六話 優しさとは人や自然を愛する力
どうも楓乃颯です。
口内炎がようやく治ってきました。
長かった……!
しかし奴は油断するとまた痛みを主張してくるので気をつけたいと思います!
それでは続きをどうぞ!
——数時間後。
読書に大分集中していた俺だったが、ふと窓の外を見ると太陽が沈みかけていた。
いつの間にか、結構な時間が経っていたらしい。
もうそろそろ帰る時間か……。
「あ、イブキ。言い忘れてましたが、今日は泊まりですからね」
と、いつの間にか起きていたガブが何気なく言い放った。
……え?
「いや、泊まるとか聞いてないぞ。仮に泊まるとしても、シルフィは知ってんのか?」
「すぐにシルフィの名が出てくるのは流石ですね。……大丈夫ですよ、今日は泊まって明日に帰ると伝えてます」
それなら良いんだけど……。
「でも俺、何も持ってきてないぞ。ジャージもパンツも無いし、この前買ったお気に入り枕も無いぜ」
「お気に入り枕って意外と可愛いね、イーブ」
茶々を入れてくるファイミーは置いといて、俺はそれを問いただす。
「それは問題無いです。イブキが寝ている間に私が用意しましたから。……え? 何か問題でも?」
「問題有りまくりに決まってんだろーが! ていうか、俺鍵閉めてたんだぞ! 何で……まさか!」
「そうですね、そこは私のスキルの出番ですよ。あんな鍵、ピッキングスキルでちょちょいのちょいです」
それをやめろって言ってんだよ。この間忠告した筈なんだけど。
今後の信頼関係にも関わってきそうな事実が発覚した今、やる事は一つ。
俺はいつもの様に右手を構える。
「さすがガーブ、世界最高の暗殺者の娘は伊達じゃないね! ……あれ、イーブどうしたのかい? 魔力が体から滲み出てるよ?」
ファイミーさんにはバレたか………。
ガブが嫌な予感を察知したのか、足早にこの場を去ろうとする。
「……あ、それでは私は夜ご飯を」
「『コールド・ウィンド』————ッッ!!」
「ギャーーー!!!」
躊躇なくその顔面に強烈な冷風を吹きかけた。
「……よ、容赦ないね……」
■■■■■
「お前さあ、望んでコールド・ウィンド受けてないか? M?」
「そんな訳無いじゃないですか!!」
「ちょ、食事中にダガーを振り回さない! ガーブ!」
■■■■■
荒々しい食事を終え、入浴も済ませた俺たちは、
「キミ、結構献身的だね。お願いをたくさん聞いてくれて、ボク嬉しいなあ」
ファイミーの部屋まで車椅子を押していた。
「そりゃファイミーさんが可愛いからですよ。可愛いは正義、これ大事ですから」
最初は殺されると思ってたが、冗談だと分かると意外と良い人だった。
200年生きているのは本当のようで、見た目はロリっ子だが精神年齢が大分高い。
しかも美少女、ロリババア、ボクっ娘。
「良いね〜。口が達者だね、イーブ。そんな事を言うんだったらさ、ボクはキミにとって何番目に大切な人なのかな? 気になってしまうよ」
「二番目です」
「ね、狙って無いとはいえ即答は悲しいよ。…………でも、良いなあ。即答出来るぐらい大切な人が居るのは羨ましい。ボクには今は居ないから」
前を向いている為表情は見えないが、ファイミーのその背中は悲壮感に漂っていた。
何か地雷でも踏んでしまったのだろうか……。
と、何処となく暗い雰囲気の中ファイミーの寝室に着いた。
「あー着いたよ、イーブ。じゃあ色々とよろしくね」
ファイミーがそんなよく分からないことを言った。
「何ですか? 色々よろしくって何も聞いてないんですけど」
「ああ、言って無かったっけ? とりあえず入ってよ。説明は部屋でしようか」
そう促されて俺は部屋へと車椅子を押していく。
ファイミーの寝室は本好きの彼女らしく、ぎゅうぎゅうに本が詰め込められた本棚があった。
「じゃあひとまずボクを抱いて」
「俺を犯罪者にしたいんですか?」
「何言ってんの。ボクを車椅子からベッドに移動させてっていう意味だから、変な期待はよしたまえ。でも今日は君たちが居るから甘えているんだよね。ちなみにもう一回言うけど変な期待はしないでね」
ぬうう……そういう事かよ。無駄な期待だったぜ……。
俺は言われた通りファイミーを抱き抱え、ベッドにゆっくりと移動させた。
その少女の体は思っているほど軽く、強気な性格と裏腹に頼りない感じがした。
200歳以上だとは思えないファイミーはベッドの上で小さく背伸びをしながら。
「そこのクローゼットの中に寝具は一通り入っているからそれを使ってね。あ、でもキミとは話したい事が沢山あるからね。今日は寝かさないから覚悟する事!」
「え、それってどう言う……ちなみにファイミーさん、俺の寝床は?」
「ここ」
へ……?
「いやいやいや、ガブだって違う部屋なんですよ。優しいとか思ってても、男は狼なんです。そんな簡単に同じ部屋で寝ようとか言わないでくださいよ。俺はリビングでも良いんでお気になさらず」
こんな美少女と夜を共にするのは、思春期の俺にとってはヤバい。どれぐらいヤバいのかと言うと超ヤバい。
最初はお姉さんキャラかと思いきや、打ち解けると年相応のキャラを見せるというギャップも逆にしんどい訳で……!
だから俺は否定しようと………あ、この笑顔は、
「ダーメ! キミはボクと一緒におねんねするの! ……良いかな、フカミイブキくん………?」
まるで死神の笑顔だ。
「イ、イエス……マダム……!」
マジでやめて下さい。
■■■■■
ミミュートも眠りにつく夜も更ける頃。
俺は床に布団を敷いて、ファイミーはベッドで、
「それでさあ、イーブは好きな人とか居るの?」
「さっき言いましたよ。俺には大好きで大事な人が居るんですよ」
「だれだれ? 恥ずかしがらずにボクに言ってごらんなさいな!」
修学旅行の夜みたいにヒソヒソ話を繰り返していた。
薄暗くて表情は分からないがその声でウキウキしてるのがよく分かる。
「名前はシルフィーラで愛称はシルフィです。綺麗な銀髪と青い瞳で、笑顔が可愛い少女ですよ。その笑顔を見ると守ってやりたくなるんですけど……。シルフィが強すぎて逆に守ってもらってます……」
「な、なるほど。ちなみに馴れ初めとか聞いても?」
馴れ初めは『異世界転生した洞窟に元魔王軍幹部の彼女が幽閉されていたんです』とか言えるわけがない。
ブーブー言われたが馴れ初めとシルフィの正体は言わなかった。
するとファイミーは少し拗ねた感じで。
「……確かにイーブは使える魔法が少ないからね。弱いよ。その子が居ないとパーティが機能しないね。ガーブもそれほど強くないし」
「ちょ、そんな可愛らしい声で唐突にディスらないでくれません? 分かってるとはいえ、まあまあヘコむんですよ」
「……はあ」
ファイミーが何言ってんだと言わんばかりのため息を吐いた。
意図が全く分からないんだけど。
「とにかく、イーブはなんやかんだで優しいからね。ガーブの言う事、嫌がりながらも結構やってたから。だから、どんどん人に優しくしていきなよ。そうしたら、いつか強くなれるチャンスが来るかもしれない」
……。
やっぱり世の中は甘くなさそう。
要するに人に優しく自分に厳しくって事だ。
「具体的には、どう言うチャンスが?」
「んー? レアが強くしてくれたり?」
そんな事は無いと思う。
て事は、シルフィを守る事は出来ないのだろうか……?
そうだとしたら、やっぱり不甲斐ない。
異世界だとはいえ、女の子に守られるのは少しばかり自分に呆れてしまう。
確かに最初に言ったのは俺なんだけど。
布団の中で小さな葛藤を繰り返す。
「だったら、その優しさでシルフィちゃんを守ってやりなよ」
静寂の中ファイミーの透き通った声が脳を揺らした。
「弱くたって良いじゃないか。確かにこの世界は実力が大事だ。だけどキミは少し口が悪い以外は優しい性格の持ち主だ。それで、シルフィちゃんの心を満たしてやりなよ」
ファイミーさん……!
そうですね……。流石御歳200歳以上の人生のベテランは違う。
これからシルフィ達と優しくて和やかな生活を——
——グォアアアァアァアァアアアア!!!!!
「え、何? 叫び声?! 外から?」
「イーブ、そこのカーテン開けて!」
俺は急な轟音に慌てながらファイミーに言われた通りカーテンを開ける。
「こ、これは……」
——そこには屈強な鱗と全てを翻しうるほどの巨大な翼、何もかもを切り裂く爪の地球では伝説の生物。
「……ドラゴンはねえだろおおおお!!!」
俺は理不尽なこの異世界に、怒りをぶつけてしまった。
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