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秋桜 -ZERO-   作者: 七地
10/10

side:寛貴


明日の準備で忙しいオレを呼び出したコイツはさっきから煩い。


「…実は後悔してねぇ?」


「してない」


「急がなくても…」


遅いくらいだ。


「…急いでない」


テーブルにジョッキを置くと頬杖をついてオレを見る拓弥に苛ついた。


「何が言いたい?」


「……あのクラスの美人には滅多に会わないけど…それでも、一人に束縛されるなんて」


「おまえと一緒にするな」


順当に資格をとったがオレ的には面倒でまどろっこしい制度に業を煮やした。


「でも、お前らしいかも…勉強しながら金稼ぎもして結婚もするなんて」


資格試験の勉強のストレス発散で始めたFX。

今はやっていないが、かなり稼ぐことができてそれを元手に生活基盤を整えることができた。


「よく許してもらえたよな…」


「…」


「だっておまえ、まだ正式に…」


ジョッキで殴ってやろうと、大ジョッキを持ち上げたらやっと黙った。


「…何回も話をしたんだよ。体の事だけじゃなくメンタル的な事とか…金銭的な事も…」


面倒な制度のせいで、オレは正確に言うと社会人としての稼ぎがまだない。

それに引け目はあったけれど、社会人として働く梨桜を支えて一緒にいたいと強く思った。


二人で話し合うだけじゃなくイギリスにいる親父さんに会いに行った。


煩い男達を振り切ってオレが一人で訪ねて行くと、親父さんは驚いていたけれど、事情を説明したら大笑いされた。


初代もシスコンな弟も早すぎるだとか理由なんかなく駄目だとかゴチャゴチャ言っていたが、親父さんがアッサリ許可して保証人の欄に署名してくれた。


理由を聞いたら、『梨桜がオレの事を話す時は幸せそうな顔をしているから』そんな事を言われた。


イギリスに行ったのが3ヶ月前。


親父さんが帰国してオレの両親と会ってくれたのが一月前で、略式の結納をし、渋々結婚を許した初代とシスコン二人は『泣かせたら速攻で沈める』と脅してきた。


…ついでに言うと五代目にも泣かせたらコロスと脅された。


「人妻か~エロい響きだよな」


“ゴスッ”


鈍い音が響き、拓弥は頭を両手で抱えて机に突っ伏した。


「ひでぇ……」


「言うな。穢れる」


突っ伏したまま顔をこちらに向けて上目遣いに涙目で睨まれても恐くもなんともない。


「…寛貴…おめでと」


最初からそう言っていれば痛い思いをしなくても済んだのにコイツは相変わらずだ。


「幸せになれよ」


「ありがと」


明日はオレと梨桜の結婚式。


…二人で幸せになると決めた。



ここまでお付き合い頂きましてありがとうございました。

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