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食べちゃイヤ!  作者: 紫陽 圭
7/17

7月の変化 (裏)

**********


 今回も、アイツは”ふわふわ”してて”トットットットッ”って感じで歩いてた。

それで、今度は、いくつかの誤解は解けたし、逃げ出されずに普通に別れたし、いきなり逃げ出さないと約束も取り付けた。




 ……と、例のごとく酒場でオンに報告。


「また声を掛けたのか。 人の忠告を聞かないヤツだな。」


 前回同様に溜息と同時に、でも苦笑しながらオンが言う。


「せっかく気付いたから、その誤解だけでも解きたかったんだ!」

「ホントにそれだけか?」

「……?!」


 それに対する俺の答えにも質問を重ね、俺は……今度は答えが判らないことに気付かされる。



「まぁ、今回はセリフを気にする必要は無さそうだな。 で、お前も、今までよりは落ち着いてたんだろ? 少しは衝動が収まってたんだよな?」

「え? ……あぁ、言われてみれば、そうかも?!」

「アホ。」

「ぐっ……。」


 言われて気付かされて……反論できない、ちくしょうっ。



「その様子じゃ、ホントに今回の分しか判ってないのか……。 しかたない。 お前が彼女に説明した通り、狼族と狼は別物だが、習性には共通点がいくつか有る。 これが『3月で”あのセリフ”』と『4月で”あの行動”』と衝動の変化のヒントだ。 そして、コレは他の点にも影響する重要なポイントだ。」

「そうか、サンキュ。」

「おうよ! いくらでも感謝しやがれ!」

「報酬としての分は感謝してやるよ。」

「授業料は別だ、アホ!」

「ちっ、ダメか。」

「当然だろ。」


 やれやれといった口調で、でも態度だけはデカいままで、オンがヒントを追加する。

さすが悪友、楽しんでる面も有りそうではあっても、ちゃんと答えてくれる。

ただ、いつでもそうなのだが、ヒントはくれても答えそのものは教えない。

 そして、今回はこれ以上はヒントも出すつもりは無い、と態度で示す。

粘るだけ無駄なので、いつもの他愛もない遣り取りが始まる。




「ところで、あの子の名前は? それ以前にお前は名乗ったのか?」

「……!!!」


 いきなり話題が戻った。 で、質問に答えようと思って、絶句。


「まさか、名前も訊いてないのか? 名乗ってもいない、とか言わないだろうな?!」

「訊いてない。 名乗ってない。」

「このトーヘンボク! そんな状態で、お前は何がしたいんだ?」

「……。」


 またしても、言われて気付く。 彼女の名前を知らない。 俺の名前も教えてない。 唖然とした。

そこへ、オンが追い打ちのように訊いてきた質問に、頭の中が真っ白になる。

……俺が何がしたいか? そんなの……あれ?



「……そうだったな、まだアレしか答えが出てないんだったな。 ま、じっくり考えろ。 そうだな、コレもさっきのポイントの影響は受けてるってことも教えといてやるよ。」


 呆然としてる俺に一声掛けると、オンは帰って行った。

伝票を俺の前においていくのを忘れないんだから、ちゃっかりした悪友だ。






 そして今夜も、じっくり考えるべく、風呂に入って、レモン水を飲む。


 『何もしないって言ったって、狼(族)だし……。』という彼女の言葉から誤解に気付き、それを解いた。 露骨に怯えなくなってたし、いきなり逃げないと約束もさせた。

それらによって浮き上がってた気分がオンとの遣り取りでスッと落ち着いてしまったけど、だからこそ色々と考えることが出来る。

 というか、そうでなければマトモに考え事が出来る状態じゃなかったのかもと気付いて凹んで、さらに少し落ち着く。


 まずは、せっかくオンがくれたヒント『狼族と狼とで共通する習性』から考えるとするか。


 そうして、俺はしばらく色々と考えを巡らせていった。

その結果気付いたことを彼女に話せるのがかなり先になるとは思いもせずに……。

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