三話 車椅子の少女
どうも、楓乃颯です!
今これを書いている時、外は雨が降っています。
シルフィが居たら雪にして欲しいぐらい、雨は好きでは無いです。
けど、雨には雨なりの役割がある事も知ってるので何となくやるせない気持ちになります。
それはまあ置いといて、続きをどうぞ!
翌日。
雪が止んだ。シルフィの魔法の効果が切れたのだ。
季節は日本で言うと夏手前。
これからどんどん暑くなっていくから注意しないと。
そんな中、早く起きろと言われたような気もしたが、あまりの眠気にもうどうでもいいやと思った俺はベットでぐーすか寝ていた。
すると、ドスドスと廊下から足音が聞こえてきて、
「いつまで寝ているんですか! 寝坊助は色んな意味で嫌われますよ!」
「……うるせえ……」
現れたのは、金髪盗賊娘のガブリエル・エール。
俺の部屋に入るや否や、大きな声で叫びやがった。
「……あ、死んでる」
「死んでねえわ。ただ少し痩せ気味で寝起きなだけだから。……分かったよ、ひとまず起きようか……」
「うわー、テンション低いですね」
洒落にならない間違いはさておき、俺は覚悟を決めてベッドから降りようと体を起こした。
しかし……
「やっぱ寝る。おやすみ」
「あー! 面倒くさいにも程がありますよ! ほらイブキ、起きてください! でもなきゃ、その鼻に私の毒を流し込みますよ!!」
「分かった! 分かったから、目をギラつかせないでえ!」
ガブの殆ど脅迫の言動をなんとか阻止できた。
最近俺が言うこと聞かないと、武力を行使されることが多くなってきた気がする。
要するに俺が武力に慄く弱者だと思われてるみたいだ。
……正解ですけど。
「まあ、一先ず着替えて下さい。私は廊下で待ってますので、その如何にも根暗なジャージから冒険者らしい服装にして下さい」
「おい、ジャージは完璧な服装なんだぞ。動きやすいし、シンプルだし、これ以上ない最高の服なんだ。……けど着替えるからちょっと待ってろ」
その後、いつもの服装に身を包んだ俺は、リビングへと向かった。
ガブはもう朝ごはんを食べたらしく、朝の日課の体操をする為に中庭に行った。
「あれ? 今日どこか行くの? イブキが教会でジャージ以外の服装だなんて初めてかも」
ダイニングテーブルについているシルフィに、開口一番にそう言われた。
「本当ね。いつものだらしないのじゃないわね」
その横でトーストにかぶりついているトレニアにも言われた。
いや別にだらしないとかそう言うのじゃなくて部屋着だからな。
「ああ、ガブがいいとこ知っているらしくそこに行ってみようと思って」
俺はそう言いながらコーヒーを淹れようとキッチンへ向かった。すると、
「あ、イブキの分も有るかららこっちおいで」
見ると、テーブルの上にコーヒーポットが有った。
何か気が利きすぎて怖いわ。
俺と釣り合うのかどうか。
「ありがとうな、シルフィ」
「礼なんていいよ、いつもの事だし。……それにしても、ガブリエルと二人で行動するなんて珍しいよね。いつも仲は良いとは思うけど、一緒に同じ事をするのって見たことないかも」
何で俺とガブが仲良いと思ってんだ。
隙あらば毒持ってくるんだぞ。
それがもし恥ずかしさの半面だったとしても、多少の悪意はあると思う。
「いやアイツから誘ってきたんだよ。あと別にそんなにガブと仲良くない」
「またまた〜。それでシルフィちゃん、嫉妬とかしないの? 大好きな人が取られちゃうんじゃ無いかって」
トレニアがニヤニヤしながらシルフィに聞いた。
この大人、余計な事言うな。
つい俺は苦笑いになってしまう。
「大丈夫だよ。イブキは私にもうメロメロだから」
……なんか俺が恥ずかしいんだけど。
一方、惚気っぷりを見せつけられたトレニアは……
「ご、ごめんね。なんか私が恥ずかしくなってきた……。良いなあ、イブキ君。はあ……良い相手居ないかしら」
何か申し訳ないです。
■■■■■
「あ、イブキ、ずいぶん遅かったですね。何が有ったんですか?」
「トレニアさんを慰めてた」
「……それは確かに遅くなりますね。それでは行きましょうか」
朝食とトレニアのご機嫌取りを終えた俺は外で待っているガブの所へ行った。
主にトレニアに手こずった訳だが、これでようやくお目当ての場所に出発出来る。
と、ガブが思い出したような声を上げて、
「そういえば、言い忘れてましたが司書さんもいるので仲良くしてくださいね」
俺が頷くと目的地に向けて歩き出した。
こいつによると、その民家には昔の本など色々な書物があるらしい。
もしかしたらこの国についての歴史書みたいな物もあるかもしれない。
情報収集もしたいし、俺の興味も満たしたい。
場所はガブしか知らないので俺は彼女について行く。どんな本があるんだろうなあ。
……その後。
「ハア……どこだよここ。あんなに街が遠い……」
何となく住宅街の一角かなと思っていたのだが、いつの間にか街を出ていた。
久しぶりに日光が照らす草原は、所々雪が残っていた。しかし、季節は夏手前。
正直言ってめちゃくちゃ暑い。
周りの雪もドンドン溶けていく。
「もうちょっとですから頑張ってください。ほら、水がありますよ」
俺は小さなコップを受け取ると一気に飲み干した。
「サンキュー……なあガブ、もしかしてこのまま森にに突っ込む感じ?」
そう、目の前には鬱蒼とした森林が広がっていた。
「はい。入ったらすぐなので、そんなに嫌な顔しないで下さいよ」
ガブがすんとした表情で言ってきた。
……もう帰りたくなってきた。でも引いてられないし、行くしかないか。
森林には街道があり、そこにに踏み込むと少しだけひんやりとしていて、意外と過ごしやすかった。
人の行き来はあまり無さそうな街道を進んでいく。
「それで、何でガブはこんなとこ知ってる訳?」
「そこに住んでいる司書さんが父の知り合いなんですよ。多分、見たらびっくりしますよ。色んな意味で」
……? 何だそりゃ。
まあ良いや。とにかく進んで……
「えっ……きゃあ! な、何ですか!」
後ろのガブが急に叫び声をあげていた。
その叫び声に振り返ると……
「おいテメェ! コイツの命が惜しかったら有り金全部置いてけ!」
無精髭を生やしたイカツイ男がガブの首に刃物を突き立てていた。
……テ、テンプレだ! すげえ、ホントの山賊(一人)が居る!
旅途中の山賊襲来はRPGなら定番のイベント!
冒険者の方が絶対割りがいいのに、こんないつ来るかわからない来訪者に向けて準備する捻くれ者がいるなんて!
久しぶりに感動している!
「テメェ、なにニヤついてやがる! 状況が分かってんのかコノヤロー!」
はっ、そうだ。ガブが危ない!
早く助け……ってあいつ全然慌ててねえな。それどころか何処となく余裕そうだ。
「おい、その子を離せ! そいつ外見は良いけど中身は悪口ばかり言う毒舌少女だぞ! 面白くねえぞ! だから速く離せ!」
「よ、余計な事言わないでください! あと根底がズレてますよ! ……でもイブキ、何もしなくても良いですよ。あと五秒でこいつ死にますから」
「はあ? 何言って……うっ、ぐあ……あ……っ………」
俺が慌ててると、その男は確かに五秒後に叫び声も無く倒れた。
え、ガブがやったのか?
人質だった筈のガブは服の汚れを払いながら、
「ふう、ナイスタイミングです。良い所に来てくれましたね」
俺の後ろに声をかけた。
俺はゆっくりと振り返える。すると。
「何がナイスだ、ボクの骨が無くなっただろう。これはミルクティー十杯分だよ、ガブリエル・エール」
そこに、水色の髪と瞳の少女が、呆れた顔で、車椅子に座っていた——
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