らぶトモ 第63話 【こ、これはちょっと・・・】
部屋に戻り、少し窓を開けて外を眺めていた。
お腹もいっぱいだし、快適な部屋だし、言うことなしだ。日本に帰ったらいつもの日常だ。それもまた
楽しい。今日のことをみんなに話してやろう。ペルシャは驚きの連続だろうな。その時の顔が目に浮かぶ。
と物思いをしていると、
「お兄ちゃん奈々お風呂入るね・・・みちゃダメだよ〜」
「見るか!あほ!」
「えへへ」
シュル・・・シュルル・・・。
うわ〜奈々が生着替えするとこ久しぶりすぎて緊張する。
振袖の時はみんなが居たせいか全然気にしなかったけど、ドレスの後ろに腕を回して、ジッパーを下げ、
来ていたドレスを脱ぐ時の動きが目を瞑ってても頭に自動的に思い浮かぶ。
ドキドキが止まらない。
「テ、TV見ようかな〜」
ポチッと。
シャアアアアアアア・・・。
聞き耳を立ててないのにシャワーの音が耳について離れないぞ。
ベッドの横の壁が開いていて、ジャグジーがある。そのジャグジーから少し離れて磨りガラスで壁の代わりに
なってはいるけど、ドアが無い。ユニットバスになっていて足を伸ばせる浴槽だ。
シャワーを浴びながら浴槽にお湯をはっている。
ごく・・・。
妹にこんなにドキドキしてしまうようになるなんて思わなかった。
これが成長ということか?
実の妹にドキドキする兄貴・・・変態だなこりゃ・・・。
奈々が生まれてから俺はずっと兄貴だ。お兄ちゃんなんだ。それはこれからも変わらない。
でもなんなんだ?倫理とか兄妹とか・・・。ちゃんと育って来たはずだ。理解して来たはずだ。
ノーマルのはずだ。奈々のことは大事だ。女性として見ちゃダメなはずだ。さっきも言ったが兄が妹のことを。
変態すぎる。なのに・・・。なんだよこの感情は・・・。
俺は何度も何度も考えた。
考えては変態の答えだ。
それを倫理が覆い隠し、そして言い訳の言葉を繰り返す。
もうわけわからん。自分がわからん。このわからんということ自体が現実逃避か・・・。
答えに迷うから、決められないから考えを止める。
なっちゃいないな本当に・・・。
「お、お兄ちゃんてば聞いてよ」
「え?え?」
俺は奈々に何度も呼ばれていたようだ。
ヒグうう。
目の前にあったのに焦って視点を合わせてなかった。
ガウン一枚だと思われる(だって中見えないし)姿で俺の前に立っている。
でもどうしてお胸が大きく開いてるのでしょうねこの類のものは。
「どうしたのお兄ちゃんぼーっとして」
「いやその別に」
「ん?」
「奈々、ち、近いぞ。顔に当たる」
「いいよ・・・お兄ちゃん」
ポニョん、むにゅ。
「ふご!」
奈々の胸が俺の顔を包み込む。
風呂から上がりたて、ホテルの特別な石鹸の匂い。しっとりとした吸い付くような肌の感触。
い、いかん!妹に対しての自問自答をしたばっかりだろ〜!!自制しろ!くうう・・・。
「あ、お兄ちゃん、くすぐったいよ・・・」
「あ、すまん!」
「ひゃあん」
すっと奈々が離れ、腕で胸を抱えながら顔を紅らめる。
「お兄ちゃんに抱きついたり胸押し付けたりするのも久しぶりだから、なんか照れちゃうね。
いつもくっ付いてたから気にしなかったけど、こんな場所で2人きりって緊張するね」
そうか・・・。自分ばかりが緊張していて、奈々のことを気遣ってあげられてなかった。
それこそ兄貴とか関係ない。俺が緊張してたら奈々も緊張してしまう。
それに気づかないなんて・・・。
「じゃあ奈々、俺も風呂入ってくるぞ」
「うん、いってらっしゃい」
ふう・・・。今回も奈々の行動にドッキリさせられた。けどそのドッキリを自制できるのも奈々のおかげ。
「奈々」
「なに?」
「大好きだぞ」
「へ?」
俺は本当に奈々のこと大好きだ。妹として。そして・・・。
「お、お兄ちゃん・・・んん・・・今は・・・だ、だい・・・さん」
奈々は俺の聞こえない声で何かを呟いた。
俺はすっきりとした気分で風呂に入った。
ちょっと2人の気持ちが縮まりました。
リゾートは心を解放したくなりますね。
もうちょっと続きます。
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