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魔の手はゆっくりと

村から出発した俺達は、そのまま次の村を目指して進んでいた。

次の村を越えれば、魔族の拠点があるのだ。

そこを突破するためにも次の村では落ち着いて準備できればいいのだが。

「次の村までどのくらいで到着出来そうなんだ?」

「このペースで行けば後三日というところでしょうか」

「まだそんなにかかるのか…」

「かなりのハイペースで進んでいますから疲労もたまっていると思いますが、なにより…」

「腹、減ってるもんな」

前の村で仲間との絆が深まったと喜んでいたのだが、それどころではない事が分かったのだ。

窃盗団騒ぎのあった街と追い出された村とはあまり距離が離れていないため、街をでる時に

食料を少なめに購入し、村で改めて補充しようと考えていた。

しかし、あの騒ぎで村で食料の購入ができなかった。

そのため現在は狩りをして空腹をしのぎながら進んでいるのである。

まともに食料も無く、ハイペースで進んでいるため疲労の蓄積も早い。

急いで移動し、村で休息したいのだ。

(もう一つ気になる事があるんだけどな…)

村を出て以来ずっと顔色の悪い回復役を横眼で見ながらまた一歩進むのだった。



「…はっ!」

ようやく見つけた獲物を狩り何とか食事にありついた私たちは、そのまま寝てしまった。

仲間の皆も寝ている。

魔法使いの使う結界魔法により、見張りを行わずに休めるのは私たち勇者一行の特権ともいえるだろう。

(またあの夢だ…)

村人たちに囲まれて石を投げられる夢。それは本当にあった事だ。でも夢ではそれだけじゃなかった。

村人皆の顔が、村長さんの奥さんの顔になっているのだ。

私たちが来たせいで亡くなってしまった奥さんの顔に。

こわかった。痛かった。何度も何度も石を投げられて、お前のせいだと責められた。

現実では勇者様が助けに来てくれた。でも夢では一度も助けに来てくれなかった。

夢だから当然なのだ。そう、あれは夢。

(それでも怖いのです。もし本当にあなたに捨てらてしまったら私はどうすれば…)

回復薬が手元にない今、回復魔法が使える私しか皆の手当てを出来る者はいない。

でも、私たち魔法を使う者は眠らなければ魔力が回復しない。

このまま悪夢にうなされ続けて、いつか魔力の回復ができない日が来てしまったら。

いつか回復魔法が使えない時が来てしまったら。

私はどうなるのだろう。夢の中のように私は勇者様に助けてもらえないかもしれない。

役立たずとして捨てられてしまうかもしれない。


(最後にはあなたの盾となります。ですからどうか捨てないでください)


もう少ししたら朝が来るだろう。そうしたらまた急いで移動しなければならない。

皆についていけるように少しでも体を休めておかなければ。

でもきっと、また夢を見るんだろうな。





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