狙撃手
だが一つだけ言えることは、彼らの言っていたことが正しいのか否かは、実際に日本軍と対峙している俺たちにさえも分からないということだ。
日本国土での交戦が始まって一ヶ月がたつが、この戦争がいつまで続くかはまるで見当もつかない。この時代に先進国の正規軍同士の戦いが年単位で行うとは考えられないが、もしかすると・・・という嫌な考えが事あるごとに頭をよぎる。
上級部隊が示している日本軍の弱点と言われといるものも、多方面からバラバラに報告される情報をパズルのように組み立てて出た答えであって、生きるか死ぬかの前線で撃ち合っている最中ににそこまでの思考ができる者など皆無だろう。少なくとも俺の部隊にそんな奴はいない。
兵士、兵器の数と質ともにロシアが勝っていることは間違いないが、だからと言ってこちら側にも当然被害が出ている。彼我損耗率で言えば日本側の方が損耗は激しいはずだが、生きるか死ぬかの際にいる兵士達にとってはそんなことなど関係がない。敵の、例えたまたま飛んできただけに過ぎない流れ弾を一発でも受ければ死ぬことに変わりはなく、戦争に勝ったからと言って死者が生き返ることはないのだから。
空母も弾道ミサイルも持たない日本がロシア本土を攻撃することはできず、我関せずを貫いているロシア国民にとって重要なのは、戦争に勝つ事よりも戦っている兵士が生きて帰ることだ。兵士の家族や恋人、友人にとってはそれが最優先であり、戦争の勝敗など二の次でしかない。
そもそもロシア国内においても戦争反対を掲げている団体の数は決して少なくない。大戦終結後の核開発、膨大な軍事力の維持、冷戦、そしてアフガニスタン侵攻。当時の国民から徴収された税は、その多くが軍事予算として湯水のごとく使われた。
国民を無視して軍事力の維持増進を進めた結果ソビエト崩壊、それに伴い国は大きく混乱した。しかも実質冷戦の敗北というおまけまでついてきたのだからたまらない。石油によって財政が潤った現在においても、ソ連崩壊を経験した者にとっては国に負担をかけてまで行う戦争など悪害以外の何者でもないのだ。




