第4話 白日
朝、管理画面でランキングを確認した。
384位。次のダンフェスまで、数字は動かない。それでも、確認することに意味はある。
最近は、確認して、閉じるだけになっている。
今日の召喚スケジュールに、目を移した。炎系の補充が4体。配置は——
配置は、ミルティアに聞いてから、でいい。
一瞬、何かが、引っかかった。前は、ここで、考えていた気がする。
……何をだったか、思い出す前に、引っかかりは、消えた。
画面を、閉じた。
朝の仕事が、前より、早く終わるようになった。
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昼過ぎ、侵入者反応があった。
Eランクの3人組。レイナは配置図を呼び出して、罠を起動した。炎が吹き上がる。冒険者が右に跳ぶ。壁沿いの通路。気温。炎狼が2体、出口を塞ぐ。
3人は、撤退を選んだ。
《対応完了。損耗0》
損耗、ゼロ。
前は、ここで記録を開いた。何秒遅れたか。どこに穴があったか。数字を、全部、見た。
今日は、通信画面を開いた。
〈侵入者3。撤退。損耗0。対応時間、前回比マイナス6秒〉
報告の義務は、ない。ただ、いつからか、報告するようになっていた。
送信してから、画面を、閉じなかった。閉じる理由が、なかっただけだ。
返事は、すぐに来た。
《マイナス6秒……! もしかして、炎狼の待機位置、変えました……?》
〈変えた。半歩、通路側に〉
《やっぱり……! 数字だけで分かっちゃうの、すごいです……》
前は、結果の検証は、一人でやった。今は、検証の相手が、いる。
その方が、早い。それで、十分だった。
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夕方は、通信の時間だ。
いつからか、そう決まっていた。
《レイナさん、明日の配置、決めました……?》
〈炎系4体を補充。配置は前回と同じ〉
《あの……素人考えなんですけど……2層の床罠、半歩だけ手前にできませんか……? 今日みたいに撤退が早いと、罠の二枚目まで届かない気がして……もったいないなって……》
画面を見たまま、少し、考えた。
今日の3人組は、一枚目の罠で警戒して、二枚目の手前で引き返した。二枚目は、発動していない。設置分のDPが、遊んでいる。
一枚目を手前に出せば、警戒の起点が早まる。二枚目の圏内まで、押し込める。
……一理、ある。
〈……採用する。明日、試す〉
《ほんとですか……! 嬉しい……でも、私の思いつきなので、駄目だったら、すぐ戻してくださいね……?》
〈データで判断する〉
《ふふ、レイナさんらしいです……》
この子の「素人考え」は、外れない。
今日も、そうだった。
判断は、私がしている。
……判断は、私が、しているはずだ。
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夜、寝る前に、個体記録の一覧を、開きかけた。
指が、A-09の行の上で、止まった。
そういえば、最近、この記録を開いていない。
前は、時々、開いていた。開いて、閉じて、データの確認に時間がかかっただけだと、自分に言った。
今は、開く必要が、なくなった。
……なくなった、はずだ。
一覧を、閉じた。
代わりに、今日の通信ログを、上から、読み返した。《やっぱり……!》《ほんとですか……!》《レイナさんらしいです……》。
読み終えて、閉じた。
少しして、また、開いた。
画面の明かりを、落とした。
ダンジョンコアは、今日も、静かだった。指示には応える。それ以外は、何も言わない。
それで、いい。
……前も、そう思っていた。今も、そう思っている。同じ「それでいい」のはずなのに、どこかが違う気がして、どこが違うのかは、分からなかった。
考えるのを、やめた。
明日の配置は、決まっている。ミルティアが、教えてくれた。明後日のことは、明日、聞けばいい。
今日も、決めなければならないことは、何も、なかった。




