表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
wonder! とある2人の恋愛事情  作者: かなたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/83

第25話 海へ行こう!①

退院して叔父さんが迎えに来てくれた。


「別に良かったのに。バスで帰りますよ。」

「俺の妹が大変なことをしでかしたんだ。これくらいはさせてくれよ。」

「ありがとうございます。」


 助手席に乗る。叔父さんはポツリポツリと杏と杏の母親の話をし出した。


「あいつはシングルマザーでな。離婚した時にはもう杏がお腹の中にいたんだ。あいつもあいつで杏には立派な人になって欲しかったんだろうな。俺がわざわざ口に出すくらいスパルタ教育をしたんだよ。」

「よくまともに育ちましたね。幼少期の抑圧は大人になってから出るって。」

「俺もそこは安心したよ。ちょっとリスキーな奴になったけどな。」

「そうですね。あ、ちょっとコンビニ寄ってもらえますか?飲み物買いたくて。」

「おう」


 コンビニでジャスミン茶を買い、飲んでいると叔父さんが私の頭を撫でた。


「それにしても杏にいいパートナーがいて良かったよ。安心した。」

「運命ですかね。」

「運命だろうな。さ、帰ろう。」

「はい。」


 家に着く。杏はどこだろう。買い物かな。あの後、杏の母親は刑務所内で自殺をしたらしい。何がどうなればこうなるんだろう。


「あーあ。杏にとっては良かったんだろうなぁ。叔父さんはいるし、私もいる。寂しくないだろう。」


 現に杏は自分の母親の骨を引き取らなかった。代わりに叔父さんが受け取った。


「お母さんも悪気は無かったのかなぁ。なんかモヤモヤする。」


 そんな時は料理だ。杏の好きなグラタンを作るのだ。生地を作っていると、杏が帰ってきた。


「結依!!」

「おかえり、杏」

「ただいま結依!!!!」

「だからぎゅってすると傷開くから…もっと優しく…」

「あ、ごめん。帰ってきてくれたんだね。」

「私のお母さんには怒られたけどね」

「ごめん…」

「気にしてないよ。」


 2人分のカルピスを作り、テーブルに向かい合う。


「また結衣に傷付けたね」

「それは気にしないで。私は杏が心配だった。いつか壊れちゃいそうで。でも杏は強かったね。良かった。」

「うん…」

「もうお母さんに怯えることはないの。ちょっと遅かったけど、今日からは1人の市川杏なの。それだけは分かってね。」

「うん、ありがとう。」


 これはしばらく引きずるな。気分転換が必要かもしれない。


「杏、海行こう、海」

「え、何をいきなり」

「泳がないでただ海を見てるだけでも気分転換になるよ。」


 杏がくすくす笑う。何も面白いことは言ってはいないが。


「そうだね。海行こう!海初めてかも!」

「そうなんだね。楽しみだね。」

「時間的に明日かな?」

「そうだね。」

「じゃあ明日ね!」


 楽しそうにスマホをいじる杏。


 そうか。杏はお母さんと一緒に出かけたりしたことが無いのか。だから…。

 これからのその役割は私が担おう。それが私に出来ることだ。


「今日はグラタンだよ」

「グラタン!好き!」

「だよね。グラタン食べてお風呂入って明日に備えよ。」

「うん!」


 少し気分が上向いてきたようだ、良かった。


 お風呂上がりのストレッチをしている杏を見ていると、彼女が今までどう生きてきたのかに思いを耽った。


 wonder初期、あんなに厳しかったのは、まだ母親の支配下だったから。

 wonder中期、私と付き合うようになって1人になると寂しくて泣き、私がいると甘えてくる。ゲロ甘なくらい。


 私に甘えてくるのは、ある意味で幼児退行に近い。

 幼い頃に得られなかった愛情を今私にぶつけているんだろう。


「私が守らなきゃ…」

「ん?何か言った?」

「何にも言ってないよ。ストレッチ終わった?」

「終わった!」

「どれどれ」


 杏を抱きしめる。杏も私を抱きしめた。


「暖かいね。よく頑張りました。」

「へへ。」

「じゃ、寝ようか。」

「うん」



「おやすみ」

「おやすみ…」 


 夜は更けて行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ