第9話 牛鬼の剣士
野田は今日バイトが休みなので、自転車でモルトの家に向かっていた。
[……茶でも飲んだらすぐ帰るか]
なんて考えながらも家に着くと、何故かバイクが置いてあったが、気にせず扉を開けると玄関にはモルトと刀身が長い剣を背負う、頭に牛の角を生やした牛鬼=ミノタウロスの女がいた。
「な……何者だ?!」
女は背中の刀に手を付けよう構えるので、野田も思わず落ちてた木の棒を拾い構えたが
「やめろ。そいつは俺の知り合いだ」
「なに!?」
モルトが2人の間を割り込むように止めて、女はしばらく黙りながら自己紹介した。
「さっきはすまなかった……私はミヤト・バデュース。アンデグードのリーダーだ」
「アンデグード?」
牛鬼の女ミヤト・バデュースは謝罪するが、野田は彼女がアンデグードのリーダーって事に驚いた。
アンデグードとは牛鬼・バジリスクで構成された、騎士隊と武者組より上の戦闘部隊である。
「まさかあのアンデグードのリーダーが……女の子だったんだ」
「そうだが、ところでお前は?」
「え?俺か?野田進って言うんだ!」
野田は握手しようと手を出すんで、ミヤトはそれに応じて握手した。
「お~~~い、そんなところで突っ立てるより。ほらその刀」
「あ、はい」
ミヤトは剣をなぜか手袋をしたモルトに渡して、刃が少しだけ見えるように、鞘から抜くとかなり真剣な目で見ると
「少し手荒にしてるな?何かあったか?」
少し厳しい感じに尋ねる。
「はい……さすがですね……」
「ふ~~~とりあえず聞かない事にするよ。ほら2人ともぼさっとしてないで、上がったらどうだ?」
と言われたので二人は家に入る。
「……せっかくだから工房見るか?」
「え!いいんすか」
「どうせ待ってる間、お前ら暇なんだろう?」
いう訳で工房を見せてもらう事になった。
「ところでさ、アンタの剣てもしかして?」
「魔剣だがなにか?」
「……別に」
2人が会話しながらも、モルトの案内で工房に来て見ると、さまざまな剣や刀に鎧はもちろん。包丁や鍋にフライパンの調理器具もあった。
「思ったほど散らかってんな?」
「うるさい、余計なお世話だ」
すると鍛冶に使う炉に火をつけると、棚にある瓶を何個か取って中の粉を炉の火に入れた。
「なんだその?」
「さまざまな種類の木や霊草から取れた、葉と根と木の実や種を粉末にした物。こういう聖剣魔剣妖刀は、普通の炎じゃダメだからな」
そして炎が黒く燃えるとミヤトの剣を炉に直接入れて、特殊な鞴で空気を送りながら火を調節して、しばくすると炉から剣を取り出すと真っ赤に熱せられた。するとモルトの右手が金槌に変形して熱した剣を台に置いて、始めはコンコンと金槌で叩いて。
「はっ!!」
「おっ!」
声を上げながら火花が出るほど剣を叩き続けて、また炉に入れて打ったりした。
「初めて見たけど……スゲェ迫力……」
野田は思わず呆然となってミヤトは真剣に見つめて、するとモルトは大きな容器に水と粉を入れる。それから剣を水に入れると黒い大量の蒸気が立ち上り、研ぎ石を取り出して剣をゆっくり研いた。
そして何回も見直しをしながら研いて、しばらくするとミヤトに剣を渡した。
「試し切りでもするか?」
「いえ……その必要はないと思います」
尋ねるとミヤトは返事を返した。
「しかし……ほんと信じられねぇな」
「なにが?」
「年は俺より下みたいだから、アンデグードのリーダーってのは……」
たしかにミヤトは野田の1つ年下だった。
「なにかと思えば、戦士でもない貴様に……」
「言っとくが、こいつ強い方だぞ」
モルトの発言に目を開く。
「よく悪友と喧嘩しているよな?」
「おいおい、そんなの全然……え?」
するとミヤトは野田を睨み。
「ならば……私と手合わせしてくれないか?」
「え?!」
いきなり勝負を挑まれた。
「ちょっと待てよ。俺が言ったのは、喧嘩が強いって事で」
「だが彼の目は、戦士の目だ!」
そして野田はゆっくり考えて。
「……いいぜ!」
なぜかとんでもない事にってなってしまった。
モルトの作業風景と、新キャラの牛鬼ミヤト・バデュースも登場しました。
次回は2人の実力が判明します。