らぶトモ 第73話 【あ・げ・る】
私の初めてを、あ、あげ、あげます。
お、お兄さんになら、あげます。私の初めてを・・・。
はあ、これでいいのかな・・・。お兄さんもらってくれるかな・・・。
「何してんのペルシャ?」
「うわ〜〜〜。な、なんだ透子さんでしたか。驚かさないでください」
「なんだとはご挨拶だな」
「ごめんなさい。私の初めてをお兄さんにあげる練習をしてたから」
「ぬわんだって〜〜!!そ、それは闇の魔王様に許可をもらったのか?」
「闇の魔王様? 何のことかわかんないけど、許可とかは必要ないよ。自分で決めることですから」
「ペルシャ・・・本気なんだね」
「はい。本気です。だって初めてですよ。初めては一度きりです。これからずっと想い出になるんですから」
「そっか・・・。ペルシャもとうとう大人になるんだな。でもペルシャ、いくら大吾でも乱暴にされたら、
大声出して逃げろよ。ヒューマンの男はいつ乱暴するかわからんぞ」
「お兄さんが乱暴なことするはずありませんよ。きっと優しくペルシャの初めてを受け止めてくれるって信じてます」
ペルシャ・・・。この子私の知らないところでこんなにも女の子から女性になったんだな・・・。
目が見えないことでずっと自分に自信がなかったペルシャ。
自分を責める日々が多かったペルシャ。
私を姉のように慕うペルシャ。
時には母の代わりに胸を貸したペルシャ。
ああ〜、ついに、雛鳥が、巣立ちをする時なんだな。
「透子さん、何か別世界に行っちゃってます・・・」
「そ、それでペルシャ、大吾に想いを伝えるのはいつなんだ?」
「は、はい・・それは・・・」
ーー木村邸ーー
「お兄ちゃん、今年はすっごいのあげるよ〜。私の全身全霊をかけてあげるからね〜」
「おうそうか?楽しみだな、でも失敗しないでね」
「任せてよ〜。だって泉水ちゃんと二人でお兄ちゃんを喜ばせてあげるんだから」
「そっか。泉水ちゃんもか、それなら安心だ」
「あ、ひどい〜〜〜!」
「あはは。ごめんごめん」
ーーマルシェーー
「というわけで、透子さんにお願いが・・・」
「何だい?改まって」
「私・・・初めてだから・・・色々教えて欲しいんです」
「な、ななんだって〜〜〜〜」
えええええええ?教えてって・・・だってまだ私だって・・・。ううわからんぞ〜!
そんなの私が見てるドラマや漫画には、
二人がキスした後のコマは、もう朝だし・・・。
大抵は、女の方が、先に起きて彼から借りたYシャツを着ていてコーヒーを淹れてあげていて、
朝陽に体のシルエットが透けて見えて、より男性を惚れさせる・・・っていうシーンしか見たことないぞ〜!
↑ご注意:これはあくまで、透子さんの知識である。というか知識が乏しすぎる。
あああ、ペルシャ〜。そんな期待した顔で私を見るな〜。
ああ、なんて言えばいいんだわからん〜!
通販で、男女交際の本買っておけばよかった・・・。人間の営みなどまだ先のことと思っていたのだが・・・。
「透子さん?」
「え?あ、いやその」
「私参考にこれ、買ったんです」
バサバサっと、カウンターに本を置く音。
ま、まさか、それは夜の営みの参考書か?・・・
「へ?」
手作りチョコの作り方?
「はい!私チョコ作ったことないし、初めて男性にあげるし。作ってあげたい、初めてをお兄さんに
捧げたいって思って。でも、音声ガイドで通販調べても、写真や文字のものばかりで・・・・。
だから、透子さんに読んで聞かせて欲しいんです、ダメですか?」
な、なんてことだ〜〜〜〜〜〜!わかってましたよわかってたよ〜!!
こういう落ちってわかってたよ〜〜〜!初めからそうじゃないかと思ってたよ〜!!
「あ、ああわかった。この本の中からいいやつ選んで、一緒にチョコ作ろう」
「はいお願いします」
ん?でもまてよ? 人間の営みを私は考えたってことは、闇の眷属としては正しいのでは?
そうだ、そうだよ。私は全然エッチい眷属ではないぞ!そうだそうだソースだよ!
「どうしたんですか?透子さん?」
「いやいやなんでもないぞ」
よかった〜。危なかった〜。口にしなくてよかった〜〜〜。
いかがでしたか?
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