らぶトモ 第78話 【園子ちゃんと仲良くなるよ】
入学式が始まり、新入生に花をあげるのも無事に終えた。
あの子にブローチ返せたのは収穫だった。
だけど・・・。
「はあ・・・肝心の謝罪を忘れるとは・・・」
ブローチばかりに気を回しすぎた。
詰めが甘いよなー。
「大吾は、いつもそうですよ。デフォなので心配ありませんよ。MEはいつでも大吾の味方ですよ」
「え?俺今口に出してたか?」
「ええ、駄々漏れですよ~」
「すまん」
なんだかなあ。高2になったんだから、少しはちゃんとせんとな。いつまでも1学年気分じゃだめだな。奈々の兄貴としても妹に恥はかけないようにせんと。
だが、救いがある。
奈々とあの子は同じクラスになったのだ。
泉水ちゃんもだ。
おかげで話を切り出しやすくなった。
「というわけで奈々。ブリーチ返せたその三河島園子ちゃんに話してくれないか?」
「うん、それは構わないよお兄ちゃん」
なんて出来た妹だ。
俺はその晩、奈々に三河島さんとの接点をもってくれるように頼んだ。
次の日の学校で昼食に誘ってもらえるように二人に頼んだ。
昼食なら、時間もとれるし落ち着いて話せそうだ。
泉水ちゃんは、そんなに気にするほどではないだろうと言うのだが、ひと言謝らないと気がすまなかった。
頑固なところもあるんだなと、自分でも驚いている。
自己満なのはわかっていた。けれど、奈々の同じクラスになったんだ。それなら、奈々とも仲良くしてほしいしな。
屋上の公園風に作られている広場のベンチに場所をとり、待っていた。
「あ、いたいたお兄ちゃんお待たせ。さ、三河島さん」
「...はい」
「そう固くなるな。奈々の兄上だ。怖くないぞ」
「はい、知ってます」
話ながら俺のところに来てくれた。
「や、やあ。三河島さん今日は、ありがとう。今日来てもらったのは奈々からも聞いてると思うけど、
テストの大事な日にぶつかって、冷静さ乱したんじゃないかって思ってて・・・だからごめん。あの時すぐに
謝らなかったこともごめん」
「そ・・・そうですね。取り乱しました。でもいいんです。テストは私のすることです。落ちてても受かってても
あなたのせいにはするつもりは全くありませんでした。だからもう気にしないでください。
こうやって律儀にブローチも持っていてくれて、しかも出会ったその次の日に謝る段取りまでこしらえて・・・。
あなたの人柄はわかったので」
「そ、そうか。よかったありがとう。これからもよろしくな。奈々共々」
「はいこちらこそ」
「良かったね〜。これで二人はお友達だね」
「ふむ。兄上の良いところは、非を認められるところにあるからな」
「大吾〜〜、お昼一緒に食べましょう〜!」
「ヒ!!」
「このあほ平等院!!」
泉水ちゃんの下段連打撃が太助の下腹に炸裂!泉水ちゃんも背が小さいから正拳突きが下段なのだよね。
太助がくの字に曲がって顎が泉水ちゃんの頭上に来ると、その右手拳が天高く太助を舞い上がらせた。
泉水 WIN
「全然効きませんよ〜」
「んな馬鹿な!」
「お兄ちゃん効いてないわけじゃないみたいだよ、鼻血が滝のように出てる」
「あの人・・・大丈夫ですか?」
「ふむ、気にするな。彼奴は尋常ではないのだ。心配は無用だ」
「はあ・・・ふふ・・・お兄しゃん、面白か〜」
「おもろか?」
「は!!・・・・ううう」
「ほほお、園子よ、お主、九州の出身か?」
「え、あのその・・・」
「面白か〜は、博多ですよ〜」
「太助詳しいな」
太助のドヤ顔は見慣れて来たのでなんとも思わなくなった。
慣れって凄い。
「す、すみません・・・気を抜くと・・・出てしまうんです、ごめんなさい」
申し訳なさそうにしゅんとしてしまった。
そこに奈々が声をかけた。
「園ちゃん、そういうの気にしないで。お兄ちゃん、太助さん、泉水ちゃん、私も言葉で偏見持ったりしないよ。
だから安心して。月並みなことしか言えないけど」
「奈々さん」
「ふむ、あまりかしこまるな。クラスメイトだろ」
「三河島園子女史!MEはwelcomeですよ〜」
「うん」
「みなさん」
ありがとうの言葉が出ないが、瞳に涙を溜めて、ウルウルしてるの見れたから十分だよな。
「本当にありがとうございます。学校くるのが楽しくなります」
「また敬語」
「あ・・・」
「ふむ急には無理だな」
「スローリーでOK」
「そうだな。園子のペースで」
「はい」
「お、お兄ちゃん!?」
「ん?」
「兄上?」
「はい?」
「だ、大吾さん・・・」
奈々と泉水ちゃんが眉を吊り上げ、園子が眉を八の字に下げクネクネしてる、
太助はやれやれと肩をすくめている。なんかした俺?
「お兄ちゃん、あとで」
「兄上、後ほど」
「家族会議」「ミーティング」「だよ」「だぞ」
どういうことなの?
その土地独特の話し方は、ずっと子供たちに伝えたいですね。
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続きます。