らぶトモ 第95話 【ドキドキパニックだよ】
泉水の宿はすごく寛げる。
深夜2時30分。俺はみんなに内緒で貸切温泉を予約していた。
「ここの貸切温泉は、優雅に景色を堪能できる作りらしいな〜。夜間のライトアップが4時まで続く・・・か」
俺はパンフレットでこれを見つけたときは心が踊った。
1人で絶景を見ながら、ゆったり足を伸ばして、独り占め。
なんという贅沢だろうか。
「ふふふふふ」
ついほころぶ。
こんな時、酒が飲めたらより雰囲気最高なのだと思う。
それはこれからの楽しみになるな。
奈々と泉水の友情もずっと続いていくと思う。
歳を重ねていく中で、友情や愛情を深めていく。
すごく幸せな環境だと思う。
「さ、到着したぞ〜!」
さあ、貸切露天!
輝かしいライトが宝石のように夜景を演出している。
温泉の水温もちょうどいい。
全身で浮くような体制で温泉の効能を堪能する。
「サイコーーーーー」
つい口についてしまう。
がら!
「え?」
だ、誰?ちょ、ドユコト?貸切予約ですよ。誰もきちゃダメですよ。
おきまりの貸切中とかの札もちゃんと確認しましたよ。
着替える時、女子の下着がないかちゃんと見回りしましたよ。【←なにしてんの?(天の声)】
漫画的、アニメ的な展開は前以て確認しているはずなのだが・・・。
ガラガラ・・・。
「あ、あの入ってますよ?間違えではないですか?」
「・・・・」
「あの、どなた?・・・って奈々!!!」
「お兄ちゃん来ちゃった」
「来ちゃったって・・・」
そこに現れた奈々。
みなさん可愛い妹がよ・・・、体を隠しきれない大きさのタオルをね・・・。
胸を腕で潰しながら抑えているわけですよ・・・。
恥ずかしいから目線は絶対に合わせないし、目があったらすぐ逸らす仕草とかたまらんでしょ?
しかも背が高い妹、スタイル抜群・・・恥ずかしがる表情・・・。
妹世界選手権で一位でしょ。
「な、なななナナナナ、なんでなんで?」
「お兄ちゃん奈々の名前ひらがなカタカナになってるよ」
「だって、お前のその格好といい、このシチュですよ奈々さん」
「お、お兄ちゃん寒いからお風呂入りたいんだけどいいかな?」
「あ、ああそうか露天だもんな・・・いいけど・・・、何処に・・・」
「お兄ちゃん向こう向いて」
「お、おう!俺で少し歩いて」
「おう」
「はい中央でストップ」
「はい」
チャプ・・・。
うわ〜見えない分想像しちゃうですよ。
片足から湯船に入る奈々。
ゆっくり緊張した面持ちで入る。
これはさすがに男子の・・・男子の・・・奴が・・・。
「お兄ちゃん・・・」
「奈々、めっちゃ近い」
色々考えてたら後ろすぐに来ていた奈々に気づかんかった。
「座って」
「はい」
「奈々もつかるよ」
「はい」
しゃがむ俺・・・。
「ヒェ?」
今俺は奈々に抱きつかれている・・・。
しかもいつもの抱きつきじゃないぞ。
湯船に浸かって、一糸も纏わぬ姿ですよ。産まれたての姿ですよ。
そしてゆっくり体が横になってくよ?どうなのこれ?
「じっとしててね」
「・・・・」
なんも言えん。
フワッと背中に柔こいのがくっつきましたよ。
最高の感触です、ありがとう!
しかも今俺は奈々に乗っかる感じで夜空を見ている。
浮遊しているから奈々にそれほど体重が乗ることはないが、
起き上がることを許されない体制だし自由は奈々に奪われた。
「お兄ちゃん。今どんな気持ち?」
「ヒャ?き、気持ち?・・・気持ちいいです」
「そっか・・・。奈々は・・・嬉しい」
「へ、へええ」
奈々は・・・か。久しぶりに聞いた。
意識の変化で、呼び名が変わった。
それが今この時は戻っている。
奈々・・・俺はそれが嬉しいんだ・・・。
「お兄ちゃん、前にもこんなドキドキするときあったよね」
「ああ。太助のホテルでな」
「うん・・・・奈々あの時からずっとお兄ちゃんの顔見るとドキドキしてるよ」
「そ、そうか・・・俺もだ」
「お兄ちゃんも?・・・それも嬉しいな・・・」
「へ、へえええ」
俺、語彙力ないね・・・。それがやばいね。
奈々の胸の感触。白い肌、細い腕。
表情は見えないけど、鼓動が伝わるくらいドキドキしてるのが伝わってくる。
なんなの?なんて可愛いの?お前本当に俺の妹なの?
なんで妹なの?
妹だから慕ってくれてる条件なのはわかるけどさ。
犬猿の仲の兄妹もいるわけよ。
そんな中で、ここまで慕ってくれる妹。
お互いを変態だねと言い合ったくらいだしな。
「奈々、来てよかったって思うよ」
「そうだな、ここいいとこだな」
「ううん違う。このお風呂に来てよかった」
「そうか」
なんで俺がここにいるのか後で聞くとして、この状況はたまらんものがある。
ぎゅうううう。
「う、奈々・・・苦し気持ちいんだが・・・」
「だって、久しぶりにこうなれたから」
「家じゃいつも2人きりだろ?」
「そうだけど・・・家だとなんか・・・」
「そうか、そうだな」
「うん」
なんかその気持ちわからんでもない・・・。
実家だからな・・・。
何かと気になる事が多いもんな。
「お兄ちゃん・・・何度も何度もごめんなさい」
「何が?」
「大・・・す・・・」
誰にも聞こえない声で・・・。耳元で・・・・。囁く・・・か弱い奈々の声・・・。
「うん・・・」
俺たちは時間まで一緒にいた・・・。
いかがでしたか?
貸切風呂憧れます。
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