五話 面白すぎるに決まってる
季節の変わり目ですね
体調管理に気をつけてこれからも頑張ります!
「——皆はさ、俺が異世界から来たって言ったら……信じる?」
俺は昔を思い出しながら、話し始めた。
——最後にやったゲーム。
——シルフィとの出会い。
「……俺は、この世界の人じゃなかった。こことは違う世界で死んで、あいつにまた命を貰ったんだよ」
そして、唐突に喰らった女神のビンタを——
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——時刻は夜。
日が沈むと馬車を動かす事が危険になるため、野宿をする必要がある。
その為に俺とシルフィ、ガブの三人で順番に見張りをすることになった。
トレニアは同行してるが一般市民なので見張には参加しない。
そう言う訳で夜ご飯を食べ終わった俺たちは、大樹の下でぼんやりと焚き火を眺めていた。
「それじゃあ俺はもう寝るけど、お前達も早めに休んどけよ。明日は早めに出発する予定だからな。あと、見張りもよろしく頼むぜ」
「あ、分かりました。お疲れ様です」
御者のおじさんは俺たちに声を掛けると馬の方へ向かっていった。
「ふあぁ……。星が綺麗だな、今日も」
かく言う俺は、焚き火を囲むという異世界ファンタジーな行為に心の底から感動していた。
これこそ冒険者の楽しみの一つだと思うし、大体のRPGで焚き火を眺めるシーンがあると言っても過言ではない。要するに最高。
ふと見ると、ガブは高級ダガーを大事そうに磨いている。シルフィは氷魔法で小さな彫刻を作って遊んでいる。トレニアは夜の日課のお祈りを捧げている。
——そういえばこの国の事何も話して無かったな。
この国の名前はゼリアブルク王国。
王国という名から察するに、王がトップの君主制の国家だ。
この国の特徴として一番大きな事、それは——魔王城に一番近い国なのだ。
そして俺たちが向かっているのは、王国の王都ゼリアブルク。ガブの故郷で王国の首都だ。
一応ガブの帰郷という目的なのだが、観光が主になってくるだろう。
「いやー王都ってどれだけ人がいるんだろ? 俺の住んでたとこの何倍くらいなんだろうな」
俺がそう言うと、いつの間にかダガーを振り回していたガブが。
「……そういえばイブキに問いただしたい事があるんでした」
「ん? 何だよ」
「貴方の出身地についてです」
…………え。
「何だよ、そんな藪から棒に……」
「いえ、ただ昨日までこの国の名前すら知らなかった人の正体を暴きたくなっただけです」
「私も聞いてみたいな。人のこと聞くなら自分の話もしないとね?」
シルフィも……。
「いやあ別に……。ただの田舎で、何もないとこだよ」
まあ日本にいた時は田舎に住んでたので、嘘は言ってない。
田舎の家で過ごし、高校は市を跨いで電車で通い、何もない日は家でゲームをしていたあの日は嘘ではない。
「……嘘ですね」
……。
「……いや、嘘は言ってないぞ」
「確かにそうかもしれませんが、隠していることもありますよね。そんな目をしていますよ。……伊達に暗殺者の娘はやってません」
「そ、そうか……」
ガブはフンと鼻を鳴らす。
暗殺者というのはそれを隠すために様々なスキルを会得している。そんな人を父にもつガブだったら心情を読むくらい簡単かもしれないと嫌に納得してしまった。
「……え、じゃあ私が身分を隠してたのも分かってたって事?」
……確かに、そういう事になるな。
「まあ、はい……。でも、何か隠してるなぐらいしか分からないですし、まさか魔王軍幹部だったなんて想像できる訳ないです」
そんな事よりと、ガブは言って。
「で、イブキはどこ出身なんですか?」
そう言ったガブはゆらっと立ち上がり、ダガーの剣先を俺に向けてきた。
「パーティメンバーなら……出身地くらい明かしても、いいじゃ、ないですか……?」
「い、良いかもしれんが解決策が野蛮だって! ……ほら、早くそれ仕舞ってくれ……な?」
ガブはため息をつきながらダガーを仕舞った。
メンヘラ化は逃れたが、ガブは呆れたように言う。
「まったく……。まさかイブキも魔王軍幹部とかじゃないですよね」
「ちげーよ」
…………しょうがねーな。
まあ確かに、隠す必要なんて今更無いか。
ただ、笑われるのが嫌だったんだ。だけどこの面子なら笑い飛ばしてくれるはず。……はず!
……でも、信じられないよな、普通……。
「……ゴホン。じゃあ話すから、みんな落ち着いて聞いてくれ。俺の——深巳一颯の軌跡を。……ちょっと皆? 哀れな人を見る目やめてくれない?」
ちがう所で生まれ育った人達が、今ここで一同に会している。
銀髪の元魔王軍幹部、金髪の暗殺者の娘、薄紫髪のグータラ聖職者。
……いやあ、面白いな。……この世界。
「——皆はさ、俺が異世界から来たって言ったら……信じる?」
俺は昔を思い出しながら、話し始めた。
——最後にやったゲーム。
——シルフィとの出会い。
「……俺は、この世界の人じゃなかった。こことは違う世界で死んで、あいつにまた命を貰ったんだよ」
そして、唐突に喰らった女神のビンタを——
「——てな訳で、俺は今もこうして冒険者やってる。みんなと出会えたのもあの日、レアと出会えたからだ」
全てを話し終えた。
俺が死んだことも、レアにビンタされてめちゃくちゃムカついた事も。
異世界転生の道を見つけ出し、この世界にやって来た事を。
そしてガブとトレニアさんは知らない、シルフィとの馴れ初めを。
——異世界でも陽は落ち、夜が来る。シルフィと初めてみたあの月夜からもうどれだけ経ったんだろうか。
焚き火を囲う皆は、何も否定せずに聞いてくれた。馬鹿馬鹿しいであろうこの話に真剣に向き合ってくれた。
そして、この沈黙を裂いたのはガブで……。
「——頭おかしいですね」
……そう。
「やっぱそうか……」
俺はため息のように呟いた。
意外と信じてくれないもんか。高望みし過ぎたのかもしれない。
まあ俺だって、日本にいた時にこの事を話したとして信じるわけがないからな。
俺は苦笑いになりながら。
「ごめん、今の話は無しにして……」
「何言ってんですか。頭おかしいのはレアの事ですよ」
………………え。
「ええっ?! レ、レア様は頭おかしくなんか……」
ガブの言葉にすぐに反応したのは、風の女神を信仰するレアニスト教信者トレニアだった。
「どう考えたってレアがおかしいですよ。……イブキに同情します」
「えー!! 違うってえ!! レア様がそんな野蛮な神じゃないわよ!!」
さ、騒がしい……! 静かにできんのかよ……。
……けど。
「だよな! あいつが頭おかしいよな! 良かった……あんな奴が神だなんて世も末だぜ!」
「イブキ君まで!」
すでに目が潤んでるトレニアだったが、俺の愚痴は止まらない。
「大体アイツ、チートなんかあげないって言ってたのに、蓋を開けたら『風神の従者』って言うビミョーな固有スキル授けといてそんで……」
「はいはい、終わり! もう夜も遅いしこれでお開き! イブキもそんなに熱くならないの」
見かねたシルフィが俺たちを遮って強制的に終了させた。
「えー……わ、分かったよシルフィ。そんなに怖い顔しないで……。じゃあ、見張りやってくるよ」
「……」
……何でそんな怖い顔してるんだろう。別に変なことは……言ってないし……。
俺はそれが何故かよく分からなかったが、まあいいやと振り向き見張りを行う場所へと向かう。
「……イブキ! 最後に一つ、いいかな?」
「……ん? どした」
シルフィから呼び止められ、俺は振り返る。
当のシルフィは、どこか悲しそうに小さな声で。
「……この世界のこと、どう思う?」
それはこの世界に生まれ、運命に振り回された少女。
魔物が蔓延る魔王軍で、人間ながら『氷雪の魔女』を受け継いだシルフィは俺にそう尋ねた。
シルフィは俺の住んでいた世界のことは全く知らない。まさか自分の前に現れた奴が異世界人だなんて、思うわけが無いしな。
だからこそ、素直に応えないといけない。
——この世界がどうだって?
日本にいた頃は進路関係のいざこざやその他諸々で、ゲームで現実逃避してたさ。
それがどうだ。……この世界ではいろんな面白い奴らと出会えたんだ。
風の女神や死の神様、金髪の暗殺者の娘に薄紫髪のグータラ聖職者。ましてやボクっ娘ロリババアまでいる世界。
そして目の前に居る、最高に可愛い銀髪美少女——シルフィ。
理解はしたが、全くもって不本意な『風神の従者』を考慮してもお釣りが来てしまうこの世界。
そんなのもう——
「最っ高!!」
面白すぎるに決まってんだろ!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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