12 記憶
当面の目標はあのスライム討伐だが、いかんせん全裸であれに勝てる気がしない。
武器や防具、何か攻略のヒントになるようなものがあるかもしれないと思い、下半身を大きめの葉で隠して港町ネシアに向かっている。
周囲の視線は痛い。
こちらを指さしてヒソヒソと話しているものもいるが、街道にて全裸のハッパ男に声をかける者もなく、無事ネシアに到着。
城壁も門番もなく開放的な町だったはずのネシアだが、町の入口で騎兵隊が数人いた。
「ふむ、全裸で街道を歩くとはどういうわけだ?盗賊にでも襲われたのか?」
騎兵隊の中でも一番若年の男が声をかけてきた。
「はい。実は山中にて突然襲われたようでして、後ろからの襲撃でしたので記憶は無いのです」
「なるほど。ちょっと待っててくれ」
若年の男が後ろに控えていた他の騎兵隊と話始めた。
「例の山賊の生き残りに遭遇し襲撃を受けたようですが、記憶が無いと言っています」
「襲撃場所や犯行現場、経過時間などを推測して山賊の行方を特定出来るかもしれん、詰め所へ連行して詳細を聞くように」
「はっ」
若年の男が戻ってくると俺を引き連れてネシアの町内に入っていった。
そして見覚えのある酒場へと入っていく。
中は騎兵隊の事務所と化しており、以前アミーなどが働いていた明るく賑やかな雰囲気は微塵もない。
「まぁ、座れ」
差し出された椅子に座り、まずこちらから気になる点を率直に質問する。
「えっと、ここは酒場のようですが?」
「ああ、現在原因不明の奇病がこのネシアで発生してな。現場でもあるこの酒場が原因究明の為の臨時の詰め所にもなっている」
「え?奇病!?ここは大丈夫なんでしょうか?」
「ああ、どういう事なのか現在調査中なのだが、奇病は収束に向かっているようだからな、新たな感染者の報告も無いし安全だと思うぞ」
「えっと、どういった奇病なのでしょうか?」
「突然、肉体が崩れ出す恐るべき奇病だ。数秒前まで元気に快活だった者がある時前触れ無くグズグズと肉がとろけ落ちて骨だけになっちまう、しかも何かトリガーがあるかのように街中の感染者と思える人間が同時に崩れ落ちた。だから我ら騎兵隊がその原因究明の為に王都より緊急配備されたわけだ。先日は近くのゾニの村で村人の怪奇な暴動が起きたとも言われている。そちらとの関連性も含めて近隣全体へ大規模な捜査が行われているのだ。さて、ではこちらから質問だ。まずなぜ森に入ったのか、襲撃を受けた時間、ネシアへ来た経緯などを分かる範囲で話してくれるか?」
オイオイ…眷属達全部崩壊かよ…
肉体崩れて白骨化ってインパクトある散り方してるなぁ
ちょっと期待して来てみたが、眷属たちが既にいないだろうことは想像していたけれど、こんな大事になっているというのは予想外だった。
「とにかく森の近くの街道を歩いている時に突然森に引きずり込まれて後部から殴り倒されたので…その後は目隠しをされて…裸にされて…えっと、、全部話さなければならないでしょうか?」
思わせぶりな話から察してくれたのか、尋問の担当者も若干狼狽した顔で俺の顔を見つめている。見つめ返すとバツが悪そうに視線を逸らされた。
「いや、話せる範囲で良い。その…大変だったようだな」
「まだ、歩いたりすると身体のアチコチに痛みが走ります、詳しく思い出そうとしても思い出そうとすると気持ち悪くなってしまうんですよ。襲撃以前の事までうろ覚えで、正直自分が何処の誰なのかも分かりません。気づいた時には全身が汚れていたので川で身を清めて、なんとか街道を歩いてこの町にたどり着きました。でも、開放して頂けるのに必要ということでしたら、数日、もしくは数ヶ月かかるかもしれませんが吐き気と闘いながら思い出してみますが…」
「あ、、いい、もういいわ。悪かったな、記憶…戻るといいな…」
「はい、ありがとうございます」
「あ、ちょ、ちょっと待ってろ」
しばらく待っていると尋問官が古びた衣服と持ってきてくれた。
「さすがにその格好で町をうろつくとまた良からぬトラブルに巻き込まれそうだからな、こんなものしか用意できないが今よりはマシになるだろう」
「おお!ありがとうございます」
大げさに感激してお礼をしておく。
「あの、、、厚かましいお願いなんですが身ぐるみ剥がれてしまって一銭も無いのです。お仕事何かありませんか?」
「なるほど、身元の証明が出来るものもないとなると、冒険者ギルドにでも行けば何かあるかもしれんな、よし案内してやろう」
「ありがとうございますっ!」
なかなか親切な男のようだ。




