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舞踏会が呼んでいる
床下に響く時計の音に 身体を揺らす男と女の声が重なる
茫洋とした意識の中で芽生えるのは弓なりになった歓び
棚に仕舞った本の栞には「愛しています」と走り書きが
水道の蛇口からこぼれる雫は愛欲の名残か
扉を閉めた個室で一人黙想し 誰もが忌み嫌う自己愛の虜となって
硝子窓にしたためたのは二人の別れの言葉
網戸には一匹の蝿が止まり 孤立した自分を嘲笑う
蝶々の羽根は二つにもがれ その命を失った
今の僕に出来ることと言えば わが身を呪うだけ
揺らめく蝋燭の火がすぐにも溶けて消えそうな部屋で
僕は筆を墨汁に浸らせる その筆で過去をなぞるように描くのは愛憎
一瞬のうちに消える花火にも似て 短く散る思い出
鞄に詰めた死骸の欠片は どこかで落とした希望の面影
外套に身を包み 街の灯りに照らされた
やせ細り 頬がげっそりとこけた僕を
涙の舞踏会が呼んでいる




