第55話 13人の勇者と、水の精霊
獣王パークの戦いから3日後。
人間国に帰還したトムとヴァルベンとキッカは、人間国の首都・アレスマーティにあるこの国最大の拠点であり。そしてシンボルのキャッスラーで、戦導寺に獣王パークでの事を話していた。
「そうかそうか、悲劇をあげちゃったんだ」
「すみません。私では使いこなせないというか、装着者として認めては…」
「私も責任です!故に……」
キッカも頭を深く下げて謝罪するけども、戦導寺の口から出た言葉は。
「まぁ、仕方ない。諦めるとしよう」
たったそれだけであっけなく許してくれたのだ。
「あの…普通でしたら、なにかしらの罰を与えるものでは?」
「別に、君達さえ無事なら大丈夫だし。それにとっくに悲劇のデータは取りたからね」
「そういう問題じゃあ?」
呆れるトムであったが、その時。
「相変わらずだな元帥?」
「この声は?!」
いきなり何処からか声が響き渡ったりすると、戦導寺の影からヘルメットを被った忍者サイボーグが現れた。
「兄さん!」
「おかえり、キッカ!」
この忍者はキッカの兄で同じくサイボーグ勇者の桜刃兵羽。
そして戦導寺の護衛隠密でもある。
「だけど、少し興味深い話だな?2つの心の鎧甲を使いこなせる奴が2人も」
兵羽がヘルメットを脱ぐと、その顔には大きく痛々しい傷があり。そして心の鎧甲を2つ使える野田とグレスに興味を持つ。
「んでキッカ、その妖怪と精霊で分かったことはないか?」
「そんな急に言われても…」
どう説明すればいいのか分からずにキッカは、言葉を積らせてしまうと突然扉が開いた。
「よぅ!元気?」
「健吾!」
銀髪で後ろをポニーテールにした青年が入って来た。彼は3師団・隊長で、トムの同僚の谷本健吾である。
「健吾、アナタはなにしに?」
「おいおい、同僚が帰って来てるなら、出迎えるのが普通だろ?」
「いやでも…そんないきなりでは」
少し頭を抱えてため息を吐いてしまうトムであったが、そんな時。
「帰ってきたらしいな?キッカとヴァルベンも」
「ほ~~~土産話はあるだろうな?」
「それは楽しみですね、師匠!」
「……うん」
「でも、3人共きっとお疲れですよ?」
「なぁに、若いもんはこれくらいなんて事ないじゃろ?」
さらに追い討ちをかけるかのようにと、部屋に流れ込むかのように人が入ってきた。それは金髪で顔の右側と目がスコープで右腕がライフルの青いノースリーブジャケットを着込んだ青年と、刀を持って浪人風の着物を羽織った不精ひげに浅黒い肌の中年と、ポニーテールに凛々しい感じで同じように着物に刀を持つ美少女と、全身格闘用のアーマーを着込んで左腕がゴツイ機械のアホ毛が目立つ無口な美女と、優しげな雰囲気の黒髪ロングヘアーで左目が機械で露出の高い神子装束の巫女風美少女と、さらに白髪と髭を生やした全身ジャージの老人の、合計6名のサイボーグだった。
「お前らは!」
「全く、次から次へと僕の部屋に集まってきて……」
「なんじゃ、せっかく勇者が集結したというのに」
この6人はナダレや兵羽達と同じサイボーグ勇者。
金髪の青年はライフルによる射撃を得意とする警察サイボーグのレッバス・ガンク。
浅黒の中年は居合から抜刀までの剣術を使う剣豪サイボーグの近藤マサル。
ポニーテールの美少女も剣術を使い近藤の弟子である剣豪サイボーグの沖田ヒカリ。
アホ毛の美女は格闘術をインプットされた格闘サイボーグのキュリー・ティーク。
ロングヘアー美少女は脳の八割をコンピューターにした巫女サイボーグの龍鳳門凛音。
そして小型の特殊機械を全身に埋め込んだ程度だが、キュリス以上に中国拳法を得意としたサイボーグ老人の最場つよし。
「それで、心の鎧甲を使いこなせていた2人っていうのは?」
「鬼と精霊だが、その鬼の方は使って日が浅く見えたんだが」
「なるほど、つまりお前の言っている鬼というのは、おそらく俺の息子だな?」
さらに黒い白衣風の上着を来て顔を含めた右半身を機械化したサイボーグの鬼も現れた。
「息子って、アンタに息子が?」
「まぁな。俺のとびっきりの息子だし」
「ほぅ~~~?随分と面白くなってきそうだな、魔玄?」
この鬼こそが妖怪一の科学者で医者で、そして野田の実の父親の魔玄康哉。
今は人間国の科学技術本部の本部長と研究開発主任兼、人間国中央大病院の院長兼、サイボーグ勇者の1人でもある。
勇者が10人集結している頃、アレスマーティから遠く離れた先の、丁度国境近くの町にある小さな教会。
その教会に足を運ぶ2人が居た。
「シスター!シスター!」
「おーーーい、シスターはやて!いるの?」
その2人は北金と琥珀であり。彼らが教会の扉を叩きながら、シスターはやてという人物の名を呼んだりしてると、突然扉が開いた。
「なによ?いきなり…」
出てきたのは口にタバコを咥えて、片手にコーヒーの入ったカップを持った、翡翠色の髪が特徴のシスター。しかしこのシスターはやてなる女性は、見るからに柄の悪い目をしていて、はっきり言って北金以上にチンピラに雰囲気であった。
「ナダレを連れてきたんだけど」
「ああ、アイツね。どうせだったら家賃を払えって伝えといてね」
「「はいはい」」
じつはナダレは現在この教会で、居候兼用心棒をやっていた。
そして2人は教会の裏庭に行って見ると、そこには花畑と野菜の畑と、さらにオンボロな小屋もあった。
「ナダレ、いるかな?」
「いるに決まってんだろ。ほら、入るぜ」
北金が先に小屋の戸を開けると、そこにはエロ本とエロ雑誌とビールの空き缶が散乱して、衣服も散らかしてテレビもつけっ放しの部屋。しかも昼間なのにベットでいびきしながら、だらしなく眠るナダレ本人の姿。
「思ったとおりだぜ…コイツの過ごし方」
「いつ見ても、酷い私生活ね」
その光景に北金も琥珀も呆れて大きくため息を吐く。
しばらくするとナダレが目を覚ました。
「んん…2人共、なにしてんだよ?」
「お前を向かいに来たんだよ?」
「と言っても、あっちはもう終わってるかもね」
「ああ、そう」
ナダレがベットから降りると、そのまま洗面所で顔を洗って、寝巻きから普段着に着替える。最後は帽子とグラサンとコートを身に着けて、2人と一緒に小屋から出た。
「そうだ、シスターから家賃払えって」
「またかよ…無視無視!!」
「おいおい、結局堪能する気か?」
「だってさぁ、ん?」
家賃を払う気が更々ないナダレであったが、花の水やりをしていた6人の子供達が近づいて来た。
彼らはこの教会の孤児院に住んでいる子供達であった。
「ナダレ、また家賃を払わないんだね!」
6人のリーダーらしき赤髪の活発そうな少女がナダレに厳しく質問した。
「いきなりの言葉はそれかよ!こっちも色々とあるんだよ!」
「色々って、どうせ酒やキャバクラとビキニカフェだろ?」
「本当エロの塊ですわね。麒麟の癖に」
「うるせぇな!さっさとあっち行け!!」
「「「「「「へ~~~い」」」」」」
ナダレは大きく怒鳴り散らすので、彼らは適当に返事をして立ち去った。
「全く、なんであんなクソガキを住まわせて置くんだよ!」
「仕方ないでしょ?彼らは孤児だからね」
「お前も孤児院の為に家賃払っとけよな」
結局北金と琥珀からも文句を言われてしまい。ナダレのストレスが溜まっていくので、彼のとった行動は
「しょうがない!」
「やっと決心したか?」
「もちろん、今回はブルマカフェ!」
「「お前なぁ!!」」
全くエロな事しか考えていないナダレに2人は盛大に扱けてしまうのであった。
一方その頃、グレスの故郷フェアリーアイランド。
かつては日本の東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・静岡・山梨・群馬・栃木・長野・福島・新潟と呼ばれた場所で、現在は12の都道府県以外は殆んど海に沈んでしまった。
その町並みは辺り一面草やコケや蔦まみれの廃墟になっていたけれども、精霊達は自由気ままにのんびりと暮らしていた。
そしてこの国に戻ってきたグレスは、ある研究施設らしき建物の前に着いていた。
「アイツは…野田はこの先も恐らく強くなる。ならば私も!」
そのまま建物に入るとなぜか自動的に証明が着いたりしたが、じつは精霊達が一部の電力システムを修理したり、こういった重要な建物のシステムとかもまだ生きていたのだった。
グレスはすぐにエレベーターに乗り込むと、懐からカードを取り出してパネルに差し込んだ途端。そのまま一気に地下深く下がっていき、そして目的の階に到着して扉が開く。そこにはおびただしい数のカプセルが並んでて、中には保存液らしきもので保管されたアーマーが入っていた。
「さてと、この私に合いそうなのは?」
グレスはカプセルの中のアーマーをどれにするか選んでいた。
しかし100以上のアーマーから、自分と相性の合うのを探すのは至難の業に近いもの。
「これだ!」
だが、ついにグレスがそのアーマーが入ったカプセルの前に立つ。
さっそくパネルを操作しカプセル内の保存液を抜いて、そしてカプセルが開いた。
「今日から私が、お前の主人だ」
アーマーに手を沿いてボタンを押した途端。いきなりスマホのような小型機械に変わったが、グレスはそのまま懐に締まってエレベーターに乗り込んだ。
「さてと、アイツに見つからない内に…」
じつはグレスが故郷に帰ってきてからは、落ち着きを感じられず。エレベーターの中でソワソワしながらも、1階に到着して扉が開いた瞬間。
「見つけた!」
「げっ!?」
エレベーターの外には水の精霊らしき女性が立っていて、グレスはなんとも間の抜けた感じに声を上げてしまう。
「レイホス!?いつから?」
「アナタがこの研究所に入ってすぐにです!」
グレスは冷や汗ならぬ冷や蒸気を出してしまう程慌ててしまう。
そしてこの水精霊の女性はグレスの保護者兼幼馴染のレイホス・ハンク。
「久々に帰ってきたと思ったけど、まさかこの聖域に足を踏み込んでいたなんて!?」
レイホスはグレスのマントを掴みながら、そのまま彼を研究所の外に連れ出しながら叱り続ける。
フェアリーアイランドに多数存在する研究施設は聖域と呼ばれており。此処に保管されているデータや発明品などは、世界中の科学者や研究者や発明家にとって喉から手が出るほどの宝であった。
「別にそんなの良いだろ!私の勝手だし…」
「良くないよ!グレスが各地に封印された傲慢と歓喜を手に入れただけでも危なかったのに…今回はこの聖域に眠るアーマーに手を出すなんて!!」
「うう…だから見つかりたくなかったのに」
いつも冷静沈着でクールなグレスにでも唯一の弱点がレイホスであり、その心配性で完全保護者的な彼女にもうタジタジであった。
「ほら!グレスは今お尋ね者だから、私の家でね?」
レイホスの言うとおりグレスは、聖域と言う名の研究施設に入り込んでは、色々と盗んだり壊したりしているので指名手配されてる身だった。
「悪いが私はもう行くから、ほら!」
グレスはさっきのカードキーをレイホスに渡すと、そのまま火の羽で猛スピードで逃げた。
「ちょっと待ちなさい!!」
すぐさまレイホスも両足から水を発射して、ロケットのように飛んで追いかけようとしたけども、結局見失ってしまう。
「全く、本当に自分勝手なんだから…」
仕方なくレイホスは地上に降りて、カードキーを元の場所に返しに行くのだった。
だけどもグレスは、じつは別の場所で隠れながらその様子を見ていた。
[悪いけど…私は進むしかないんだ。強さと修羅を]
そしてレイホスを見届けながらも、グレスは空を飛んでどこかに向かうのだった。
人間側と精霊側で話を進めてみました。
ついに勇者が勢揃いして野田の父・魔玄康哉も勇者となっていましたが、ナダレの普段の私生活は酷いものです。
そしてグレスも新しい力を得たけども、幼馴染の水精霊レイホス・ハンクが唯一の弱点でしたね。
次回はちゃんと野田達に入ります。




