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食べちゃイヤ!  作者: 紫陽 圭
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4月に再会 (横)

(閑話なので読み飛ばしても大きな支障は出ないハズです。)

**********



 最初に話を聞いたのは、3月。 それが、あの子にとって最初の出会いだったはず……。

あの子が”もこもこ”で”トテトテ”歩いてた時期だったから、見るからに抱き心地が良さそうで可愛かったとは思うのよ!? そうでなくても、いつでも、どんな状態でも可愛いんだけどね!?

だから、見る目の有る男が声を掛けても当然なんだけど、なんで相手(それ)が……。


 あの子の話す、『大きな大きな黒い狼(族)』で『ぶっきらぼうで不機嫌っぽい低い声』に当てはまるのは、私の心当たりではただ1人。

……で、その本人は良いのよ、いえ、私からあの子を奪うかもしれないなんて良くないけど!

それ以上に、その幼馴染にして悪友が大問題なのよ! 性格も口も態度も最悪なんだから!


 それに、本人にしても、声を掛けて来たのが ”3月” の ”町の中” ってのが気になるのよねぇ。

初対面の女の後ろ姿に、その背後から(ほぼ確実に)衝動的に、”狼族” が声を掛けた?!

しかも、『お前を俺によこせ!』? 『俺に食われろ。』? 『食わせろ。』?

 あの子は純粋だし、他の種族のことはまだあまり知らないし、とにかく怖かったらしいから、言葉を表面通りに受け取ってるんだけどね。



 ……そんな出会いの話を聞いた当時、もう少し様子を見ようと思ったのよね。

私の予想のどこかが違ってる場合も有り得ると思ってたから……というか違ってると思いたかったし!?

だって、怯えて、ぴるぴると震えながら、涙目で、囁くような声で話すあの子が可愛かったから!

それでも『お姉ちゃん、あのね』って必死で話してくれるのが、可愛くて仕方なかったから!

慰めて、励まして、ついでに甘やかして……そう出来ることも嬉しかったから!

あの子の可愛さを堪能してたら、私としたことが、ちょっと読みを外してしまった……。






 ───そして、今日、また、あの話題を聞くことになるなんて……!

今は4月。 秋から伸ばし続けた髪を切ったあの子は、”ふわふわ”になって”トットットッ”と軽やかに歩いて、3月の ”あの時” とは違う可愛さにあふれてる。 だから今だって、見る目の有る男が声を掛けても当然なんだけどね……。


 『また会うなんて、それも声を掛けられるなんて、予想してなかったもの!

なんで、わざわざ声を掛けてくるの~? 私、何かした?』

っていうのがあの子の気持ちだったらしいけど、前半についてはすっごく同感だわ!

とは言っても、私のほうは『予想してなかった』のではなく『予想が外れてほしかった』だけど。


 だって、まだ ”4月” なのよ! 出会いから1カ月とかでなく、”4月” !

で、今回も、”町の中” で、1回少し話して逃げられた女の後ろ姿に、その背後から(ほぼ確実に)衝動的に、”狼族” が声を掛けてる。

その『大きな大きな黒い狼(族)』は、やっぱり予想通りの相手みたいだから……。

 あの子が相手の第1声めから感じた通り『ぶっきらぼう』で、異性に気軽に声を掛ける男ではない。

そんな男が───謝るのはホントの目的ではなかっただろうに───わざわざ話し掛けるなんて……。

あの子みたいな可愛い子を驚かさせたら謝るのは当然だし、それが出来ない男でもないけれど。

『俺もいまだにワケわからなくって』ってのは微妙ね、あの男はそれなりにモテるはずだから。

『露骨に怯えられると傷つく。』と『耳と尻尾がヘタった』は……深く考えたくないわ。


 それにしても、『耳と尻尾がヘタった』とか『ホントに困惑してるっぽい』とかで『ちょびっとぐらいは狼(族)さんに慣れたのかも?!』って考えるなんて、あの子ってば天使!

ホントに純粋に真っ直ぐ育ってくれて、可愛い!


 あの男は、モテるくせに無自覚で、たぶん自分から女を口説いたことなんて無いだろうから、美容とかについては知らなくても納得だけど。

 あの子の毛がキレイだからって、髪の長さが変わったのに、よく後ろ姿で気付いたわよね。

……これも、イヤな予感の理由の1つ、ね。

 匂いも変わったと感じたらしいのに……って、これ、狼族(などの嗅覚の鋭い種族)でなければ変態っぽいわね。

前回の短い出会いだけで、変化が判る=前回の匂いを覚えてる、ってのもナンだけど、狼族だし?!

……いえ、いくら狼族とはいえ、普通、約1カ月経っても比べられるほど覚えてるものかしら?!


 しかし、『柔らかそう』は笑えるわね。

確かに、あの子は毛も柔らかいわよ!? 抱き心地も良いけど、そんなことはあの男は知らないはずだし、知らなくていいのよ!

それが、あの子にかかると食肉としての評価になるなんて、あの男も予想外でしょうね。



 ともかく、”3月” と ”4月” に ”町の中” で会って、”あの男から” 声を掛けてる。

その結果、あの子が───あの男の本性に気付き───少し警戒を緩めてる。

 それに、あの子の話での様子からして、あの男は例の幼馴染(アイツ)に全部話してるわね。

ってことは、アイツは、あの子自身ではなくとも、あの男で楽しむための興味は持ったはず……厄介だわ。

関わらせることはもちろん、興味を持たせることも避けたかったのに……!

 アイツが直接あの子に関わることは無くても、あの男がアイツの影響で何かやらかす可能性は有るのよ!

まぁ、誰であろうと、あの子を傷つけるような真似は絶対に許さないけどね!

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