番外編6 ホルの里帰り
モンスターゾーンの正月。
と言っても妖怪達はただのんびりとおせちやお餅を食べたり飲んだりと、または年賀状が届けられたりしていた。
ここ野田家でも。
「ほら、秋。お年玉」
「大事に使いなさいよ」
「あけましておめでとう!」
野田と優とソロリックは、秋にお年玉を上げたりした。
「さぁ、早くおせちを食べましょう」
「そうだな!ソロリックお手製だからな!」
「たくさん食べてね♪」
全員はさっそくおせちを食べようとしたその時、呼び鈴が鳴った。
「ん?なんだ、こんな時に?」
せっかくのおせちを後にして野田は、玄関に行き扉を開けると、なぜかホルとホロが立っていた。
「何しに来たの?言っとくが、ホロのお年玉は用意してないけど」
「そうじゃないけど…ちょっと相談したい事が…」
「とりあえず、家に入れよ。おせちでも食べながら聞いてやるから」
野田はホルとホロを中に入れておせちをご馳走させた。
もちろん2人の分は冷凍させた後で。
「んで、一体何しに来たの?」
「じつは…この後母方の家に里帰りに行かなきゃないないんだ?」
「里帰りに?なら良いんじゃあ?」
「それがダメなの…」
「ダメって、なにが?」
するとホルがさっきよりも暗くため息を吐く。
「なんていうか…ちょっとそこの親戚が苦手なんだよね」
「親戚?」
「僕達兄弟の従兄妹なんだけど…兄ちゃんはその人が苦手でねぇ。会う度に兄ちゃんは精神を削られて大変なんだ~~~」
ホロもその親戚が苦手のようで頭を抱えたりする。
「それで…俺に尋ねてきた理由ってまさか?」
「うん、一緒に来てくれないか!」
「やっぱりかよ!」
野田は2人の考えている事が当たってしまい、ホルのようにため息を吐くのであった。
「僕らだけじゃ心細いから、お願い!」
「無茶言うなよ!なんでせっかくのお正月で、アンタらの里帰りについて来なくちゃならないの!!」
「だって、君達しかお願いできないんだもん!!」
いつもは少しクールなホルだったが、泣き出しながら抱き着いてきた。
だけど、氷水のように冷たい体温と涙なので野田の身体は冷えてきたので、最早限界になってしまい。
「分かったから離れろ!風邪引くから!!」
「ありがとう。本当に」
「割り込んですみませんが、私も行ってもいいですか?」
ソロリックが自分もついて来てもいいか頼んだ。
「ソロリックさん!?」
「だって、ホルさんの故郷見てみたいから」
「じゃあ、私も!」
「秋さんも!?」
秋までも言い出した。
「ちょっと、秋!いきなりなに言い出すの!?」
「教えとくけど、彼らの故郷ってこの国で三番目に危険なところよ!!」
当然優と岬は危ないので2人を行かせないようにする。
「大丈夫!野田さんがいますから!」
「それにこの2人から、安全に行ける方法があるかもしれないんだよ!」
「「お願い!!」」
2人の必死なおねだりに優と岬はつい負けてしまう。
「負けた…でも進!」
「はい?」
「2人を絶対に守りなさいよ!!」
「分かってるって!」
野田達3人はホルとホロの里帰りに付き合った。
氷魔山。
一年中雪が降り続ける危険な山だが、何を隠そうこの山こそがホル達の母親の実家であった。それからホル達の父親は隣町出身のジャックフロストらしい。
そんな山を登る連中が居た。
「ほら、早く早く!もうすぐ村だから」
「もうすぐって、どの辺り!?」
それは完全防寒姿の野田とソロリックと秋と、いつもと変わらない格好のホルとホロであり。
辺りはホワイトアウトになっていて、氷真兄弟以外にとってはとても危険な状態になっていた。
「野田さん…寒すぎて感覚が!?」
「目に雪が!痛いよ!!」
ソロリックも秋もこの危険すぎる道中に訴える。
「なぁ!村は何処だ?!」
「なにぃ!聞こえない!?」
「村は何処!?」
「なにぃっ!!」
「だから、村は何処!!?」
あまりの大吹雪で声が聞こえず大変だった。
「村?もう中だよ!」
「え?」
すると吹雪が晴れると思ったら、かまくらの形をしたシンプルな建物が特徴の村に、いつのまにか野田達は入っていた。
「ゴメンね。さっきの吹雪は村に余所者を近づけさせないようにするものなの」
村人は全て雪であったが、ほとんどがジャックフロストで、人間型は数える程度しかなかった。
「本当に雪だけの村なんだね」
「さぁ、あっちがお祖父さんの家だから」
「ちなみに、この村の村長なんだ!」
案内されて村長の家に到着した。
「ただいま!」
「あら、ホルくんにホロくん♪」
扉を開けた途端、黒髪長髪の大和撫子という言葉が似合うほどの、美しい人型雪の女性が現れた。
当然、野田とソロリックと秋は驚く。
「綺麗な人!」
「凄い美人だね…」
「なぁ、この人は?」
「この人はクームさん。母の妹だから、僕達兄弟の叔母さん」
「あらあら、お客様とは珍しいです♪私は冷帆クームです。甥がお世話になっております」
礼儀正しく野田達にお辞儀するので、3人は少し戸惑ってしまう。
「どうも、別にお世話なんて…」
「そうだよクームさん。僕は別に」
「あっ!ホルだ!」
「ホロだ!」
「ホルとホロだ!」
すると小型ジャックフロストが、3体も無邪気に現れた。
「この子達は?」
「私の三つ子の子供で、ムタとムテとムト」
「「「どうも、あけましておめでとうございます!!」」」
氷真兄弟の従兄妹であるムタとムテとムトは野田達に元気よく挨拶した。
「ねぇ、遊ぼう!」
「遊ぼうよ遊ぼうよ!」
「早く遊ぼう!!」
「あはははは、弱ったねぇ」
3人はホルに遊んで欲しいのか、足に抱き付いたりする。
「まさか、ホルの苦手な従兄妹って、これじゃないよね?」
「いや…苦手なのは3人の……」
「ホルくんが来たって本当!?」
「ひっ!」
その時、奥の部屋から大声が響き渡る。ホルか何かに怯えた表情に鳴り始めると、誰かが廊下を走ってくる音が響き渡り。
「きゃああああ!ホルくんだ!ホルくんだ!」
いきなり出て来たのはクームと同じ黒髪長髪だけど、落ち着きや大和撫子な雰囲気はなく、とても活発という雰囲気をした人型雪の可憐な少女であった。
そして現れたと思ったらムタとムテとムトをホルから引き離して、そのまま抱きついてきた。
「可愛い!相変わらずの完璧な男の娘!サイコーーー!!」
抱き締めて頬ずりしてながら、ホルの身体を触りまくる。
当然ホルは必死で逃げようとするが、彼女の力が強くで逃げられずに居た。
「あの人は?」
「三つ子の姉のカタク、重度の男の娘萌えなんだ」
ホロが説明している中、カタクは夢中でホルにハグし続けていた。
「ホル、アナタは前から男の娘属性だったんだけど、突然女装した時は私もう、最高に嬉しかったんだから!ねぇねぇ、後で私の作った衣装を着て見てよ!」
「お願っ、やめっ!止めて!!」
匂いをかいだりお尻とか胸を触ったりと、完全にセクハラに近い状態になりかけてきた。するとソロリックはこのままではホルの身が持たないと思ったのか、すぐにペンダントから金棒を出し。
「えい!」
「うぎゃっ!?」
そのまま思いっきりカタクの頭を殴りつけて気絶させた。
「助かった…」
「ソロリック。最近豪快になってきたな」
「ごめんなさい…ちょっと強くしすぎちゃった」
「良いの良いの、悪いのはこっちだから」
すぐさまソロリックはクームに謝罪するけど、笑いながら許してくれた。
「なんの騒ぎじゃ?」
すると立派な白いヒゲの生えたジャックフロストの老人が現れた。
「お祖父さん…」
「マスム祖父ちゃん!!」
「お…お祖父さん?!」
このジャックフロスト老人が、氷真兄弟と冷帆姉弟の祖父で、村長のマスムであった。
「お主らは?」
余所者である野田達を睨みつける。
野田とソロリックと秋は緊張して動けずにいた。
「お祖父さん、彼らは僕が呼んで…」
「まっ、せっかくの客人じゃ。上がれ」
「は…はい」
そして家に入って案内された先には、全てが氷で出来た客室であった。
ホルとホロとマムスが氷の座布団に座ったりして、その後に温かそうなマントと座布団を持ったクームがやって来た。
「はい、外からのお客様にはこれを」
「ありがとうございます」
野田達3人はさっそくマントを羽織って座布団に座る。
「それで、お主らは2人の親友だったな?いつも孫がお世話になったな」
「いやいや!別に俺達はそんな…」
さらにマムスも野田達に頭を下げる。
「それで悪いんだが、ワシはこの2人と話したい事があるんだが、悪いが部屋から出てくれないか?」
「え?俺達を?」
「まぁな…それでカタクやムタとムナの相手を…」
「分かりました。じゃあ後で」
「ホルさん、ホロくんしっかりね」
言われるままに野田とソロリックと秋は勿論、クームも一緒に部屋から出たので、今いるのはホル&ホロとマムスの3人だった。
「さて…お前達の母でクームの姉で、そして愛すべき娘であるクーノが、アイツと一緒に死んで何年たったかの?」
「10年前ぐらいですね…」
「そうか……お前らの父親がワシのクーノの結ばれた時は正直未だに許せなかったな」
あれは23年前に、氷魔山の村から町に来たホルの母親のクーノだったけど、そこで朧車に轢かれそうになった時。町生まれのジャックフロストが勇敢に助けて貰い、そのまま2人は恋に落ちた。
それがホルの父親であった。
「そういえばホル、お前が突然女の格好になり始めた時は、はっきり言ってショック死になりそうになったな」
「あははははは、たしかに」
思わずホルは思い出しながら苦笑いした。
あれは6年前。
ホルが初恋の人のテミが死んだ事で、彼女の代わりに自分が果たそうと女装し始めた時。たまたまマムスとクームとカタクが遊びに来てたので、その姿を見られてしまった。おかげでマムスは仮死状態になりかけ、反対にカタクの男の娘萌え力がアップしたのであった。
「全く…お前は母親と父親に似て、無茶や無謀な事に首を突っ込んだりしていたな」
「すみません」
「別に怒ってる訳ではない。ただお前達には2人の分も強く生きて欲しいんじゃよ」
さっきまで厳しい顔だったマムスは、一気に穏やかな顔になる。
「クサイ台詞かもしれんが、お前達はカタクやムタとムナと同じくらい大切な孫じゃからな」
「お祖父さん…」
「祖父ちゃん!!」
ホルとホロは一緒に、祖父のマムスに甘えるのであった。
特にホロの世話や麻井の秘書としてがんばるホルにとって、これは唯一のんびりいられるひと時でもあった
だがそんな時、隣の部屋で大きな音が響いた。
「なんの音だ?」
「まさか…」
3人はすぐに隣の部屋に行ってみるとそこで見たのは。
「ホル!ちょっと助けて!」
「早く動いてよ!!」
野田は背中に乗せたムタに角を掴まれたまま馬にさせられ。
「お姉さんのおっぱい大きい!」
「柔らかくていい匂い!」
「あはははは、ちょっと弱ったなぁ…」
ソロリックの方は、ムテとムトに胸を無邪気に揉まれていた。
「でねぇ!やっぱり男の娘には黒ニーソと縞パンで、しかも無理やり女装させた時の恥じらいが良いよね!!」
「はぁ…」
それから秋の方は、カタクに男の娘講座を無理やり聞かされていた。
「兄ちゃん、このままじゃあ3人の体力や精神が持たないよ」
「そうだね…ここは」
「帰った方が良いようじゃな?」
「ですよね……」
しばらくしてなんとか無事に帰ることが出来て、ホルにとっては楽しかったが、野田にとっては散々な正月になってしまった。
野田がホル&ホロの里帰りに付き合わされて、しかも従兄妹のカタクは男の娘オタクってのは如何でしたか?
これからもずっと「心の鎧甲」を楽しんでください♪




