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食べちゃイヤ!  作者: 紫陽 圭
6/17

7月の変化

**********


 ふわふわふわ……トットットットッ……ふわふわふわ……トットットットッ……

 ふわふわふわ……トットットットッ……ふわふわふわ……トットッ───ビクゥッ───


 2回目の遭遇から約3カ月、平穏に過ごせたと思ったら、覚えのある姿が……。



「見つけた! 逃げるなよ?! 誤解を解きたいだけなんだ!」

「?!」


 相変わらず大きくて真っ黒で声低くて……でも前ほどは怖くないかも?!

前回、耳と尻尾がヘタったところを見たせいかな?!



「まだ混乱してるけど、判った誤解だけは説明させてくれ。 そして、いきなり逃げ出すのだけはやめてくれ、傷つく。」


 あ、また耳と尻尾がヘタってる。



「狼族は、狼と違って生き物を食料にするために襲うことは無いから!」

「でも、『食わせろ』とか『食われろ』とか言った───」

「それは意味が違う! って、どういう意味だったやら自分でもよく分からんが、食料にするって意味じゃないのは約束できるから!」

「『柔らかそう』って言った───」

「それは髪の話! もこもこで手触り良さそうだなって思っただけ! とにかく、狼族と狼は別物だから!」

「……わかった。」


 あれ? 狼(族)相手に言いたいことを言ってるというか、言えてる?

それに、前回同様、今回も口調が……うーん。

 あ、ヘタってた耳が立った。 尻尾も揺れてる。 顔も少し緩んでる?



「とりあえず、狼族は他の種族を食料にはしないのね?」

「獣を食べることはあるが、それは他の獣族も同じだろ?」

「うん。」

「見た目からして、耳や尻尾以外はお前たちと変わらないだろ?」

「……牙───」

「獣族に噛み付くためにモノじゃないから!」

「わかった。 これが、解きたかった誤解?」

「そうだ。」

「それで、混乱してる事柄(こと)と、前の『食わせろ』とかの意味は同じなの?」

「混乱してる事柄(こと)については、考えてるうちに疑問が増えたりしてなかなか進まないんだ。」

「……考え中、なのね?」

「あぁ。」

「前の『食わせろ』とかの意味は───」

「まだ分からん。 俺も、お前に言われて初めて、自分でも意味が判ってないことに気づいたんだ。 こんなこと初めてだし、気付いたのもつい先刻(さっき)なんだぞ?!」

「あ……そういうことなのね。」

「で、自分でも分からないことは説明できないってことなのね?」

「ああ。 わかってくれて嬉しい。 これで少し安心した。 ……で、いきなり逃げるのはやめてくれるか?」

「うん。 前よりは怖くなくなったから。」

「良かった。 それじゃ、またな。」


 うわぁ、笑顔だ! それに、耳と尻尾が少し元気になったみたい。

ホントに気にしてたのね。 で、安心したのね。 狼(族)さんって、意外と分かりやすい。

羊族はあんなにハッキリ耳や尻尾に感情が出ないからね。


 あれ? 今日は私が逃げ出す前に狼(族)さんが先に帰って(?)いった?

 というか、私、前ほど ”逃げなくちゃ” とは感じなかったかも?!

うん、『……ぃやぁーーーーーーっ』って叫ぶほど怖くはなかったよね。

『食べられちゃうのはイヤぁーーーーーーっ』 って心配は要らないと判ったし?!

 そもそも、狼(族)さんも前までと今日とでは何かっていうかどこか違う気がするの。

でも、何が、とか、どこが、とか、私も判らないのよね、うーん。


 ……気にはなるけど、今日の用事は済んでることだし、帰ることにしようっと。

逃げたり叫んだりしないで帰れるのっていいよね、普通はそれが当然のはずなんだけど。



ふわふわふわ……トットットットッ……ふわふわふわ……トットットットッ……

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