エピローグ 第1話「白髪の幼馴染」
初めて「小説家になろう」に作品を投稿するどころか、初めて小説を書きました。アニメや漫画、ライトノベルが小さい頃から好きで、そこから得た知識をもとに、剣術や魔法の存在する、ハイファンタジーの物語を作り始めました。まだ書き始めたばかりということもあり、表現が拙かったり、不足したり、誤字をしたりすることが多々ありますが、そのように感じたらコメント・感想などで指摘していただけると幸いです。
これからよろしくお願いします。
この星『惑星ノア』は850年以上も平和を維持してきた。ユルラ村の少年『ラクス=ハーデルアイン』は、平和が破綻した際に自身の身を守れるようにと、幼い頃から幼馴染の少女と戦闘訓練を積んできた。ある夏の日、ラクスは突然、連続して意識を失うようになった。医者に相談すると、世界を崩壊させかねない危険因子『権能の発現』を疑われた。自分の身に何が起こっているのかを知るため、そして権能の謎を解き明かすため、ラクスは旅に出ることを決意する。
ー新暦852年6月14日昼ー
雲一つない晴天の空。周囲を囲む樹木は、多くの葉を茂らせていて、それらは太陽光の多くを遮り、草の生い茂る地面に影を落とす。
俺の正面30m先には、純白の長髪と透き通るブルーの目を持つ少女が立っている。
少女は紫とピンクの中間色のブラウスの上から、軽量の胸当てだけを装備して、下半身は黒のパンツで締められている。
少女は、右手で一本の木剣を、俺の頭上に剣先を向け、中段に構えている。
その目は、獲物を見つめる狼の如く俺を捉えていている。
俺と少女の間には、音や風でさえも邪魔できないような、張り詰めた空気が流れている。
上下とも黒一色の上に、明るい茶色のコートを身につける俺は、目にかかった前髪をさっと右手で後ろへ流す。 そして、左手に構えた訓練用の木の杖の先を、左前方に生えている樹木に実る、一つのリンゴの少し上へと向けて、句を詠唱する。
「シャープ=ウィンド」
言葉が出たと同時に、左肩から左腕、指の先端にかけて、鳥肌が立つ時のようなゾクゾクとした感覚が通過する。
杖が軽く振動し、杖の先端からボンッと小さい爆発音がする。
その刹那、ブサッと鈍い音が鳴り、リンゴと樹木を繋ぎ止める枝が切られて、リンゴは落下し始めた。
そう、俺は風属性の魔法を使って、リンゴを落とした。
リンゴは加速し、秒数を数える間もなくボンッと、先ほどの爆発より一段と奥行きのある音と共に、地面に到達した。
リンゴが地面に着いた瞬間、ピンと糸のように張り詰めていた空気が乱れ出し、この世界に音と風が戻ってきた。少女は俺に向かって一直線に突進してくる。
俺は右足を後方に下げて、左足に重心を寄せ、
「ジェネレートファイヤー=ボール」
と唱えながら、杖を少女の方に振り払う。
妙な感覚が腕を通過し、杖の先から火球が5発発射される。
少女は左腰に携帯していたもう一本の剣を、慣れた手つきで取り出す。
そう、少女は二刀流の剣士なのだ。
少女は、5球のうち4球を左右の剣を交互に振って一刀両断し、最後の1球は、スライディングをして交わした。
火球に対処しながらも、少女は距離を詰め、俺との距離は10mも無い。
そこで、俺は杖を真下の地面に向けて、独り言を言うように、別の魔法を詠唱する。
「ビルドロック=スピード」
そう唱えると、俺の真下から、地震のような揺れと、空気を突き破るような爆音と共に、岩柱が現れ、俺をあっという間に10mほど持ち上げた。
しかし、岩石柱が現れても、少女は一切足を止めず、当然のように2本の剣を右後方に大きく振りかぶる。
「はあぁっ!」
と腹から声を絞り出し、少女はそのまま、遠心力に任せて岩石柱を側面から折るように攻撃する。
剣の強撃に耐えかねた柱は一気に崩れ始める。
生成の速さを重視した句を用いたので、脆いのは仕方がないことだ。
少女の対応の速さに、俺は驚きのあまり笑みを浮かべ、切り替えて崩れる柱を飛び降り、すかさず、
「ジェネレートウォーター=ボール!」
と唱えながら、少女をめがけて杖を振り、空気抵抗を全身で感じながら、片手程の大きさの水球を、5発、少女の足元を目がけて放つ。
句を唱えたとき、少女は一変して瞼が上がり、視線を俺の杖の先端に向けた。
落下しながら照準を合わせることは不可能に近い。
しかし、至近距離から放たれる俺の速射を、少女は避けられない。
3発ほどは見事、足首と靴に着弾して、大量の水を付着させる。
水球が着弾して、いくつもの水飛沫が上がる中、少女は瞬き一つせず、急降下してくる俺を、ただ目で追っていた。
水球の着弾を確認した俺は、すかさず、
「ジェネレートアイス=フロムウォーター!」
と唱える。そして、俺が放った水が、氷へと即座に変化する。
池に突っ込んだようなずぶ濡れの足と、びしゃびしゃな地面が氷で繋がる。
少女は足が動かなくなり、実質的に行動不能になる。
俺は4級の風属性魔法を無詠唱で地面に放ち、減速をかけて着地をする。
氷が砕かれることを恐れて、すぐさま杖の先端を身動きの取れない少女の喉元に当て、
「俺の勝ちだよな……リュナ」
と真顔で、実際は口角を少し上げて、堂々と勝利宣言をする。
少女は歯を食いしばってはいるが、心なしかその目にはまだ光が宿っているように見える。
そして、敗北を認めますと言わんばかりに、剣を地面に落とす。
ガアンと鼓膜を刺すような金属音が鳴り響き、俺は杖を下ろす。
しかし、そこで何故か少女の口角が少し上がった様に見えた。
そして、杖を下げた俺の頭に、ゴンという鈍い音を立てて、少女の木剣の柄が激突する。
「うそ……だろ。」
割れるような痛みが頭を襲う中、用意された状況であるかのような、お手本じみたセリフを吐き、俺は地面に倒れ込む。
少女の策士ぶりに対する驚きと、少女に同情をした自分に対する羞恥で、頭の中が埋め尽くされていた。
「なんで剣が…俺に。リュナは落としたはずじゃ……」
「ねえラクス。私が剣を落としたとき、何本あったか見てた?私は二刀流だよ。」
名前を『リュナ=ラヴェンダー』という二刀流の少女は、腕を後ろに回して、地面に倒れた俺を前屈みに、3割の心配と7割の優越感を表現したような顔で、見下ろしてくる。
そんなリュナの顔を見て、頭の痛みが少し引いた気がした。
「くそぉー、それは気づけねえよー。リュナって戦闘中はすげー策士だよな。これは叶わねえよー」
「そんなことないよ。ラクスだって魔法の技術はすごいんだから、もっと戦術がしっかりしてたら、私きっと勝てないよ。それにさ、ラクスは私のことをもっと疑わないと。非道なことはしないけど、非道と、策士は、別物だからね。」
リュナは得意げな顔で言う。純粋に勝利を喜んでいるのだろう。
「とりあえず、今日はこれ以上続けられそうにないし、帰るか。」
「うん!ところでラクスさ、かき氷食べようよ!最近暑いしさ、いいでしょ?」
今日初めて見せた屈託のないリュナの笑顔は、母親におねだりをする子供のように無邪気なものだった。
リュナは戦闘中は俺以上に頭が切れるが、オフモードになると一変して、言葉を選ばないならポンコツになる。
稽古の後に食べるかき氷は、俺とリュナの間では、毎年の夏の恒例行事のようなものだ。
暑い中、激しく動き、汗をかいた後にキンキンに冷えたものを食べたいと思うのは、人間の性と言っても過言ではない。
「そうだな。よし、そうするか!フワフワのやつお願いな。」
リュナの提案を快く承諾した俺は、リュナの家の方向へと左足を踏み出していた。
先程の稽古はここ『ユルラ村』のはずれにある森の中で行っていた。
ユルラ村は『惑星ノア』の主要5大陸の中で2番目に大きい『エラン大陸』の北西部に位置する小さな村だ。
ユルラ村は農業が主な産業形態なだけあって、四方八方どこを見ても見えるのは畑や井戸、家だ。
家同士の間隔は平均50mと随分広く、子供達は近所の友達と遊ぶにも一苦労するらしい。
時期的に初夏にあたる今は、夏野菜の収穫が始まったようで、麦わら帽子を被った老若男女が、畑で腰を屈めて、野菜の収穫に身を投じている。
畑にはトマトやカボチャ、ナスなどが実っていて、様々な色が視界に入り込んできた。
50mおきの家の前を通り過ぎた時には、カボチャの煮物の甘い香り、トマトスープの酸味の効いた香りなどが2人の嗅覚を刺激して、お腹すいたねという言葉を誘発させる。
「さっきの稽古は本当に驚いたよ。まさか、俺に氷づけにされる前に片方の剣を投げていたとは」
食べ物に関連した話題を避けるために、俺は咄嗟に先ほどの稽古の話を切り出した。
「まあ、攻撃性の低い水属性魔法を撃ってきた時点で、妨害系の作戦なんじゃないかとは、普通疑うよ。」
普通という言葉にもあるように、リュナにとって俺の作戦はありふれたものらしい。
「いやあリュナはすごいよ。俺は戦闘中は頭が上手く回らなくてさ。多分……焦ってるのかな。」
俺は苦笑していた。どれだけ練習をしても、戦闘中は上手く立ち回れない。
努力をした上で、そんな自分に限界を感じていたのかもしれない。
「ラクスもこれから沢山訓練積んだら出来るようになるよ。大丈夫!そんなことよりさ、かき氷食べようよ、ねっ!」
内面で悲観的になっている俺を、慰めようとしたのだろうか。
リュナは俺をフォローした上で、話題を再びすり替える。
「そうだな。あんまり悲観的になっても仕方ないもんな。リュナ、ありがとう。」
俺はリュナの目を見て、言葉と態度で感謝を伝えた。
「どういたしまして!」
朗らかな笑顔でリュナは応えた。
物心ついたときから聞いてきたものの、リュナの人を安心させる包容力のある声には、毎度驚かされる。
さらに10分ほど歩くと、リュナの家に着いた。
玄関の左隣にある出窓を覗くと、俺がリュナの7歳の誕生日にプレゼントした熊のぬいぐるみが立てかけてあった。
もう10年も前のものである故、埃によって黒ずんでいる箇所が多く、本来はベージュ色であることが、分からない人も出るレベルである。
「まだ飾ってくれてるのか。どうしようもないくらい汚くなったら捨てていいからな。」
「それはできないよ。これを捨てたら……ラクスから貰ったという事実の証拠がなくなっちゃう。」
リュナは汚れた熊を見つめて、消えてしまいそうな声で言った。
ただ、これでも1週間に1回は洗濯しているらしい。
それだけ大切にされていると知った時は、胸がこそばゆくなったものだ。
リュナが扉を開け、俺は律儀にお邪魔しますと言って靴を脱ぐ。
歩き慣れた廊下をキシキシと音を立てながら通って、リビング、トイレを通り過ぎて、台所へ行く。
丸いテーブルを囲むように3つ配置された椅子のうちの1つに座り、杖を立てかけると、俺は魂が抜けたように顔をテーブルに突っ伏し、手はももの近くでぶらぶらしている。
稽古の疲れだけでなく、炎天下の中畑道を長時間歩いたのだから当然だ。
そんな無気力な状態を振り払って、顔を起こし、左手に杖を構えて、
「ジェネレート…アイス=シリンダー」
と唱えて円柱形の氷を生成したつもりだったが、詠唱が完璧ではなかったので、少し歪な形になった。
そして、
「ジェネレート……アイアン=シェイプチェンジ」
と唱えて、切れ味の良いナイフを頭に思い浮かべると、生成した鉄塊がみるみる変形して、最終的に想像とは少し違うものの、触れただけで肌が切れてしまいそうな鋭利なナイフが出来た。
「これで頼むよ。マスター」
「まかせなさい!」
材料を生成している間に胸当てを外し、可愛らしい真紅のエプロンを身につけたリュナに氷とナイフを託し、俺は椅子に座ってひたすら待つ。
魔法が得意な俺が材料と道具を用意し、刃物にセンスのあるリュナが氷を削る。
お互いに長所を活かせる良い共同作業であると、毎度思うものだ。
リュナは左手で氷を上から押さえつけ、右手に構えたナイフでキャベツの千切りをするように氷を削り続ける。
俺はというと、リュナが氷を削っている間、その一生懸命な姿に見惚れていた。
いずくんぞ年頃の男女がお互いを意識しないでいるんや。
そんな言い訳じみたことを考えていると、突然、
「ズキン!」
とくる激しい頭痛に襲われ、眼前の世界がぼやけた。
(あれ、眠いのかな、俺。)
そう思って目を擦ってみるも、ぼやけた視界は戻らない。
そのうち意識が遠のいてきて、俺は再び机に突っ伏して、意識を失ってしまった。
最後までスクロールしていただき、ありがとうございます。良い悪いに関係なく、感想・アドバイスをいただけると幸いです。
次回 エピローグ2 第2話「旅立ち」
よろしくお願いします。




