十七話 エピローグという名の答え合わせ
お久しぶりに更新します。
異世界なんて有り得ない。
俺もそう思いながら適当にあの言葉を口にしたのだ。
「——異世界なんてありますか?」
一度死んだ身なのだ。考えればチートなんておこがましい。
そもそも、また同じ身体でやり直せるのはありがたいと思わないといけない。
普通に考えれば、俺の恩人……恩神なのだが、アイツ——風の女神『レア』は好きになれない。
何故かって? 答えは簡単。
それは——
「お久しぶりの、女神レアでーす!」
「なああああああああ!!」
困ったら手が出ちゃう系のヤバい奴だからだ。
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女神レア。
風を司る彼女は、温厚で優しい女神として多くの人から愛されているらしい。
現にお金の単位になっている程、人々の認識は高いのだ。
そんなレアが今、俺の目の前にいる。
ベッドで寝ていて、目が覚めたら女神がいる。
シチュエーションだけなら完璧だ。
寝ぼけてんのかと頬をつねるが……痛い!
な、何でここに……。
「大丈夫ですか? 急に大きな声あげちゃって、私何もしてませんよ?」
レアが困ったような顔で首を傾げる。
「……いやさ、目を覚ましたら俺の因縁の相手がいるなんて思わないじゃん」
「誰が因縁の相手ですか! だから、今回は叩くのを我慢して深巳さんが起きるのを待ってたんですよ?」
確かに今回は叩かれてない……いや我慢って事は結構その気があったって事だな。
「それにしても、どうやってここに? あと、サンドバッグなら隣の部屋にガブって女の子がいるぞ」
「さらっと仲間を売らないで下さい。まあ、貴方は私の従者なので、いつでも貴方の所には神的なパワーで降臨出来ますよ?」
そうだった。俺はコイツの従者なのだ。
めちゃくちゃ不本意なんだけど。
……やっぱりこいつは……
「俺の事、好きなのか?」
「!? な、何言ってるんですか?」
レアがあわあわと口を開けていた。
うん、可愛い。顔は流石、女神様。
ちなみに冗談である。
からかっても良いだろう。
俺はさらに追い討ちを——。
「だって、勝手に俺をユニークスキルで縛りあげるし、俺の部屋に忍び込むとか俺に好意を寄せて……すみません冗談なのでその振り上げてる手を下ろしてください」
手が出てしまうヒロインは嫌いです。
——その後、レアを何とか宥めて椅子に座らせることに成功した。
「それで、何でここにいるんだ? 仕事はどうしたんだ仕事は」
確かコイツの仕事は死んだ魂を導くだっけ。
それなのに何でこんな所に。
「仕事は後輩ちゃんに任せて、貴方に会いにきたんですよ。どうです? 主人に会えて嬉しいでしょ?」
……屈託のない笑顔だな。
渾身のコールド・ウィンドをしようと思ってたのだが、美人の笑顔を台無しにはしたくない。
「あと、半月ほど前に言いましたよね? 次会ったら答え合わせをしましょうって」
……ああ。あれか!
夢だと思ってたけどコイツだったとは。
……確かに聞きたいことが沢山あるんだ。
この時間は俺の考えとの答え合わせにしよう。
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「じゃあまず、何で俺はあの洞窟に転生させられたんだ?」
生活しなれたこの身体で転生! までは良かったのだが、何故かあの洞窟がスタート地点だったのだ。
まあ、そこでシルフィに出会えたから結果的には良かったのだが。
「それはシルフィさんに深巳さんを会わせたかったからですよ。天界から見ていていつも思ってたんですよ。シルフィさんが寂しそうだなあって」
……そうなのか。
「なるほど、それはありがとう。良い出会いをさせてもらったな」
俺が普通に頭を下げると、レアは目をパチパチとして、
「……何か、深巳さんから感謝されるとは思ってませんでした。てっきり私のことは嫌ってると思ってたんですけど……」
嫌いです。
「良いじゃねえか、感謝するぐらい。……それにしても、何でシルフィを? 失礼極まりないけど、この異世界には悲惨な人生を歩んでいる人だって少なくないわけだし」
実際、魔王がいる世界。貧民街で暮らすひとも居るらしい。
このイグニスの街はそれ程でもないが、他の街に行くと酷いスラムが広がる地域もあるとの事。
その中でシルフィと俺を引き合わせた事に意味はあるのか。
レアは徐に外の降り頻る雪を眺めて、言葉を溢した。
「……確かに、この世界は守るべき存在が多いですね。ですが、シルフィさんもその一人。……後、他にも理由があるんです。……風の妖精ってご存知ですか? これがヒントですよ」
風の妖精か。
まあ、一応知っている。
日本では異世界ファンタジーは結構好きだったからな。
「シルフだろ」
「流石ですね! その名前でピンと来ません?」
シルフ……シルフィ……。て事は?
「……名前が似てるから?」
「んー、半分は正解です。両親がレアニスト教を信仰していたんですよ。それで子供を、風の妖精シルフからとってシルフィーラと名付てくれたのです」
信仰してくれてたのが嬉しかったのか、レアは少しだけ微笑んでいた。
「だから、ずっと気にかけていたんですよ。幽閉された時にどうしようかなって……。天界から下界は手出しが出来ないし。……だから貴方がこの世界に行きたいって言った時、シルフィさんと会わせてみようと思った訳ですよ。実際、上手くいってますしね?」
そうですね。ありがたい限りです。
この女神も色々考えていたみたいだ。
サイコパス女神かと思いきや人の心も分かるらしい。
少しだけ態度を改めよう。
「そうだな。何やかんだ、この世界じゃお前が主なんだ。……それならさ、俺をもうちょっと強くとか出来ないの? もうちょい魔力を増やしたりさあ」
魔力が少ないと、いくら強い魔法を覚えたとしても使えないから意味がない。
現に俺は、風属性の魔法を一通り覚えており、その中には強力な魔法もある。
しかし使えない。
レアは考えるように顎に手をついて、
「えーでも……甘えすぎじゃないですか? シルフィさんというほぼチートな人が居るじゃないですか。努力ですよ努力! レベルを上げて魔力値を増やしましょう!」
……それしかないのか。
しょうがない。少しは頑張るか。
俺だって良い所は見せたいからな。
日本で身につけたゲーム知識を使ってやるよ。
「それじゃ私は帰りますよ。久々に話せて楽しかったですよ。頑張ってくださいね?」
「……ああ。これから頑張ってみるよ。……あ、最後に一つ良いか?」
「? 何ですか?」
「あの洞窟でもし俺が、逆に行ってたらどうしたんですか」
もし俺が身体一つで転生した洞窟でシルフィとは逆の、「外」に出ていたらヤバかったのだ。
何故かというと、あの洞窟の外はキマイラの縄張り。そこに丸腰で侵入した俺は無惨にも食いちぎられただろう。
結果的にはシルフィと出会えたので良かったのだが、レアはそこはどういう了見だったのか。
「もし外に出てたら死んでましたね! それでは!」
何かレアが光を纏って天へと帰ろうとした。
……おい。
「おい帰るな! 何だよ、考えてなかったってのか! 人の命はもっと気を使え! 分かったか!」
レアの周りの光は徐々に大きくなりそして、消えた。
「何だったんだよアイツは。コールド・ウィンドでもしときゃ良かった」
何がしたかったのかは分からない。
しかし、アイツは俺と話したかったと言っていた。
俺を異世界に行かせた神として、経過報告だったのだろうか。
……考えても分かんねー。
寝るか。
外を見ると、少しだけ赤くなっていた。
もう朝かよ……いや、寝る! 何か疲れた!
もし怒られても、全部レアのせいにしよう。
俺は再びベッドに入ると、ゆっくりと瞼を閉じた。
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——俺は異世界に転生し、風神の従者になった。
異世界は俺の思い描いていた通りのファンタジー。
決してチートなどは無いが、大切な人達と一緒に楽しく生きたいと思う。
それが時々、しんどくて、面倒で、回りくどくても。
何やかんだで楽しかったらそれで良い。
風神の従者である俺は、異世界で——何をしようか。
こんな俺でも、いつかは——
ここで一章完結です! やった!
ひとまず区切りが出来て嬉しいです!
これからも頑張ります!
面白かったら、是非ご評価お願いします!
何か、ここ2日くらい急激に寒くなりましたよね?!
体調が心配です。皆さんもそうだし、僕も……




