第54話 戦いの終わりと別れ
野田がマグームを倒した頃、その様子を目撃していた人物が居た。
[まさか…獣人共も同じ事を考えていたとは…でも、これがあれば関係ありませんし♪]
と鳥人側のレジスタンスリーダー、サグートはギャラルホルンを片手に笑い出す。
「さてと、ではこの笛で一気に獣人どもを」
「そんなマネはさせん!!」
彼が悪意を込めてギャラルホルンを吹こうとした瞬間、ギバドンが剣を構えて呼び止めた。
「おやおや、ギバドン様。アナタもここに来ていましたか?」
「そんなのあたりまえだ!貴様さえ倒せば、こっちも解決になる!!」
「ふはははははは!!いくらアナタが鳥人一の剣術使いだとしても、今の私には無意味」
笑いながら服を脱ぐと、サグートの上半身は北金の両腕同様に、究極超合金オリバグリウのアーマーに包まれていた。
「どうですか、この特製アーマーを!あの鬼と魔人と精霊が使っていた、伝説の心の鎧甲ほどではないが…これでも破壊力や耐久性は最高レベル!どう?」
アーマーを自慢するサグートだったが、ギバドンは一度剣を鞘に収める。
「だから…なに!?」
そのままギバドンは羽を広げながらも突進し始めて、素早く剣を抜きながらサグートを横切った。
「スラッシュ・トランスペア!あまりに正確で早い斬撃に、五感の優れる僕達でも見れない」
「たしかに…見れなかった!」
サグートはあまりの出来事に表情が崩れたが、いつのまにかギバドンの持っていた剣の形が変えていった。
刀身がサファイアのように輝く蒼になって、鍔や柄は金色で赤と緑の宝石が埋め込まれていた。
「その剣は…まさか!?」
「そうさ、聖剣デュランダル」
ギバドンが愛用している剣が、聖剣の1つデュランダルだと気付く。
「コイツの切れ味はオリバグリウを簡単に切れる程強力だけど、剣本人はとても極度のシャイで恥ずかしがり屋だから、自分から姿を変えて力も抑えたりしてるんだ」
するとサグートの両羽はもちろん、ギャラルホルンを持った右腕が、血も一滴流れずに斬りおとされていた。
それも曇りが全くない綺麗な斬面にそって、血も流れていなかった。
「そ…そんなっ!バカな!?」
「しかも、デュランダルに斬られた物体は、斬られた事はもちろん、死んだ事すら気づかない。教えないとダメだ」
「嘘だろ!私は…私は!!」
絶叫しながらもサグートはポロっと首が切り落とされると、全身十字に斬られてあっけなく死亡した。
そしてデュランダルは、しばらくすると刀剣が少し赤くなった。
「ゴメンね。久々で恥ずかしがったんだよね?さぁ、早くミオーズの所に行こう」
ギバドンはデュランダルに呼びかけると、そのまま待機形態の姿になって鞘に収めた。
それからマグームの首を袋に入れて、ギャラルホルンを拾い上げて、野田達の所に飛んで行った。
その頃、ソロリックは森に落ちた野田を探し回ってると、木に寄りかかって座り込む彼の姿が。
「野田さん!やったよ!!」
「そうか、まぁあれ程の破壊力なら」
手を差し伸べたので、その手を握りながら立ち上がり、2つのアーマーをペンダントに収納して、森を出てミヤト達の所に向かった。
しかし、出るや否やレーグラスが真っ先に走って近づいて来た。
「アンタ、さっきまで何処に行ってたの!?」
「いや、森の中の奴らの仲間を倒していたの」
「そう…ところでアーマーの人は!?」
「アーマーの人?」
「アーマーを着た人に決まってるでしょ!!」
かなり必死になって尋ねるレーグラスだけども、野田が彼女の言うアーマーの人本人とは、全然気付いていなかった。
「もういい!私直接行って探してみるから!!」
「あっ!ちょっとその人は!?」
そのまま全力で森に走って行ったので、ソロリックが止めようとした。
でも野田に止められる。
「ほっとけよ」
「でも…」
「レーグラスには、もうちょっと甘い夢でも見せなきゃな!」
「え~~~」
そして2人はすぐにミヤトの元に走った。
「ミヤト!俺やったぜ!」
「そのようだが、貴様。あれ程の破壊力はもしや?」
「アイツから譲ったんだよ」
野田はトムに近づいた。
「本当に良いのか?アンタの心の鎧甲・悲劇を俺が貰って?」
「もちろん。元々私は悲劇の本当の使用者が現れるまでの代わりみたいなものですから」
「でも、アンタのおかげて助かったよ!」
さっそくお礼を言う。
その頃、ミヤトは人間態になってコートを羽織って、タバコを吸うナダレを見つめる。
[崩丸…アナタがまさか人間に魂を売るとは!]
「しかし、まさか色んな可愛い女の子がたくさんいるなんて♪」
しかしナダレ本人はというと、ジロジロとソロリックやアンリュウにミオーズ達、女性陣の胸や太ももや腰周りにお尻といやらしい目で見ていた。
「ちょっと!なに!?」
「そういえば。崩丸さんはもの凄い女好きでしたっけ…」
スミレは思い出して苦笑いしていた。
すると今度は頭だけ素顔に戻ったホルにも視線を向ける。
「あの、なにか?」
ホルはなにやら貞操の危険を感じ、自分の身体を抱きしみて徐々に後ろに下がったりする。
「パス!俺、男の娘には興味ないから」
「はぁ…そうですか」
ナダレは残念そうに離れるのが、ホルは安心して地面に座り込む。
「そうだ、ミヤト!」
「あっ、はい!!」
呼ばれたので顔を赤くしながらも返事をするミヤトであった。
「お前、前よりも天叢雲剣を扱えるようになったな!」
「はい!この剣に認めてもらいながらも、日頃の鍛錬と経験値を疎かにしないように!」
「でもその剣は、魔剣だけじゃなくて聖剣としての力もあるんだよな?」
「ええ、今は使えませんが絶対に!!」
決意を込めるミヤトの頭を、ナダレが優しく撫でる。
「そうか、がんばれよな♪」
「あ……はい!!」
まるで子供が親か教師に褒められたかのように、嬉しくて素直に返事をする。
「じゃあ、俺先に帰るわ!」
そう言い残しナダレは麒麟形態になると同時に、ジェット機に変形して空を飛んだ。
「あっ!また、ちょっと待ちなさいよ!!」
すぐに琥珀も背中からジェットエンジンを出して、北金の手を繋いで、そのままナダレを追いかけた。
「本当に、崩丸さんのいい加減さと女好きは変わってませんね?」
呆れるスミレであったが、ミヤトは口を開いた。
「そんなの当然だ!」
「え?」
「肉体を機械にしようとも、全てを人間国に売ろうとも…その魂は、全然変わっていなかった」
ミヤトはただ上空を見上げてると、丁度その時にギバドンが空から来た。
「ギバドン!アナタもさっきまでどこに?」
「もちろん、これを奪え返しに」
右手に持ったギャラルホルンを見せたりするけど、ミオーズは彼の左手の袋の方に疑問を持つ。
「ところで、この袋は?」
「えっ…あんま見ない方が」
「そんな事より、ここを綺麗にしましょう」
森と町はさっきまでの戦闘でボロボロになって、ロボット兵や巨兵機の残骸も散らかって、なによりマグエンペラーによって山が砕けたままだった。
「アザゼル。後は頼んだぞ♪」
「えーーー!俺が!?」
「だって、こういう仕事ってアザゼルが一番でしょ!」
「お願いアザゼル♪」
「お前ら、俺は便利屋じゃないっつうの!!」
文句を言いながらも、時を戻して辺りの森と町を元に戻した。
それからギバドンもギャラルホルンを吹いて砕けた山を修理した。
「その笛って、そんな使い方をすんだな?」
「まぁね。てか話しかけないで、これ集中力がいるから」
修理している中、ミオーズは右腕に装着された歓喜を外し。
「ありがとうございます。これはお返しします」
そのまま歓喜をグレスに近づいて返した。
「変わってるな?普通だったら、返さずにいるのにな?」
「だって、これはアナタのものでしょ?だったら返さなきゃね」
「……全く、呆れるほど素直だな」
グレスは歓喜を手に取ると、背中から火の羽を出した。
「おい、帰るのかよ?」
だが、すぐに野田が声をかけた。
「なにか?」
「お前は、俺やアンリュウの心の鎧甲を奪うんだろ?なら、あの時の続きでもやるか?」
「……もうそんな気分じゃない」
「そうかよ。だけど、これは俺のだ!お前には渡さないぜ!」
「…だったら、私より強くなって見せろ」
背中の火の羽を伸ばして、グレスは空に高く飛んだ。
「なんか…熱なのにクールだな?」
「ええ、でも良かった」
それからアザゼルとギバドンの修復が完了した途端に、レーグラスがボロボロに疲れ切って帰ってきた。
「では、我々もこれに」
ギバドンとヴァルベン達もバード連邦に戻ろうとして、ミオーズがいきなり前に出る。
「もう、行っちゃうんだね?」
「ゴメンな。もうちょっと居たいけど…」
「でも、今度はちゃんとした所で会うようにしようね」
「たしかにな」
なにやらミオーズとギバドンの間に、リア充的な雰囲気に包まれて、野田とソロリック以外の全員は、居心地が悪くなりかけていた。
「それじゃあ、また」
ギバドンがギャラルホルンを吹くと、彼も含めたトムら3人が光に包まれ消えた。
「ところで、レイガは?」
「さっきこんな手紙を置いて」
その手紙を読んでみると、{悪いけど、もうすぐバイトの時間だから帰らせて貰うからね!あとの事はよろしく♪}という内容だった。
「あのオタク女狐!もうちょっと居てくれたって良いだろ!!」
野田はまたしてもレイガに対して強い怒りを見せる。
「さて、アタシ達も帰ろうか?」
「そうだな」
アンリュウ達、魔人組もマジカルパレスに帰ろうと準備する。
「アンリュウさん達、行っちゃうの?」
「アンタって、本当に良い奴ね…」
「ええ、まぁ…」
「じゃあ、これはプレゼント!」
「え?」
するといきなりアンリュウは、ソロリックに近づいた途端、いきなりキスをする。
「なっ!?」
「「「ええっ!?」」」
「「ああ……」」
「やれやれ」
当然、この場にいる全員とくに、野田は固まってしまい、ルシファー達は呆れてしまう。
そしてアンリュウは、激しくソロリックにディープキスをし続ける。
「ごちそうさま♪」
キスが終了するけども、ソロリックは顔を真っ赤に目を回して、そのまま倒れてしまうが、すぐに野田が優しく抱きかかえる。
「お前、なんでいきなりキスなんかを!?」
「だって…初めて会った時から可愛かったんだもん♪」
「悪い…コイツはッきり言って百合なんだよっ!」
「痛っ!!?」
ルシファーが説明しながらも、アンリュウの頭を殴る。
「ちょっと、力入れすぎじゃないの?」
「自業自得だろ?お前の悪い癖だからな!」
「はいはい、すみません」
そんな最中に、ベルゼブブは誰かを探していた。
「ベルゼブブ、どうしたんねん?」
「いや、オータスはどこに居るんだ?」
「オータスだったらあっちに」
木代が指を刺した先には、オータスだけでなくてなぜか倉山もいた。
「アンタのおかげで助かったよ」
「別に、感謝される事なんて……」
「それで…もしよかったら」
「言わなくても分かっているからね♪」
「そうなんだ!じゃあ連絡先を」
「はいはい、もう準備完了だからね♪」
倉山とオータスはなにやら良いムードなりかけていて、ベルゼブブは突然の事で戸惑いを感じていた。
「なに…あれ?」
「オータスに恋が来たんやね。こりゃめでたいわ♪」
「待て!彼女は俺の使い魔で!?」
「それはそれ、これはこれやろ?アタシにも良い人こないかな?」
「でも、ちょっと…」
強いショックを受けるベルゼブブであった。
それから魔人組が帰る準備が整った。
「色々とありがとな!」
「じゃあね!ソロリックもまたね♪」
「えっ!はい…」
「ルシファー、また貴様のゲイ・ボルグと私の天叢雲剣との勝負を受けよう!」
「はいはい。いつでもどうぞ」
それぞれ別れの言葉を言って、8人はアザゼルの時空魔法の転送で、マジカルパレスに帰ったのだった。
「なんか、味方になるととても頼りになったな!」
「本当ですね」
それからハクホスと獣人側のレジスタンスも、鳥人側のレジスタンスも全員逮捕して、なんとか戦争回避に成功した。
さらに野田も新たな心の鎧甲を手に入れることが出来た。
そして2日後、野田達がモンスターゾーンに帰ろうとした。
「じゃあ王女様、また会おうぜ!」
「色々と楽しかったですよ」
「みなさん、ありがとうございます。さすがに前のようにはいかないけど、絶対に2つの国を仲良くして見せます!」
ミオーズが強い決心を着けると、いきなりソロリックに近づいて
「ソロリックちゃん、野田さんとの恋をがんばってね♪」
「ふぇっ!!?」
耳元で言うので彼女は顔を真っ赤にして声を上げる。
「なんだ?」
「別に!なんでもないから!全然!!」
「……ん?」
不思議がる野田であったが、すでにミヤト達はモンスターゾーンに戻っていて、すぐに野田とソロリックも帰ろうとした。
「では、もしまたピンチの時は、助けに向かいますからね。ミオーズ王女様♪」
「それは楽しみにしております。勇敢な妖怪の戦士さん♪」
ミオーズに見送られながらも、野田とソロリックは転送リングで黒い時空の穴を開き、2人は穴に入って姿を消して帰った。
[本当に、この国を救ってくれて…ありがとう!]
そしてミオーズは涙を流して、野田達に感謝しながらも彼女は城に帰っていった。
絶対にこの国を元の美しい国に戻すという誓いを立てながら。
野田達が帰った直後。この様子を見届けている2人の影が居た。
「あ~~~あ、せっかく戦争が起きると思ったら?」
「いや、戦争はあくまでオマケみたいなもの。本来の目的である心の鎧甲の、データを取るのに成功した」
この2人は、裏で獣人と鳥人の戦争を引き起こそうとした黒幕らしい。
「なるほどなぁ…じゃあ次は?」
「空のかなたの、宇宙に取り残された者達だ」
「そうか」
2人の影は空を見上げながら不気味に笑いながら、姿を消すのだった。
ついに長かった獣人篇が終了しました!
野田は見事に2つ目の心の鎧甲を手に入れて、倉山もベルゼブブの使い魔・オータスと恋人同士になったりしましたが、ギバドンは聖剣デュランダルの使い手で、ソロリックがアンリュウにキスされたり、そして本編の黒幕までも登場したりと色々と大変になってきました!
次はどんな騒動や戦いになるのかお楽しみに!!




