からは家と自分に慰謝料が支払われたので、当面の資金繰りには困らない。

 母から受け継ぐ予定だった品は、父が管理している。装飾品類は与えられた事が無いし、必要な時には家にあったものを借りていた。婚約者から届いた品は『家のものだ』と父に取り上げられていた。

 要らないから、別に良い。売り先に困る。仮に売り払ったとしても、足が付いたら意味が無い。

 冒険者ギルドみたいなところが存在するから、お金を稼ぐ当てには困らない。魔法が存在する世界でもあるので、困る事は少ない。

 公爵家からの慰謝料が二つに分かれていたのは、本当に意外だった。

『我慢して。来年になれば落ち着く筈だ』

 この言葉の謝罪も兼ねているのかもしれない。


 この言葉を公爵から言われるようになったのは、馬鹿と婚約してから大分初期の頃だ。

 向こうから約束を取り付けて、ドタキャンした馬鹿に『貴族の一般常識』を言ったら『嫉妬するな』って父に殴られた。兄にも階段から突き落とされたっけ?

 ドタキャン三回目以降は、『どうせ直前になってキャンセルされるのだから』と全て拒んだ。

 一度、王室主催のガーデンパーティーで、シスコン王に媚びを売りたい自分を悪く言う夫人が沢山いたから、その場で『約束を取り付けておいて、直前になって破る男は嫌い。お前のせいで悪く言われるのも嫌。婚約を解消して』と願い出た。

 馬鹿は嫌だと叫んだ。それだけでなく、『幼馴染は好きじゃない。嫌いだ!』とまで言った。

「お見舞いに行かないと陛下に殴られるから、仕方なく行っているだけだ」

「見舞いのあとに来ない時点で同情出来ない」

 まさかの暴露を聞いて会場は騒然としたけど、同情箇所が無いわ。『約束したって来ないのでしょう? 人の時間を浪費させて楽しいの? 二度と期待しないから婚約を解消して』と言ったら、あの馬鹿はムキになって『婚約解消はしない』と叫んだ。

 この頃は相性確認の為の『仮婚約期間』だった。

 だから、割と簡単に婚約の解消は可能だったが、余程元王女の娘と婚約したくないらしく、頑なに拒まれた。馬鹿の両親の公爵夫妻に何度も『婚約解消したい』と直談判したけど、『我慢して。来年になれば落ち着く筈だ』と言われて拒まれた。

 でもね。

 それが六年間も続いたら、信用出来なくなる。

「我が国の騎士は、息をするように嘘を言う人でもなれる職業だったのね」

 こんな事を言うようになったのは、何時からだったか。公爵が十人しかいない騎士団長の一人だった。だから、嫌味を込めてこう言うようになった。

 他の関係の無い騎士でも、公爵を尊敬している奴は『嘘吐きを尊敬している奴』と見做していた。『団長には余人には分からない考えをお持ちなのだ』と、公爵を擁護する事を何度言われても、こちらは我慢を要求されているので、『知らん』と切り捨てた。

 しつこい奴は蹴り飛ばしたっけ。


 色々と思い出していると腹が立って来た。

 終わった事だけど、終わるまでの過程が嫌だった。

 ……今日で終わるんだよね。 

 そう。今日国から出てしまえば、全ての縁が切れる。

 部屋に絶縁状を置いて来ているので、出奔扱いになる。

 この国のデビュタントは十三歳だ。自分も去年デビュタントしたけど、アホ女のせいで散々な目に遭った。

「貴族の一般常識が無い男を婚約者として扱わなくてはならないこっちの身にもなりなさい。こっちは、一般常識を口にしただけで嫉妬するなと父に殴られるのよ! 分別の無いお前のせいで、暴力を振るわれる身になりなさいよド無能! 顔と身分だけでチヤホヤされる馬鹿は何も学ばないのね」

 そう言って、馬鹿の下顎に掌底を放った。本当に、婚約期間中に良い思い出が一つも無いな。

 婚約破棄出来て、本当に良かった。

 色々と思い出していた内に、貴族街と臣民街を隔てる門の前にまで来ていた。

 この門には特殊な防犯装置が組み込まれており、登録してある貴族の魔力に反応して、門が自動で開閉する。通った記録は残ってしまうが、見張りがいないので贅沢は言えない。

 開門して通り抜ける。この先は臣民街だ。

 先ずはどこかの屋台で朝食を食べよう。



 屋台で朝食を買い食いし、昼の分まで購入した。

 今更買い足す荷物は無い。強いて言うのならば食糧ぐらいだけど、別の街に行けば購入出来る。

 門を通り、王都から出た。王都に入る時に比べると、出る時に掛かる時間は短い。身分証明証は十日前に冒険者ギルドで別の名前で作った、冒険者登録証を見せれば良い。

 王都から出たら、もう自由だ。

 この国はこれから大変な事になる。もう知った事じゃないけどね。

 


 半月で終わった事は王と元王女の事情聴取と王の幽閉、元王女の離縁と生き残っている被害者の存在の確認の、四つだけだ。

 これから、摂政として事後処理に当たっている王太子の戴冠式、元王女とその娘(逃亡防止で二人揃って貴賓牢に入れられている)の二人の輿入れ、母の祖国への事情説明と対応、元王女に媚びを売りたい一心で色々とやっていた馬鹿な貴族共の扱い、その他細かい事が待っている。

 王家からの謝罪は来ていない。伯爵家には来ているだろうけど、自分宛には来ていない。もう知らんと、無視したし、今後来ても無視する予定だ。

 そうそう。元王女と離縁した公爵は跡取りに関して『養子を取れば良い。既に選定済みで教育は終わっている』と堂々と言った。色んな意味で公爵の『意地』が見える。



 王都から伸びる整備された街道を暫く歩き、横に逸れて人気のないところへ移動し、魔力駆動の飛行用バイクに乗って空を移動する。

 この世界には学校自体が存在しないので、学ぶ為の場所がない。強いて言うのなら、薬師ギルドに薬品の作り方を纏めた本があるぐらいだけど、見せて貰う事は難しい。

 代わりにと言っては何だが、冒険者と言う職業と冒険者ギルドに、ダンジョンが存在した。

 王都を出る時用に身分証明証を作った際にも言ったが、既に冒険者ギルドに登録は済ませている。そして、ダンジョンが存在するのならば、やる事は一つ。

「資材確保に動くか」

 資材はあって困るものではない。足りない方が困るのだ。

 採掘王を目指すとか、そんな事はしないが資材が豊富にゲット出来るダンジョンに行きたい。

 

 ダンジョンアタックをやり過ぎて『攻略狂女王』と呼ばれる事になるのは、五年後の事である。



 おまけ ~主人公が知らない王国のその後~


 王国は苦境に立たれるが、欲しかった妾を母子セットでゲットした国の王様が手伝ったので、新国王の頑張りもあり、十年掛けて立て直す。


 主人公の実家は、衝撃の真実から立ち直れないままの父と嫡男が外交問題の矢面に立たされる。

『主人公が嫉妬から我が儘を言っている』と妻の実家に説明していたが、我が儘の内容が一般常識だった事と、長女が絶縁状を残して出奔した事がバレる。どんな我が儘を言っているのか確認を怠った事から、一方的に責め立てられなかったが、暴力行為に及んでいた事だけはどうにも出来なかった。駒を無断で捨てるとは何事だと、八つ当たりの為に、どんな扱いを受けるか分からない駐在外交官として妻の祖国に父子共に送り出された。

 

 元婚約者の家にも飛び火したが、『早々に婚約解消に動かなかった伯爵家が悪い』として、ちくちく言われるだけで済んだ。

 主人公の元婚約者は新国王の命令で、他国の王女と婚姻した。主人公とやり直したかったが、長年の約束保護を理由に、一切のやり取りを拒絶され、知らない間に出奔されてしまった。

 誕生日に主人公に贈った品が『家のもの』扱いされていた事を知り激怒するも、全て返却された事に絶望する。流されやすい性格の為、新しい婚約者の王女の尻に敷かれる日々を送る。主人公の捜索は新国王に禁止されてしまった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

キャラ名すら考えずに書いた、主人公が婚約破棄をして出奔する作品となりました。

書き上げたら思っていた以上に短かった。でも、ダイジェストノリで婚約破棄をする側で書いたのは初めてかもしれない。



 

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― 新着の感想 ―
ククリさんは能力があってどこででもどうとでも生きていけるから、全部投げ捨てても何も困らないのが強いですね。まあそれでも今までは我慢していたんだから、辛抱強いですね。目覚めた時点で一旦死ぬ目にあっている…
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