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剣の谷の狙撃手  作者: キャップ
第一章 狙撃手
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狙撃手

また、対空兵器も都市部を中心に配備しているのか、元から不足していたのかは不明だが、防空能力もかなり薄いということだ。市街地への航空攻撃が有効的ではないことを承知しつつロシア空軍が飛び回り、限定的かつ小規模とはいえ、空爆を行っているのもこのせいだろう。




だがもちろんこちら側ばかりが有利といえる戦場ではない。市街地戦は建物自体を盾として使うことができ、道路は容易に封鎖可能、大型車両の通行を制限させ、防御側の有利な場所に誘導することもでき、偵察も困難という攻撃側には圧倒的に不利な要素が多い。




これらはもちろん敵側にもマイナスに働くが、町の形状について熟知している側とそうでない側との差は大きい。物量差があるにも関わらず、まさに「三歩進んで二歩下がる」状態でどうにか押し込んでいる状態だった。




日本軍の得意分野と、ロシア陸軍機械化歩兵の強みである機動力と攻撃力の制限を少しでも避けるために市街地を軍上層部は選んだらしいが、損害は決して少なくなかった。




「大戦後に解体され、新たに編成された現日本軍は実戦を知らない。故に戦いは短期で終了し、ロシアの圧倒的勝利で終わるだろう」




戦争開始直前の特別番組で、ある軍事評論家は言った。それに対したこう言った軍事評論家がいる。




「ロシアは99パーセント以上の確率で勝利するだろう。だが実戦を知らぬ故に短期に圧倒的決着というのは疑問がある。現代において今の日本軍と対峙した国はなく、これは情報が極めて少ないということであり、彼らには謎が多い。」と。




さらにその評論家は続けた。




「大戦で大敗を味わった現日本軍は、その敗因を70年間研究してきたはずだ。そしてその答えを基礎とした戦い方をするだろう。つまり今は旧日本軍時代の弱点を克服しており、侮ってかかればベトナム戦争のように戦いが泥沼化する可能性もある」と。




その他にもシーレーンがどうとか国連がどうとか他国の介入がどうと議論をしていたが、結局のところ答えは出なかった。あくまでテレビ番組なのでもしかしたら視聴率のためにあえて用意されたいた答えであったのかもしれないし、評論家たちの望まぬ答えだったのかもしれない。


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