10.山姥切長義と山姥切国広
※BGM 無音
※場所 鬼女の家【ウラ】水鏡の間
【山姥切】
……行ったか。
待つしかないというのは、中々歯がゆいものだね。
【キリクニ】
…っ……うっ、ぁ。
※山姥切 キリクニを抱き締める
※BGM 雪の降る夜
【キリクニ】
な、山姥切!
お前、何やって……ッ!
【山姥切】
何って、お前の霊力を貰ってるんだよ。
あっちの俺に渡し過ぎてしまったからね。
【キリクニ】
馬鹿言うな! お前だって、分かってるだろう!
俺の霊力には瘴気が混ざってる! そんなものを取り込んだら――!
【山姥切】
俺もお前と同じように化け物になる、って言うんだろう。
けどお前、もう限界だろう。
こうすれば、あいつらが鬼女を倒すまでは持つんじゃないか?
【山姥切】
……ッ!
【山姥切】
(熱した鉄の棒が、腹の中をかき混ぜていくみたいだ。
内側から破壊されているのが、はっきりと分かる。
ある程度は覚悟していたが……これは思ったよりキツイ、かな)
【キリクニ】
俺が化け物になろうがなるまいが、どの道消えるんだからいいだろう! 離せッ!
【山姥切】
そんなに嫌なら、俺を引き離すか逃げればいい。
最もお前は俺に触れられないし、そもそももう動けないだろうけどね。
【キリクニ】
……。
【山姥切】
別に、お前のためじゃない。
俺達はあの二人みたいに仲良くはなかったし、だからと言って険悪というわけでもなかった。
俺は山姥切国広という刀に対して色々思うところはあったけど、お前自身には興味なかったんだ。
正直お前が化け物になることすら、俺にはどうでもいいことだった。
けどこのままじゃ、あの鬼女に負けたみたいで悔しいだろ。
――だからこれは、俺のためだよ。
【キリクニ】
……馬鹿だな、お前。
どうでもいいなら、とっとと見捨てればよかったんだ。
そうすれば、あいつらみたいに幸せになれたのに。
[テキスト]
山姥切国広はそう言うと、今まで堪えていた全てを吐き出すように泣き崩れた。
顔を覆った手のひらから、瞳と同じ翠色の涙が零れ落ちていく。
それは床の上で冷えて固まり、宝石になっていった。




