九話 それは君の隣
どうも楓乃颯です!
最近、推しのサッカーチームが連敗を脱出しました!
ここで言うことでは無いと思うのですが、嬉しかったので、つい!
それではどうぞ!
——ふと、瞳が光を求める。
「……生きてた」
森林で魔力枯渇により倒れた俺は、何故かイグニスのレアニスト教会の自室で目覚めた。
恐らくリエルあたりが運んでくれたのだろう。ありがたい。
「はあ、これでチート野郎に近づけたかな。……いや、あの女神の従者である限り無理だな、うん」
それにしてもたった一日ぐらいしか外出してないのに、二ヶ月ぐらいに感じるのは何故なんだろう。ま、誰かのせいだろう。
ひとまず起きあがろうと背伸びをすると、ベッドの縁に誰かが座っていた。
寝ぼけ眼でも確認しようとそちらに顔を向ける。するとそこには、
「おはよう。……よく眠れた、イブキ?」
俺の天使様が清楚に佇んでいた。
雪のような銀髪に宝石のような青い瞳。笑顔が印象的な美少女がそこには居たのだ。
「シルフィ……会いたかったよ〜〜!」
「ちょ、ちょっとイブキ?! 急に抱きつかないでよ! びっくりしちゃうじゃない…………でも、よく頑張ったんだね。えらいえらい」
シルフィはそう言って俺の頭を優しく撫でてくれた。
優しく触れてくるその手に、少しだけうるっと来てしまう。
「……うん、俺ドラゴン相手にイキリ散らかしてたけど、凄く怖かった……」
マジで……死神みたいな人にこき使われたんだ……。もうしばらくは外に出たくない。
本当の意味で世界は敵だ。
それにしてもシルフィ、抱き心地良すぎだろ……。何か良い匂いもするし、ずっとこのまま……、
「おー、イーブ起きたかい……って、あ、配慮が足りなかったね。悪い悪い」
「べ、別に!? 特に変な事はしてませんよファイミーさん!」
居るのかよこの人!?
扉が開くとその死神みたいな人が現れた。……もう見た目に惑わされない。
「そうかい。それにしてもお疲れ様、イーブ。君が居なかったらあの森が地獄絵図になってたところだよ」
そうか、火は消えたのか。良かった……。
「それはどうも。で、何でここに……」
あっけらかんなファイミーの言葉に安堵の表情を浮かべながら俺は尋ねた。
「ああ、聞きたいことがあるんだよ。キミ、ドラゴンがあの場所に来た事について何か思い当たる節とかは無いかい?」
「? ……無いですね。というか、俺ドラゴンなんか初めて見ましたよ」
「そう……。これも自然の摂理というのか、ただの気まぐれだと言うのか……。あのドラゴンが全てを知っているはずだけど、もう殺しちゃったし……。全く、やめて欲しいものだよ」
ファイミーは首を振りながら細々と嘆く。
俺はサイコ女神から貰ったペンダントの効果でモンスターらと意思疎通が出来る。
しかしそんな俺でも、あのドラゴンと言葉を交えることは出来なかった。本当になぜあの場所にあのタイミングで来たのだろうか。時間を考えると不意打ちに来たようなものだし。
「そうですね……。あれ、まだ用があるんですか?」
ファイミーはまだ帰る様子じゃない。
「え、キミはいらないのかい? コレを」
そう言ってファイミーは笑みを浮かべながらお金のジェスチャーをした。
……いる。
「いりますいります! むしろその為に囮になったんですから!」
忘れたいたがそうだった。ファイミーはドラゴンを倒した者、ドラゴンスレイヤーとなったのだ。
多額の報酬を受け取ったに違いない。
ファイミーは大きな皮袋をどこからか取り出した。何かがパンパンに入っている。
「先程、ギルドから五千万レアを受け取ったんだ」
「「おお!!」」
俺とシルフィが同時に反応する。
「それでは、はい。キミ達への報酬——お小遣いだよ」
そう言ってファイミーは大きな皮袋——ではなく、新たに取り出した封筒を俺達に手渡した。
中身を見ると、一万レア紙幣が十枚入っていた。
……。
「え……? 何ですかこのしょっぼい金額……。俺の功績は考慮してます?」
「あれ? 五千万レアからのこの金額はどう言うことなの……?」
あっけに取られた俺たちにファイミーは淡々と説明してきた。
「いやー、キミが魔光源石使ったあと全員目をやられて、スチュープドラゴンに物凄く攻撃されてた時間があったよね」
ああ、あのめちゃくちゃ怖かったやつ。
それとこの金額はどう言う関係が? あの恐怖に耐え切った事からまだまだ金額を増やせと言えると思う。
「実はね、その時……ボクの家が半壊してたんだ、ドラゴンの攻撃で」
……そ、それは………………。
しかし騙されんぞ! 交渉だ!
「いやでも一千万は貰えるでしょ! 結構頑張ったんですよ、俺! 大体五千万も四千万も変わら……」
「何? ボクの言うことが聞けないっていうのかい?」
「すいません、貰えるだけでありがたい事を忘れてました。ごめんなさい」
「一瞬で降参した! もっと持ちこたえようよ!」
そ、そんなこと言ったって……無理。
いつだってファイミーの圧の凄さは変わらない様子。
「じゃ、ボクはここでお暇するとしようか。帰りに業者に寄ってみるよ」
そう言ってファイミーは上手く車椅子を反転させ、ドアノブに手をかけた。
俺はその背中に。
「ファイミーさん……鬼みたいだって言われません?」
それは最後の抵抗で。
ちょっとだけ挑発めいたセリフを言ってみた。
しかし、ファイミーはそんな挑発に乗るわけがなく、広角を上げた。
「いーや? 鬼なんか目も当てられない。ボクは死神の使い、ファイミー・レギュエートさ! ……それじゃあまた会おう。本好きのキミならいつでも歓迎するよ!」
行ってしまった。
何だろう。してやられた感が半端ない。
しょうがない、諦めよう。人生諦めが肝心だ。
それにしてもお金が無い……。
十万レアも冒険者という職業では微々たる量。装備や食事にすぐに消えてしまう。
欲しい武器などが沢山あるのだ。これでは足りない……。
「はあ……。自由に生きたいってどの口が言ってんだか。まあでも、頑張っていきますか。シルフィ、これからも俺と一緒に……頼める?」
溜息混じりにボソボソと。自分でも少し気持ち悪いなあと思う。
しかし、そんな俺にシルフィは、
「何言ってるの? そんなの当たり前だよ、キミとの人生、もっともっと楽しくしてみせるよ!」
穏やかで安心する、屈託のない笑顔を見せた。
良かった。シルフィが隣に居てくれて。
「そうだな、当たり前だよな。ありがとう、シルフィ」
——異世界に来て早数ヶ月。
自分から希望した身だからか、日本に帰りたいとは思わなかった。
しかし、帰りたいと思う場所ができた。
それは彼女の隣だった。
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