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剣の谷の狙撃手  作者: キャップ
第三章 剣崎明人の軌跡
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剣崎明人の軌跡

赤く染まった日が西の山陰に消えつつある。そんな中、早めに運ばせた夕食を前にエフゲニーは、スプーンでもフォークでも、この地で覚えた箸でもなく、擦り切れたストラップ付のUSBメモリをその手の中で弄んでいた。


中身が何なのかは分かっている。自らが指示を出し、情報を探らせ、掴み、記録させ、食事と同じくここへ運ばせた。にもかかわらずエフゲニーはもう1時間ほどもぼんやりとそのUSBメモリを傷だらけの手の中で見つめている。


ため息をついた。


引き延ばす意味はない。


何度も頭の中で自問自答した言葉にようやく幕を引く。USBメモリをノートパソコンのポートに差し込もうとする。


差さらない。眉間に皺を寄せながらUSBメモリを回転させ、押し込んだ。


電源を入れるとここ1年ほどで明らかに大きくなったハードディスクの回転音の後に画面が点灯し、起動画面が現れた。やはりあからさまに長くなったOSのロゴを眺める時間がエフゲニーに再びため息をつく機会を与える。


やがてメニュー画面が表示されたが、やはり動きは鈍い。さらに1分ほどがたち、ポインターがマウスの動きと同調するのを待ってからUSBメモリの表示にポインターを合わせ、ダブルクリックをする。


くるくると回る砂時計の表示に呆れと不安を覚えながらIDとパスワードの入力画面が現れるのを待った。入力してはまた別のパスワードを入力するを複数回繰り返し、ようやく中のデータが表示される。


中身は100に満たない程度の画像データだった。それもサムネイルを見ただけでもわかる。ほぼすべてが同一地点から同一地点を撮影した写真の画像データだ。最初の画像を表示させ、それを流すようにカチカチとマウスをクリックしていく。


最初は馬車の写真から始まり、そこから降りる制服姿の男たち。しかし距離があるせいかかなり不鮮明だ。ホイールを回し、画像を流し見ていくと景色が変わった。二人の男が写っている。扶桑衆の制服を着た二人組だ。初めはこちらに背を向けていたが、写真データの番号が進むにつれてこちらに顔を向けてきている。


後半に差し掛かり、二人の顔写真が拡大された画像に変わる。こちらはかなり鮮明だ。年齢は30から30半ば前後。一人には見覚えがあった。過去に撮影された別のフォルダをクリックし、画面に映し出す。


こちらは決して鮮明な画像ではないが識別には十分だ。扶桑衆総長、扶桑瀧人。他の画像と照らし合わせていく。影武者である可能性は否定できないが、間違いない。数週間前にもこの場所に扶桑衆副総長、江風椿と共に現れている。小さな墓に、花を供えに。


問題はもう一人の男だ。短髪、黒髪、アジア系、中肉中背、これといった特徴のない秋津洲人だ。


また別のフォルダを開き、扶桑衆所属及びそれに近しい組織の重要人物の顔写真データを漁っていく。

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